2022年7月15日に世界初公開となった新型クラウン。これまで長いあいだ伝統的に後輪駆動(FR)セダンであったクラウンが、リフトアップされた「クロスオーバー」となり前輪駆動(FF)ベースの4WDとして発表されたことで、大きな話題となった。そのいっぽうでクラウン「クロスオーバー」は新型クラウンシリーズの第一弾であり(今秋発売)、これから1年半かけて「スポーツ(SUV)」、「エステート」、「セダン」と全4車種が用意されることも発表。全方位用意するあたり、いかにもトヨタらしい販売戦略であるが、そのうちセダンだけ駆動方式が違う可能性について紹介したい。
文/ベストカーWeb編集部、写真/TOYOTA、ベストカー編集部、奥隅圭之、三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY
■新型クラウンシリーズを並べてみると…
きっかけは、本企画担当者が新型クラウンの広報写真をなんの気なしに眺めていた際の、些細な発見だった。新型クラウン4車種の「真横」画像をそれぞれ並べてみると、なんとなく違和感がある。どれも同じアングル(真横)で撮影されているが、どうやら縮尺が微妙に違うようなので(トヨタ公式新型クラウン特設サイトで公開されている開発目標値の)各ボディサイズを正寸に近づけて4車種を揃えてみると…、あれ? 1台だけ雰囲気がだいぶ異なるぞ…と気づいた。
上記画像を拡大してみると、新型クラウン「セダン」仕様だけ(ホイールベースがかなり長いだけでなく)、フロントフェンダーアーチからフロントドア前端までの寸法がかなり長いことに気づく。
文章だけではちょっとわかりづらいので、強調した画像も用意した。平たくいうとクラウンの「セダン」だけ他のモデルと比べてフロントタイヤからドアまでの距離がかなり長い。まるでちょっと前のFR車みたいだ。
上述したとおり、現時点で発表されている新型クラウン「クロスオーバー」は全車前輪駆動(FF)ベースの4WD仕様。ハリアーやレクサスRXと共通のGA-Kプラットフォームを使用している。
ほかの3車種も同じプラットフォームを使用することになり、従って新型クラウンは4車種すべてFFか4WD車になると思っていたのだが…。よく考えると「そうなる」とは誰も言っていない。「セダン」だけFRになる(たとえばレクサスLSと同じGA-Lプラットフォームを使う)という可能性も、あるということか。
■「セダンだけFR」をやってくる可能性、やらない可能性
ここまで書いておいてなんだが、「フロントフェンダーアーチからフロントドアの間が長い」ということが、FR車の証明になるわけではない。最近のBMWは(FRなのに)このサイズが短いモデルも用意されている。あくまでデザインの問題であり、駆動方式とボディの制約とまでは言いがたい。
また、開発コストや車両本体価格、生産や整備コストなどを考えると、同じシリーズ車は同じプラットフォーム、同じ駆動方式で作製したほうが有利な面が多々あるだろう。新型クラウンはかなり戦略的な価格(従来型と比べて性能は大幅にアップしたが価格上昇はかなり抑えめ)だから、「シリーズ4車種のうち1車種だけ別プラットフォーム」というような高コスト体制をとれるのだろうか。
そのいっぽうで、トヨタのことだから「セダンは従来のクラウンファンの要望にお応えするためにFR仕様で出します」と言ってきそうな気もする。そもそも上述したBMWのたとえば2シリーズは、FFとFRが混在している(クーペとカブリオレはFRだがアクティブツアラー、グランツアラー、グランクーペはFFベース)。できないことはないし、やりそうなメーカーでもある。
そういえばトヨタはかつて、「マークIIはFRだけどマークIIクオリス(ワゴン)はFF」というなかなか珍しいモデル戦略をやっていた歴史もある(1997~2001年)。
新型クラウン「セダン」の発売は、公式サイトの「Coming in 2023」という表記を信じるならあと1年半以内。個人的にはぜひFR仕様で登場してほしい。それで、現在「クラウンのクロスオーバー化にがっかりした」と言っているこれまでのクラウンファンに、「待ってました!」と喝采を浴びてほしい。
【画像ギャラリー】新型クラウン「パトカー仕様」もCGで作ってしまいました!! 高級セダンもパトカーもFRがいい…という需要に、トヨタなら応えそうな気が……(21枚)画像ギャラリー投稿 新型クラウンは「セダンだけFR」という可能性が…ある? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。