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 今や降りたい停留所をドライバーに伝えるために当たり前になったバス車内の押しボタン。バスの歴史は長いが、かつてはどんなシステムで降りたいバス停をドライバーに伝えていたのだろうか。今回はおなじみの押しボタンのルーツをご説明しよう!

文:古川智規(バスマガジン編集部)


最新はワイヤレスで無電源!

 乗務員に次の停留所で降車する旨を合図するいわゆる「降車ボタン」は時代とともに新しくなっている。最新式は無線方式、つまりワイヤレスだ。しかも電源不要でどこでも好きな場所に設置できる。

 では中に電池でも入っているのかというと、そうではなく乗客が押す動作を電気エネルギーに変換して蓄電するという超ハイテクな方式だ。

 車掌が乗務していた時代は、車内を回っていたのでボタンは必要なく車掌に口頭で伝えれば運転士に車掌台から降車合図を送る、または口頭で直接伝えるという原始的な方式だった。

紐式の降車合図システム。このバスは半世紀以上も前のアメリカを走っていたもの

 ワンマンバスが主流になってくると、乗客が自分で運転士に伝える必要があり、降車ボタンが誕生した。さすがに紐(ひも)式の装置は見たことがなく、乗り合いバスの黎明期から車掌が常務し、ツーマン運行が基本だった(現在でも法的にはツーマンが基本)日本にはなかったと思われる。

 押しボタン式の降車意思伝達方式は、車掌がいなくなり、ワンマンバスの運行が始まった、1960年頃からボツボツと始まった。50年位前まではは地方や事業者によって異なるが、緑色のボタンを下から押し込むタイプのもので、運転席背面の上部に「次止まります」と電球透過式の表示が出ていた。

光るボタンは日本発祥!

 押すボタンの形状や書いてある文言は事業者により異なるが、大きさについては日本自動車車体工業会により規格化されており、その範囲内で概ね同じような大きさだとのこと。

ピンポンのいろいろ。いずれも押すと光る

 現在のような光るボタンは日本独自のもので、海外で見ることがあるとすればそれは日本から普及したものだそうだ。またチャイムの音色については現在では電子音の「ピンポーン」だが、これにも変遷があり昔はチンチン電車のように「チン」と電磁石でベルを打鈴していた。

 その後は圧電ブザーが採用され「ブー」となる時代もあり、最終的に家庭の呼び鈴(ピンポンダッシュのアレ)が運転席の後ろに付き、電子音になってもピンポーンに定着した。

音だけは変わらなかった理由

 ボタンがワイヤレスになろうが自己発電になろうが、透過電球がLEDになろうが、音色だけは基本的に「ピンポーン」だ。アナログ音から電子音になると、音色や音階はどうとでもなることなのだが、ピンポーンが定着してしまったので、あえてこれは変えていないとのことだ。ピンポン=降車合図という一種の条件反射なのかもしれない。

音だけはピンポーンで定着

 前述の通り海外では日本のような親切なピンポンはない場合が多く、面白いものでは、運転士や車掌に「叫んで」知らせる方式や、乗客が伝言ゲームよろしく声をリレーして知らせる方式、乗客が手持ちのコインを手すりに打ち付け「カンカン」と鳴らす方式等さまざまである。

大人になっても何となく押したいもの

 この降車ボタンは子供は当然だが、大人でも何となく押したくなる不思議な魅力がある。

英語併記も見慣れた光景になってきた

 降車ボタン「だけ」を趣味の対象にするマニアも存在するくらい奥が深い。地方により、また事業者やバスの年代により異なるのでバスに乗車の際には数秒間だけ観察してみてはいかがだろうか。

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