「いつまでも若くありたい!」は、大多数の人の偽らざる願望だと思いますが、残念ながら「年を取って若くなった」なんてことはないんですね。かくして少子高齢化の時代にあって、「あ~年を取ったな~」の溜め息はますます世の中に横溢する寸法でございます。
中でも「トラックドライバーの高齢化が進んでいる」なんていわれて久しいトラック業界ですから、ドライバーさん自身はどう感じているか、これはぜひ知りたいものです。アラフィフのベテランドライバー・由美さんに聞いてみました。
文/ベテランドライバー・由美さん 写真/フルロード編集部
*2018年6月発行トラックマガジン「フルロード」第29号」より
平ボディのシートの片づけがしんどくなりました
「最近年取ったな~」ですか? そりゃあもう たくさんありますよ(笑)。23歳からトラックドライバーをはじめて、はや20ウン年、アラフィフの私にはいろいろな面で障害が……。
一番はやはり体力的なことですね。昔、箱車に乗っている時はバラ積みバラ降ろしのケースを、「力で男性に負けるなら速さで勝負!」とか意気込んで迅速丁寧をモットーにしていたのに、今じゃ鈍足(笑)。
最近は階段の昇り降りですらハァハァする始末。とてもバラ積みバラ降ろしはもう無理かなあ……。
今は平ボディのトラックに乗っているのですが、キャビンの上のシートデッキに、畳んで丸めたシートを持ち上げるのがキツく感じるようになってきた今日この頃。
昔からシートを上げられなくなったら平ボディに乗る資格無し! と思ってきたので、そろそろ潮時かと考えることもあります。
その他にも更年期障害なのか、汗をかきやすくなったり、疲れやすくなったり、ヘルニアになったり、長距離ドライバーには致命的な頻尿になったり……。身体面での衰えは避けられない事実ですね。
それからもうひとつ。私は仕事内容をメインにTwitterをやっているのですが、「ドライバーの高齢化」といわれている割にはフォロワーの同業者さん達の年齢が皆若い若い(笑)。
うちの娘は20歳なんですが、ほとんどのフォロワーさんが娘と同じくらいの年齢で、アラフィフなんて私ぐらいで逆に恥ずかしくなることもしばしば。
サービスエリア等での休憩時にトラックから降りるのも嫌になる時もあります。
トラガール推奨運動の効果か、若い女性トラックドライバーがだいぶ増えたのは喜ぶべきことなのですが、私がトラックから降りた時に「あ、今流行りのトラガールだ! え? なんだ、オバチャンかよっ!」て思われてるんじゃないだろうかとか、変なところで卑屈になってしまいますね。
でも「経験」と「信頼」という年輪こそ今の私の誇り
でも、「年を取って良かったなー」と思える部分も、もちろんあります。
それは今までひとつひとつ積み重ねてきた「経験」と「信頼」です。それが今の私の宝物でもあります。
石の上にも3年、いや20ウン年。客観的にこの業界を見ることができるようになって、ただがむしゃらに与えられた仕事をこなしていただけの昔とは違い、この業界の将来のためにこれから何をすべきなのか考えるようになってきたのは、まさに「私も年を取ったなー」と思える瞬間でもあります。
最近はトラックを下りて、配車の仕事や若い新人ドライバーの育成をするのが夢になってきました。年は取ってもこの運送業界が大好き。その気持ちだけは決して変わることはありません。
投稿 あのころ君は若かった! トラックドライバーが実感する寄る年波と老化のきざし は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。