ファナテック・GTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWSは7月23日、第3ラウンドの決勝レース1となる第5戦が静岡県の富士スピードウェイで行われ、ポールポジションスタートから一時順位を下げたカーガイ・レーシングの777号車フェラーリ488 GT3 (木村武史/ケイ・コッツォリーノ)が逆転優勝を遂げ、今季2勝目をマークした。
シリーズは前週の第2ラウンド鈴鹿を終え、この週末は富士での第3ラウンドへ突入。“ジャパン・カップ”のタイトルがかかる2イベント目となった今戦には、25台のマシンがエントリーしている。
この日午前中に行われた予選では、第1ドライバー予選で木村が、第2ドライバー予選でコッツォリーノが最速タイムをマークし、土日の両レースでカーガイがポールポジションを獲得する形となった。
レース1決勝前、このカーガイ含め3台がエントリーするフェラーリ勢に対してBoP(性能調整)変更がアナウンスされ、BoPウエイトの増加とブースト圧削減が決定された。
決勝レースは60分、25〜35分の間にピットインしてドライバー交代が必要となるフォーマット。ピット作業では、入口から出口までのタイムがクラスごとに定められている。
スタートでは、Reap Fueling Ambitions(B-MAXエンジニアリング)19号車ランボルギーニ・ウラカンGT3の濱口弘がDステーション・レーシング47号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3の星野敏をパスし、4番手に浮上する。
トップ争いでは、2周目のTGRコーナーに向けて2番手スタートだったヨギボー・レーシング27号車フェラーリの横溝直輝が木村に並びかけ、インから首位を奪う。
横溝がリードを広げていく一方、木村にはEBMギガ・レーシング18号車ポルシェ911 GT3 Rのカンタディ・クシリが襲い掛かる。3周目の最終コーナーではクシリが前に出ることに成功。さらにここには濱口が追いつき、4周目のダンロップコーナー進入で木村のインをつくと、3番手へとポジションアップを果たした。
首位横溝と2番手クシリの差は徐々に詰まっていき、9周終了時点には0.2秒とテール・トゥ・ノーズの状態に。濱口もすぐ背後に迫り、首位争いは3台が1パックとなる。4番手木村はその5秒ほど後方だ。
横溝は時にバックマーカーを絡めながら、第3セクターなどで巧みなブロックラインを取り、クシリのアタックを退けていく。
14周目、トリプルエイトJMR99号車メルセデスAMG GT3のH.H.プリンス・アブドゥル・ラーマン・イブラヒムが星野を攻略し、5番手へと浮上してくる。
25分が経過し、ピットウインドウがオープンに。ここでトップ横溝がピットへと飛び込むが、続くクシリと濱口はステイアウト。後続勢もこの15周目終了時で大半のマシンがピットに滑り込んだ。
藤波清斗へと交代した“裏1位”のヨギボーは、同時にピットインしてケイ・コッツォリーノへと交代したカーガイに対して6秒程度をリード。暫定首位の18号車ポルシェと19号車ランボルギーニは、18周を終えて同時にピットへと飛び込んだ。
この2台がピットアウトすると、首位は27号車藤波、そのうしろに18号車ポルシェのタナート・サティエンティラクル、777号車コッツォリーノ、19号車ランボルギーニ大蔵峰樹という並びとなるが、コカ・コーラコーナーでサティエンティラクルを攻略したコッツォリーノが2番手に浮上。一方、大蔵はこのアウトラップのアドバン・コーナーでマシンを止めてしまう。
トップ藤波とコッツォリーノとのギャップみるみるうちに縮まり、2台はテール・トゥ・ノーズの状態に。同じフェラーリ同士の対決ではあるが、シルバードライバーふたりで参戦するヨギボーは、プロ/アマとなるカーガイに比べ、規則上+35kgのウエイトハンデを背負う状態だ。
22周目に入るホームストレート、セクター3から間合いを詰めていたコッツォリーノは藤波をパス。藤波もイン側から進入したTGRコーナーで抵抗を試みるが、コッツォリーノが首位奪還に成功した。
残り18分、4番手の47号車藤井には、99号車メルセデスのニック・フォスターが襲い掛かり、コカ・コーラコーナー進入でフォスターが先行する。
31周目、30号車ポルシェの上村優太が47号車アストンマーティンと888号車メルセデスをパスし、総合5番手に浮上。接触があったという47号車藤井誠暢は、ふたつポジションを下げてしまう。
ヨギボーをパスした後も後続に対してリードを広げたコッツォリーノは独走状態となり、最後は13秒以上の差をつけ悠々とトップチェッカー。チームは第3戦鈴鹿に続くシーズン2勝目を挙げた。
「BoPは問題ではなく、チームがフェラーリでWECやELMSなど、多くのレースで積み重ねてきたものを証明できた。木村選手もプロ相手に、いいレースをしてくれました」とTVインタビューに対し答えたコッツォリーノ。
木村も「チームとケイのおかげでこういうアメイジングな結果が残せてハッピーです」と喜びを表現した。
総合2位はヨギボーの27号車フェラーリ、3位はEBMの18号車ポルシェ、以下トリプルエイトの99号車メルセデス、ポルシェセンター岡崎の30号車ポルシェというトップ5に。6番手でフィニッシュしたトリプルエイトの888号車は、ターン13でのインシデントによりドライブスルー相当のペナルティが科せられ、最終結果では9位へと繰り下がっている。これにより、Dステーションが総合6位に入った。
GT4クラスではポールポジションスタートのチーム・スカラ55号車メルセデスAMG GT4がリードしていたが、ピットストップタイム違反によりペナルティが科せられてしまう。代わって首位に浮上した恒志堂レーシングの12号車トヨタGRスープラGT4(佐藤元春/平中克幸)が制している。
レース2となる第6戦は、7月24日(日)13時10分にスタートが切られる。
ファナテック・GTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイAWS
第3ラウンド富士/第5戦決勝レース結果
Pos. | No. | Cat/Class | Team | Car | Driver | Laps/Gap |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 777 | GT3 Pro-Am* | カーガイ・レーシング | フェラーリ488 GT3 | 木村武史/ケイ・コッツォリーノ | 35Laps |
2 | 27 | GT3 Silver | ヨギボー・レーシング | フェラーリ488 GT3 | 横溝直輝/藤波清斗 | 13.515 |
3 | 18 | GT3 Silver | EBMギガ・レーシング | ポルシェ911 GT3 R | K.クシリ/T.サティエンティラクル | 21.329 |
4 | 99 | GT3 Pro-Am | トリプルエイトJMR | メルセデスAMG GT3 | H.H.プリンス・アブドゥル・ラーマン・イブラヒム/N.フォスター | 22.519 |
5 | 30 | GT3 Pro-Am* | ポルシェセンター岡崎 | ポルシェ911 GT3 R | 永井宏明/上村優太 | 32.155 |
6 | 47 | GT3 Pro-Am* | Dステーション・レーシング | アストンマーティン・バンテージAMR GT3 | 星野敏/藤井誠暢 | 43.465 |
7 | 22 | GT3 Pro-Am | アウディスポーツ・アジア・チームXワークス | アウディR8 LMSエボII | D.プン/S.トン | 59.03 |
8 | 2 | GT3 Am* | チーム・ウエマツ | マクラーレン720S GT3 | 植松忠雄/内田優大 | 1’02.244 |
9 | 888 | GT3 Pro-Am | トリプルエイトJMR | メルセデスAMG GT3 | H.H.プリンス・アブ・バーカー・イブラヒム/J.ジャファー | 1’03.523 |
10 | 8 | GT3 Pro-Am | EBMギガ・レーシング | ポルシェ911 GT3 R | S.サントソ/R.ハーカー | 1’14.189 |
11 | 60 | GT3 Pro-Am* | LMコルサ | フェラーリ488 GT3 | 中西慧/脇阪薫一 | 1’14.358 |
12 | 51 | GT3 Am | AMACモータースポーツ | ポルシェ911 GT3 R | A.マクファーソン/W.ベン・ポーター | 1Lap |
13 | 7 | GT3 Am* | コメット・レーシング | ホンダNSX GT3 | 山﨑裕介/辻子依旦 | 1Lap |
14 | 666 | GTC Am* | ビンゴ・レーシング | ポルシェ911 GT3カップ | BANKCY/武井真司 | 2Laps |
15 | 16 | GT3 Pro-Am* | ABSSAモータースポーツ | マクラーレン720S GT3 | 小泉洋史/澤圭太 | 2Laps |
16 | 12 | GT4 Silver-Am* | 恒志堂レーシング | トヨタGRスープラGT4 | 佐藤元春/平中克幸 | 3Laps |
17 | 55 | GT4 Silver-Am* | チーム・スカラ | メルセデスAMG GT4 | 田代淳/谷川達也 | 3Laps |
18 | 14 | GT4 Silver-Am | GTOレーシングチーム | メルセデスAMG GT4 | B.リー/安岡秀徒 | 3Laps |
19 | 33 | GT4 Silver-Am* | チームGMB | メルセデスAMG GT4 | 羽田野宏明/細川慎弥 | 3Laps |
20 | 71 | GT4 Am* | アキランド・レーシング | トヨタGRスープラGT4 | 大山正芳/斎藤真紀雄 | 3Laps |
21 | 56 | TC INV Am* | DGモータースポーツ | BMW M2 CSレーシング | 東風谷高史/石井一輝 | 4Laps |
22 | 4 | GT4 Am* | コメット・レーシング | メルセデスAMG GT4 | 坂井一裕/藤井正明 | 5Laps |
– | 5 | GT3 Pro-Am* | プラス・ウィズ・BMWチーム・スタディ | BMW M4 GT3 | 山口智英/荒聖治 | 16Laps |
– | 19 | GT3 Am* | B-Maxエンジニアリング | ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ | 濱口弘/大蔵峰樹 | 17Laps |
– | 101 | TC INV Am* | BMWリーガル・トップ・レーシング | BMW M2 CSレーシング | 青木拓磨/高橋裕史 | 20Laps |
*=JapanCup
※リザルトは編集部集計