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超弩級スーパーカーに果敢に挑んだ孤高の狼!! ロータス・ヨーロッパ【いのうえ・こーいちの名車探訪】

 ランボルギーニ・クンタッシ(カウンタック)、ミウラ、フェラーリ「BB」、ディーノ、マセラティ・ボーラ……そうそうたる異次元のクルマたちの名が挙るスーパーカー世界。佳き時代のブームの折、その主役のひとつにロータス・ヨーロッパがあったのを憶えておいでか。

 4L超、300PS超のV12気筒エンジンを搭載した超弩級スーパーカーのなかにあって、1.6Lにも満たない、パワーにしても半分以下の直列4気筒エンジン搭載車が活躍するとは。

 オトナになっていろいろなことが解ってくると、選ばれたロータス・ヨーロッパは絶妙な存在だと気付かされる。

 だいたいが決してスーパーカーにも劣らないあの個性的なスタイリングだ。それに軽量かつ小型のボディで、ヒラリヒラリとコーナーを抜けていける。超弩級スーパーカーは確かに直線では速いけれど、条件によっては充分にヨーロッパにも勝機があるではないか。

 なるほど、絶妙の選択といまさらに賞賛したくなるのだ。

文、写真/いのうえ・こーいち

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■そもそもは実用車

ロータス ヨーロッパ。「安価で創造性豊かなGTカー」というコンセプトで登場した(写真はモデルチェンジ後のS2)

 ロータス・ヨーロッパが登場したとき、そのコンセプトはなかなか興味深いものであった。いま訊くと「あれ?」と思ったりするのだが、「安価で創造性豊かなGTカー」というのがそれ。

 だいたいがロータス・セヴンも実用GTというのだから、彼らの「モノサシ」が一般と一致するとはいい難かったりする。そのセヴンの後継車として欧州で売りたい、と計画されたのがその名もヨーロッパなのであった。

 鋼板で組んだバックボーン・シャシーにFRPの軽量ボディを組み合わせる。エンジンはルノー16などに使われていた4気筒OHV78PS。特徴的なのはごく初期のミドシップを実現したことと、徹底的なコストダウンのためにすべてをシンプルな構造としたこと。

 まあロータスの徹底振りはすごい。サイドウィンドウもシートもボディに固定、シャシーとボディは脱着不能。ドライヴィング・ポジションの調節はペダル類を移動して行なうというものだった。

 前輪駆動用の直列4気筒エンジンをそっくりそのままミドシップ位置に搭載して、1966年からルノーの販売網を利用して市販された。売行きはよかったというが、ロータスの「モノサシ」、固定されたウィンドウなどは受け容れられ難かったようだ。

 1968年4月、ロータス・ヨーロッパはヨーロッパS2にチェンジする。

■国内販売を開始

 ヨーロッパS2は初期モデルの不都合を是正すること、英国内でも発売すること、がチェンジのポイントとなった。

 それまで左ハンダーのみであったものが右ハンダーも設定され、ブーイングのもとであったサイドウィンドウは開閉可能どころか、一気にパワー・ウィンドウ化された。シャシーは脱着可能(初期型は固定されていて修理不能だったのだ)に、シートはスライド調節可能に、すべてが改善された。

 しかし、ヨーロッパの評判はいまひとつであった。ロータスはやはり小型ながら高性能であることが望まれたのだ。そこでふたたびチェンジを受け、ヨーロッパTCへと進化する。1971年9月、それまでのルノー製ユニットに代えて「TC」の名の示す通りロータスお得意のツウィンカム・エンジンが投入される。

 エランなどでお馴染みの直列4気筒DOHC1558cc、105PSを搭載、ひと回り性能をアップしてロータスらしさを主張した。

 ボディ周りもキャビンから後ろの部分をリスタイリングした。ほとんど絶望的といわれた斜後方視界の改良を図ることもあって、ひと回りすっきりとしたサイドヴュウになった。

■最終にして最強のヨーロッパ

 それも束の間、翌1972年8月にはさらなるチェンジを受けて、ヨーロッパは最終形、ヨーロッパ・スペシャルになった。

 F1レースでの活躍を反影して、艶やかなピンストライプを入れた「JPSカラー」に象徴されるように、派手な出立ちのヨーロッパは、その独特のスタイリングと相俟って、大きな存在感の持ち主に仕上がっていた。

 そう、超弩級スーパーカーに間にあっても埋没してしまわないだけの存在感。それを巧みに取込んで、ブームでも主役に近いポジションを得た、というわけだ。

 ヨーロッパ・スペシャルは「ビッグ・ヴァルヴ」と愛称される126PSツウィンカム・エンジンを搭載し、ミドシップであることも手伝って、エランに勝るとも劣らない性能を主張したのだった。

 振り返ってみるとよく解るのだが、そのころ、ロータス社はいろいろな規制に対応することもあって、大きく姿勢を変えようともがいていた。ヨーロッパをさらに推し進めて、本当のスーパーカー級のロータス・エスプリを筆頭に、二代目エリート、エクラといった、ひとクラス上のラインアップを揃えるのだ。

 しかし、ロータスがロータスらしさを取り戻したのは、やはり小型軽量のエリーゼから。ヨーロッパは、そんな時代の変わり目、ピリオドを打つ役目も果たしていたのだった。

【著者について】
いのうえ・こーいち
岡山県生まれ、東京育ち。幼少の頃よりのりものに大きな興味を持ち、鉄道は趣味として楽しみつつ、クルマ雑誌、書籍の制作を中心に執筆活動、撮影活動をつづける。近年は鉄道関係の著作も多く、月刊「鉄道模型趣味」誌ほかに連載中。季刊「自動車趣味人」主宰。日本写真家協会会員(JPS)

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