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 5年前、神奈川県の東名高速道路で起きた、あおり運転の末に家族4人を死傷させた悲惨な事案を覚えている方は多いだろう。この件で危険運転致死傷罪に問われた被告のやり直しの裁判で横浜地方裁判所は6月6日、同罪を適用できると判断して懲役18年を言い渡した。

 被告側は、危険運転致死傷について無罪を主張し、監禁致死傷の罪も成立しないとして即日控訴しており、この裁判はまだ結審には至っていない。私たちドライバーはハンドルを握る身としてどのような心構えを持って運転すべきなのか、国沢光宏氏が指南する!

文/国沢光宏写真/AdobeStock、ベストカー編集部、トビラ画像(kojikoji@AdobeStock)

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■相手にあおり運転をさせないことが重要

悲惨な一家4人死傷事故は高速道路上で起きたのだったが……(sugiwork@AdobeStock)

 家族4人が死傷した東名高速道路のあおり事故の裁判、地方裁判所で懲役18年の実刑判決となったものの、被告は不服として控訴。依然として裁判が続いている(※詳細は文末に添付)。その後もあおり運転はなくならないし、高速道路で停車させられる事案も発生しており、一件落着にはほど遠い状況。果たしてあおり運転されたらどう対応したらいいだろうか? 深く考えてみたい。

 一般的にTVなど大手メディアがあおり運転を取り上げる際、私からすればキレイごとに終始している。あおり運転する輩を非難し、「警察に助けを求めること」で終わってしまう。無責任だ。実際、凶暴な輩に出くわしたら警察に連絡したって即効性のある対応策など教えてくれない。被害を受けた後に警察が駆けつけても、大怪我や後遺症を残すような傷を負ってしまったらいかんともしがたい。

 まず、一義的には「あおり運転をさせないこと」である。考えて欲しい。外出する時は家にカギをかけるだろう。繁華街に行くなら、ガラの悪い輩を避けると思う。若い女性が誰もいない夜道を肌の露出が多い服装で歩くということも推奨されない。なぜかといえば、世の中には古今東西、一定率の犯罪者が存在するからだ。そういった輩からの被害を受けないような方向で自衛する。

■自分がやられたらイラッとする行為をしない

 なのにクルマのハンドルを握ると、繁華街でケンカ売りまくりと同じ状況になってしまう人が実に多い。どんな状況か? これはもう簡単。「自分でハンドルを握っていてイライラさせられた時の運転」だ。

「走行車線にクルマがいないのに追い越し車線を走り続ける」とか「後続車がズラりと並ぶようなマイペース走行」、「急な車線変更」、「割り込み合流」などなど。自分がされた場合、イラッとする状況すべてだ。

 これをやられると、当然ながら怒りを感じる。皆さんガマンするけれど、前述のとおり犯罪者が一定の割合で存在します。そいつに当たったら当然のごとくあおり行為をすることだろう。実際、あおり運転で捕まった輩を見ると、すべて初犯じゃない。何度もあおり行為を繰り返している。そんなヤツにケンカ売るような運転をしたら、繁華街でヤンキーにガン付けるのと同じ。

■基本は「他車を怒らせない運転」をすること

追い越し車線であおられてしまった場合は即道を譲ることで、難を逃れられるケースも(xiaosan@AdobeStock)

 ちなみに私は年間3万kmくらい走るけれど、あおり運転をされたことがない。なかには先行車がすぐ前にいるのに車間を詰めてくる輩もいるけれど、これは天然のノーテンファイラー。道を譲り、先行させれば前のクルマをあおり出す。そいつを楽しめばよかろう。あおった相手が強ければ信号待ちで降りてきて逆に殴られる(見たことあります。大いに笑えた)。とにかく他車を怒らせないこと。

 東名高速のあおり行為、パーキングエリアでジャマな場所にクルマを駐車していた被告を被害者が怒鳴ったところからすべてが始まっている。もちろん、あおり行為は暴力行為と同じで完全にアウト。私も被告をかばう気持ちなど1万%なく、むしろふたりが亡くなっていることを考えたら懲役18年など甘すぎると思う。一般的な傷害致死と同じ無期刑でいい。ただ、キッカケを作ってしまったことが残念でならない。

 さて。潜在的な犯罪者を怒らせてしまったらどうか? 基本的にはなるべく早い段階で謝ること。追い越し車線であおられたらすぐ道を譲る。少し強引な車線変更や合流だと思ったらハザードを出す。窓を開けて手を上げて挨拶するのもいい。アイコンタクト可能なら頭を下げるとか手をすりあわせるのもいい。止まった状態で相手が近寄って来た時も、手を合わせるワザは案外有効。

■悪質なケースには正当防衛も当然あり?

クルマから降りてきた相手がもしも窓ガラスを割るような道具を持って近づいてきたら……正当防衛するしかないのかもしれない(yamasan@AdobeStock)

 これらを行ってもあおり行為は止まらなかったどうか? あおり運転の件で何回か警官と本音トークしたことがある。多くの警官は「自分だったら」と条件を付け、クルマから降りてきた輩が窓ガラスを割るような道具を持っているなど、悪質なら正当防衛すると言う。具体的に説明してもらうと、相手にクルマをブツけて逃げるそうな。「私なら車軸にダメージを与える」と言ったら「それも手です」。

 実際、執拗なあおり運転をされた際、急ブレーキ踏んで相手を仕留めた事案が愛知県であった。警察は急ブレーキを踏んだ側を被害者と認定し、追突した側を加害者としている。ドライブレーコーダーの証拠画像などあれば、こういった対応方法もあるだろう。

 以前、常磐自動車道でBMWのX5がステップワゴンを停車させた事案があった。私ならブレーキを掛け遅れて、横っ腹に当たっていたと思う。

 ここまで読んで「過激では?」と感じる人もいるかもしれない。そう考えるなら、何の対応もしなければいい。けれど、大型トラックがガンガン走っている高速道路の追い越し車線で停車させられるなど悪夢以外、何物でもない。

 日本の法律でも「緊急避難」や「正当防衛」は認められている。自分の命や同乗者の安全を確保するため、いつも考えておくといいだろう。催涙スプレーを常備しておくのも手。

 以上、最悪の状況になった時の対応だ。前述のとおり相手を怒らせる運転をしなければ、あおられることなどない。日本の警察や教習所は「道を譲る」ということを教えないし、相手がすべて善良ドライバーという前提で道路交通を語る。 公安委員会に御願いしたい。教習所や運転免許更新時にもう少しほかのクルマから怒りを買わない運転を教えていただけければ、あおり運転は急減すると思う。

※東名高速4人死傷事故裁判
 2017年、神奈川県大井町の東名高速道路であおり運転を繰り返した末に家族4人の乗る乗用車を高速道路上で停止させ、後続のトラックによる追突事故で死傷させた罪に問われた被告のやり直し裁判。横浜地方裁判所は今年6月6日、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷罪)を適用できると判断して被告に懲役18年を言い渡しているが、被告側は即日控訴している。裁判の最大の争点となる危険運転致死傷罪の成否について検察側と弁護側が争っており、結審するまでにはまだ時間がかかるとみられている。

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