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auじぶん銀行と米金融サービス企業「S&P グローバル」は23日、6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)の速報値を発表した。6月の製造業PMIは52.7と、5月の53.3から小幅ながら低下した。

6月の製造業PMIが、前月より低下した主な理由は、上海での長期間のロックダウンなど、中国のコロナ対策措置に端を発したサプライチェーン(供給網)の混乱にある。

YOSHIE HASEGAWA /iStock

製造業PMIは景気の先行指標

製造業PMIは、企業の購買担当者らの景況感を集計した景気指標の一つ。製造業の購買担当者に新規受注、生産、雇用の状況や景況感などをアンケート調査した結果を数値化したものだ。

50が景況感の判断の分かれ目で、50を上回る状態が長く続くと景気拡大、反対に50を割り込む状況は景気減速を示す。今後の景気動向を見通すための先行指標とされており、投資家にとって重要な判断材料となっている。

日本の製造業PMIは、コロナ前は53~54を推移していたが、2020年6月には37.8にまで落ち込んでいた。その後、徐々に上向きに推移し、昨年2月には50に回復。以来、17カ月連続で50を上回っている。少なくとも指標上は、日本は景気拡大局面にあると言える。

アメリカの製造業PMIとドルとの関係

リセッション(景気後退局面)が懸念されるアメリカだが、製造業PMIは日本よりも上にある。アメリカのコロナ前の製造業PMIは、日本より低い50~51で推移していた。コロナ禍を受けて、2020年5月には36.1に落ち込んだ。しかし、それを底に反転。昨年は多くの月で60以上という高水準で推移。今年に入ってからも57~59を行き来している。

世界最大の経済大国であり、基軸通貨のドルを持つアメリカの製造業PMIのマクロ経済での重要度は、各国の製造業PMIより高い。投資家にとって特に重要なのは、事前予想との比較だ。事前予想よりが高ければ市場から好感され、低ければ失望されやすい。

一般的には、事前予想より高い場合はドル買いが進行しドル高になる。株価も上がりやすい。反対に、事前予想より低いと、ドル安になり、株価も下がる傾向になると言われている。

アメリカの製造業PMIは、今年に入ってから、ほぼ事前予想より高かったが、6月1日発表の5月分の値は予想より低い57.0だった(事前予想は57.5)。景気減速が懸念される中、アメリカの最新の製造業PMIに、より注目が集まる。

中国経済の悪化懸念

中国・北京の自動車工場(Chalffy /iStock)

マクロ経済への影響という点では、今や世界2位の経済大国に位置する、中国の製造業PMIは特にアジア地域の経済において重要な指標だ。

中国の製造業PMIは、コロナ前でも49と50を行ったり来たりといった様子だったが、コロナショックで、2020年2月に予想より10ポイントほど低い35.7に低下。翌月にはすぐに50に上昇するなど、いち早く回復していた。しかし、今年に入ってからは47~50を行き来しており、直近は3カ月連続で50を下回った。

こうした中、懸念されるのが中国経済の悪化だ。中国経済の悪化は日本をはじめ、アジア地域の周辺国の経済に大きな影響を与える。というよりも、既に与えている。韓国の5月の貿易収支は、4月に続いて赤字に陥った。この大きな要因は、中国経済の悪化によって、中国向けの輸出が伸び悩んでいることにある。

さらに、日本経済にも既に影響している。財務省が5月に発表した4月分の貿易統計速報によると、日本から中国への輸出数量指数は、前年同月比22.6%減だった。輸出数量指数の低下は2カ月連続で、3月は13.0%の減少だった。

中国政府は景気対策として、中小・零細企業の支援を強化する方針を打ち出し、税還付や減税、社会保険料の納付猶予などを実施すると発表しているが、こうした中国政府の対策が企業マインドにどういった影響を与えるか。6月分の中国の製造業PMIは、30日に発表される予定だ。