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 トラック物流の働き方改革で期待される「スワップボディコンテナ」、このコンテナを用いた初の定温輸送の実証実験が、6月29日~30日に実施された。

 実証実験は、物流企業の安田倉庫とその子会社・安田運輸が、提携企業である中央倉庫、特装車メーカーの日本トレクス、輸送会社・フジトランスポートとの共同で行なわれた。

 食品、医薬品、精密機械などの物流で欠かせない定温輸送の分野でも「中継輸送」が実現すれば、ドライバー不足の解決に向けて大きく前進するものとみられる。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/安田倉庫、「フルロード」編集部


日帰りできる長距離トラック輸送

実証実験における中央倉庫京都PDセンターでのスワップボディコンテナの脱着作業

 スワップボディコンテナ(SBコンテナ)は、単純にいえば車両総重量25トン大型トラックの荷台を分離できるようにしたものだ。これを運行ルートの途中で別のトラックに載せかえれば、中身に触れることなく積荷をバトンリレーできることになる。

 同じものを運ぶためにドライバー2人とトラック2台が必要になるが、ドライバー1人当たりの運行時間は約半分となり、日帰りも可能になる。つまりドライバー不足の一因である「長時間拘束」を解消できる可能性があるのだ。

 それゆえにSBコンテナは、新しい時代のトラック輸送形態の一つとしていま注目されている。

国内初の冷凍スワップボディコンテナ

日本トレクスで開発中の冷凍スワップボディコンテナ「スワップ冷凍フラットパネルバンボデー」

 今回の実証実験では、そのSBコンテナも、日本初のタイプが用いられている。それが、日本トレクスが開発を進めている「スワップ冷凍フラットパネルバンボデー」だ。

 「スワップ冷凍フラットパネルバンボデー」は、今年5月開催の「ジャパントラックショー2022」でプロトタイプが初公開されたばかり。冷凍ユニット付かつ断熱構造を備えたSBコンテナは、欧州では以前から実用化されているものの、国内での開発は初めてである。

 このSBコンテナは、荷室内(庫内)温度-25℃を維持できる断熱ボディに、冷凍ユニットを組み合わせたものだが、冷凍ユニットを駆動するディーゼルエンジン用の軽油タンク(80L)も併せて搭載しており、コンテナ自身が独立して連続約3日間の庫内温度維持を可能としている。

 安田倉庫では、この「スワップ冷凍フラットパネルバンボデー」を、中期経営計画の目標として掲げる「メディカル物流拠点の拡充と体制の強化」「国内外の輸配送ネットワークの拡充」で活用することを検討している。つまり実証実験は、次世代の医薬品輸送を模索するステップというわけだ。

医薬品輸送の重要なポイント

 日本の医薬品輸送では現在、「医薬品の適正流通基準(GDP)」という国際基準が導入されている。その中で、トラック輸送時には「温度マッピング」(荷室内に17カ所以上の温度測定ポイントを設置して監視しなければならない)に基づいて、庫内温度を維持することが定められている。

 これは中継輸送とともに、医薬品を運ぶ冷凍SBコンテナ実証実験の重要なポイントとなっている。安田倉庫によると、実証実験では医薬品を模したダミー貨物を積みこみ、庫内を冷蔵温度帯(+5℃~-5℃)に設定した上で、温度マッピングの検証を行なっているという。

 また、冷凍SBコンテナには、-25℃~+25℃の範囲での温度調整能力があり、冬期や寒冷地などの低温環境下でも、設定された庫内温度帯での定温輸送を可能としている。そのため、今回の実証実験は2日間だったものの、今後も継続して実証実験が行なわれることになっている。

スワップボディコンテナを中継輸送

 最初の実証実験では、安田運輸横浜営業所(神奈川)→安田倉庫茨木営業所(大阪)へ向かう輸送ルートの途中で、SBコンテナをリレーする中継輸送が実施された。

 まず、横浜発のコンテナシャシー(コンテナ積載用トラック)に大阪行の冷凍SBコンテナを積載、新東名高速浜松SAに隣接する「コネクトエリア浜松」まで運び、そこでSBコンテナを分離する。

 一方、大阪発のコンテナシャシーには横浜行のSBコンテナ(冷凍ユニットなしのドライコンテナ)を積載し、同様にコネクトエリア浜松でSBコンテナを分離する。

 そして、大阪行の冷凍SBコンテナは、大阪発のシャシーに積みかえて大阪へ向かい、横浜行のドライSBコンテナは、横浜発のシャシーに積みかえて横浜へ向かう。つまり浜松はドライバーとシャシーの折り返し点でもあるわけだ。

 実際の運行ルートでは、横浜方の目的地である安田倉庫守屋町営業所で、さらにSBコンテナを中継して最終目的地の中央倉庫埼玉営業所(加須)へ輸送し、大阪方でも最終目的地の前に一度、中央倉庫京都PDセンター(久世)でSBコンテナを中継するという。

 これによって、横浜のドライバーも大阪のドライバーも、往復7~8時間(含む休憩1時間)の運行で済むことになる。通常のトラック一貫輸送では、休憩なしでも往復14時間以上かかるルートだが、中継輸送なら日帰りが可能なのだ。

 安田倉庫では、スワップボディコンテナ車について、このように日帰り運行の実現のほか、待機時間の減少および残業時間の削減、女性ドライバーの起用拡大、労務環境改善によるドライバー定着率の向上、荷役分離による運転集中効果で輸送の品質と安全性の向上が期待できるとし、さらに運行距離とアイドリング時間の短縮により、CO2排出削減にも寄与するとしている。

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