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 7月23日、静岡県の富士スピードウェイで開催されたGTワールドチャレンジ・アジア第3ラウンドのレース1/第5戦。このレースでは、予選でダブルポールポジションを獲得した木村武史/ケイ・コッツォリーノ組カーガイ・レーシングのフェラーリが逆転優勝。パーフェクトな初日を締めくくることになった。

 カーガイ・レーシングは、今季GTワールドチャレンジ・アジアのジャパンカップに、スーパーGTのPACIFIC CARGUY Racingと同じく木村/コッツォリーノのコンビで参戦。ヨーロピアン・ル・マン・シリーズで表彰台を獲得するなど、“速いブロンズ”として世界的に評価を得つつある木村、またスーパーGTでも速さをみせるコッツォリーノのふたりは、天候を読み切った第2ラウンド鈴鹿のレース1でも優勝を飾るなど、そのスピードをみせつけていた。

 迎えた第3ラウンドは7月22日から走行がスタートしたが、この日のオフィシャルプラクティスで、カーガイ・レーシングのフェラーリは2番手に0.807秒差をつけトップタイムをマークした。性能調整(BoP)が機能しているSRO規定のレースで、さらにピレリのワンメイクタイヤのシリーズではなかなかつかない驚異的な差とも言えた。また横溝直輝/藤波清斗というシルバーのふたりがドライブするヨギボー・レーシングのフェラーリに対しても0.837秒差がついており、周囲からは「速すぎるのでは」との声さえ出ていた。

 そんな金曜のプラクティスの後、SROはフェラーリ488 GT3エボのターボのブースト圧を変更した。SROによれば「BoPは変更しておらず、ブーストのアジャスト」とのことだったが、わずかながらパワーが絞られる方向になった。さらに、クオリファイ1で木村が横溝を僅差で抑えポールポジションを獲得、さらにクオリファイ2でもコッツォリーノがポールポジションを獲得した予選後、今度はBoPウエイトが10kg増加されるなど、SRO規定ではあり得ないわけではないが、レース直前になって調整が加えられるほどの速さと言えた。

GTワールドチャレンジ・アジア第3ラウンドでダブルポールポジションを喜ぶカーガイ・レーシングの木村武史とケイ・コッツォリーノ
GTワールドチャレンジ・アジア第3ラウンドでダブルポールポジションを喜ぶカーガイ・レーシングの木村武史とケイ・コッツォリーノ
「田邊エンジニアのおかげですよ!」と予選後、喜び合う木村武史と田邊宏昭エンジニア
「田邊エンジニアのおかげですよ!」と予選後、喜び合う木村武史と田邊宏昭エンジニア

 迎えた7月23日の決勝レース1だが、さらに思わぬ事態が起きた。鈴鹿では、グリッドに着く前にフォーミュラのようにピットレーンを通過するレコノサンスラップが行えたのだが、グリッドでの集合写真撮影があることから、ピットアウト後そのままグリッドに着けるよう指示が出たのだ。

「木村選手をニュータイヤでスタートするようにしたのですが、レコノサンスラップでニュータイヤの皮むきをするつもりだったんです。でも撮影があるから禁止と言われてしまって(苦笑)。だったらユーズドタイヤでいかせたかったんですが」とコッツォリーノ。

 ニュータイヤの温めに時間がかかったこともあり、スタートではなんとか粘るも、横溝がドライブするヨギボー・レーシングのフェラーリをはじめ、シルバードライバーたちを相手に木村は少しずつポジションを落としてしまう。しかし「BoPがどんどん下がったりしたこともあり、けっこう(悪い意味で)効いていましたね。バトルしても仕方ないですし、自分のペースで走れるスペースを探すようにしました(木村)」とそれでもしっかり4番手をキープした。

 15周でのコッツォリーノへの交代後、今度は一気に追い上げを図っていく。21周目には、ストレートでヨギボー・レーシングの藤波とバトルを展開したコッツォリーノだが、これをかわすとリードを広げ、最後は13.515秒差をつけフィニッシュ。完勝で2勝目を飾った。

「レース前はそこまで自信はありませんでしたが、木村選手もまわりがタレてきてからは追い上げてくれましたし、今回は絶対に獲りたいと僕もニュータイヤでいきました。圧勝でしたね」とコッツォリーノも満足げな表情を浮かべた。

 明日のレース2では、ウイナーに課せられるサクセスストップがピットイン時に余計にかかるが、「今日も15〜16秒はラップタイムで回収できましたからね。ただ明日はユーズドタイヤでのレースなので、そこでどうなるかです」とコッツォリーノは言う。

 ちなみに、あまりの速さによるBoP変更に加え、「私が速すぎるのか、『GTEのエンジンを使っているんじゃないか』なんて噂が出ているそうですが(苦笑)」と木村は語った(ちなみにこの噂は実際に他チームから聞こえていた)。

「なんなら開けて調べて欲しいです。GTEよりGT3の方がパワーがありますし、シャシーナンバーも出てるくらいですから、やりようがないんですよ(笑)。まあ、そういうことも言われるのもいいかな、なんて思っています」

 スーパーGTでもPACIFIC Hololive NAC Ferrariのエンジニアを務める田邊宏昭エンジニアが作り出すクルマは抜群のセットアップを誇っており、木村もコッツォリーノも厚い信頼を寄せる。また富士をはじめ、木村は人一倍練習を積んでおり、周囲から速いと言われるだけの自信をもっている。まわりも“疑う”ほどのスピードを誇るカーガイ・レーシングの快進撃は、今後のシリーズでも続いていくかもしれない。

GTWCアジア第5戦富士 決勝スタートシーン
GTWCアジア第5戦富士 決勝スタートシーン
GTワールドチャレンジ・アジア第3ラウンドレース1 カーガイ・レーシングのフェラーリ488 GT3エボ
GTワールドチャレンジ・アジア第3ラウンドレース1 カーガイ・レーシングのフェラーリ488 GT3エボ
GTワールドチャレンジ・アジア第3ラウンドのレース1を制したカーガイ・レーシングのフェラーリとケイ・コッツォリーノ
GTワールドチャレンジ・アジア第3ラウンドのレース1を制したカーガイ・レーシングのフェラーリとケイ・コッツォリーノ