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ポテトリスク――。日本経済新聞が21日に配信した「今なお足りぬフライドポテト すかいらーくは中国産調達」という見出しの記事の中で使われている言葉だ。意味は、ファストフード店やファミリーレストランの看板メニューであるフライドポテトの原料であるジャガイモの調達懸念のことだ。

フライドポテト用の品種「ラセットバーバンク」の最大の輸出国・アメリカのロサンゼルス港が、新型コロナによる港湾労働者の不足や世界的なコンテナ不足を原因として、通常通り日本向けに輸出できないことに理由がある。

zlikovec /iStock

東海岸ルートに中国産、対応分かれる

「ポテトリスク」への対応は、外食各社で分かれている。マクドナルドを運営する日本マクドナルドやモスバーガーのモスフードサービスは、ロサンゼルス港からのルートではなく、米東海岸から運ぶルートでの輸入に乗り出した。記事によると、西海岸ルートより5週間ほど長くかかり、輸入コストも増大するという。加えて、モスフードサービスは「枝豆コーンフライ」などの代替メニューの開発も急ぐ。

一方、ファミリーレストランチェーンのガストやジョナサンを運営するすかいらーくホールディングスは、日経新聞の記事の見出しの通り、従来は輸入していなかった中国産ジャガイモの輸入を開始した。中国産ジャガイモの割合は状況に応じて変動させるが、現状は2~3割ほどだという。

中国産ジャガイモに切り替えたのは、すかいらーくホールディングスだけではない。財務省貿易統計によると、今年4月の中国産ジャガイモの輸入量は約1300万トン。これは前年同月比で約27倍だ。それだけ多くの企業が、この機会に中国産ジャガイモに切り替えているのだろう。

ロサンゼルス港の混乱は複合的な要素が絡んでおり、すぐには解消する見通しが立たない。ファストフード店やファミレスで、これまでのように気軽にフライドポテトが食べられなくなることが懸念されるが、ネットでは様々な意見が見られた。

ネットで目立つ中国産への抵抗感

「もともと食べてなかったからどうでも良い」という意見も少なくない中、ネット上で目立ったのは、中国産ジャガイモへの抵抗感だった。

すかいらーくは値上げしといて中国産かよ

中国産なら食べない。まあ外食自体ほとんどしないけど

値上げのあとで中国産に切り替えって……

多くのネット民と同様に、中国産食品に何となくマイナスイメージを持っている人が多いだろうが、それは実は根拠がないわけではない。

厚生労働省の「令和2年度 輸入食品監視統計」によると、生産・製造国別で最も違反が多かったのは中国で162 件だった。総違反件数に対する割合は23.4%に上る。次いで、アメリカ104件(15.1%)、ベトナム79 件(11.4%)、タイ42 件(6.1%)、韓国38 件(5.5%)の順だった。総輸入量が多いことを加味しても、中国の違反事例は多い。

また、厚生労働省が公表している「輸入食品等の食品衛生法違反事例」を見ると、ここでも中国が目立つ。今年4月から7月までで、中国の違反事例は40件近くに上る。ジャガイモの違反はなかったものの、玉ねぎやピーナッツ、緑豆などで食品衛生法に違反している。

※画像は本文と関係ありません(ahirao_photo /iStock)

「北海道産ジャガイモを使えばいい」?

国産ジャガイモを使えばいいじゃないかと思う向きも多いだろう。ネット上でも「北海道産ジャガイモを使えばいい」という意見が少なくなかったが、そう簡単ではない。

そもそも、国産ジャガイモは、形や大きさなどからフライドポテトに不向きとされており、フライドポテトに最適とされる品種「ラセットバーバンク」は日本では育ちにくい。そのため、輸入品に頼らざるを得ない。大手チェーンでフライドポテトに国産ジャガイモを長らく使い続けてきたのは、フレッシュネスバーガー(株式会社フレッシュネス)くらいだ。

「ポテトリスク」を機に、外食企業は様々な選択肢の中から現状、最良と思われる方法を選択しているのだろう。それと同時に、我々消費者の側も、どの店でフライドポテトを食べるかの選択を迫られているのかもしれない。