アストンマーティンF1チームのセバスチャン・ベッテルは、LGBTQ(性的マイノリティ)の権利に関して意識が低い国々でF1がレースをすることで変化をもたらすことができるとして、そういった国を訪問することは正しいことであると考えている。ベッテルはまた、モータースポーツ界において多様性と包括性を向上させることにも、積極的に取り組みたいと語った。
ルイス・ハミルトンと同様に、ベッテルは、人権問題や環境問題に強い関心を示し、それらの問題への取り組みにより一層力を注いでいくよう、F1に対して促している。
4度のF1チャンピオンであるベッテルは、昨年のハンガリーGPで、同国のLGBTQ+コミュニティを支援するために、そのプライドカラーのシンボルであるレインボー柄のTシャツを着てグリッドに立った。学校や18歳未満向けの娯楽番組で、同性愛やトランスジェンダーの描写を禁じる法律がハンガリーで施行されたのを受けてのことだった。
同様の話題として、ベッテルはイギリスの同性愛者向けライフタイル雑誌『Attitude』の7・8月号の表紙を飾り、異性愛者のアスリートとして独占インタビューを受けた。
■「F1は開催国にポジティブな影響を与えることができる」
F1が同性愛者やLGBTQの権利に寛容ではない国でレースをすることは、しばしば批判にさらされている。ベッテルは、そうした国を無視するのは間違っていると述べた。
「LGBTQの権利に関して、他の国よりも厳しい状況にある国々も僕たちは訪問している。そうしたところでのレースを拒否することもできるが、それでどうなる? 僕たちがレースをしなかったら、まったく影響を及ぼすことができないだろう」とベッテルは語った。
「でもそうした国でレースをし、礼儀正しくしっかりと重要なことを主張することで、僕たちはポジティブな影響を与えることができる。価値観や理念を国境で止めることはできない」
■2021年ハンガリーで反LGBTQ政策への抗議を表明したベッテル
昨年、ハンガリーの反LGBTQ政策に対する抗議の姿勢を示したベッテルは、F1ファンのLGBTQに対する認識を高めたいと考え、多様性のために立ち上がったと語った。
「僕がああしたのは、その頃に制定された反LGBTQ法案を支持しないし、するつもりもないことを示したかったからだ」とベッテルは説明した。
「人気者になるためにやったわけではない。でも法案に怒りを覚えているLGBTQの人たちが、僕が反対しているのを見て勇気づけられたとしたら、それは当然だけど喜ばしいことだ」
「それに僕たちの行動によって、より多くのF1ファンが多様性と包括性について考えるようになっているようだ。そうだとしたらうれしいよ。僕はストレート・アライであることを幸せに、光栄に思う」
ベッテルは、F1のパドックで過去に不寛容な表現を耳にしたことがあるとして、今は同性愛嫌悪に強く立ち向かっていると語った。
「直接見たことはないが、間接的にLGBTQの人たちやそのコミュニティについて、否定的な話がされているのは聞いている」とベッテルは『Attitude』に語った。
「そうしたことを聞くたびに間違ったことだと感じていた。でも今では声を上げて彼らを黙らせることに自信があるよ。同性愛嫌悪は偏見であり、偏見は間違っている。本当に単純なことだ」
34歳のベッテルはまた、F1でのメンタリティが進化すれば、ゲイであることを公にするドライバーがグリッド上で幅広く受け入れられるだろうと考えている。
「昔はそうではなかったかもしれないが、今ではゲイのF1ドライバーも歓迎されると思うし、そうなって当然だ」とベッテルは語った。
「ゲイのドライバーがいれば、偏見の解消を早め、僕たちのスポーツをより良い方向へ推し進める助けになってくれると思う。だからF1ではその準備が整っていると思うし、そうあってほしいと願っている」
■「モータースポーツにおける多様性と包括性をさらに向上させる必要がある」
F1は組織の中で多様性を推進するために、さらに努力する必要があるとベッテルは述べている。
「状況は良くなってきている。エンジニアやメカニックのなかには、もっとオープンになれると感じている人たちがいるだろう」とベッテル。
「でもモータースポーツにおける多様性と包括性を向上させるためには、セクシャリティの面だけでなく、女性、有色人種、障害者といった人たちを支援するなど、今でももっとできることがあるよ」
「F1は『We Race As One』という運動を始めた。それは良いことだが、ポジティブな変化を実際に達成できるように、全員が協力し努力しなければならない。ただ話すだけではなく、行動するんだ」