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<p>「絶対に人を好きになるな」「弟は両親と絶縁」「ずっと貧乏」統一教会 “合同結婚式二世”の苦悩 | 週刊文春 電子版</p><p>「祝福二世」と呼ばれる子たちがいる。教団内における合同結婚式の名称が「祝福結婚式」だからだ。 統一教会の「祝福二世」として生きてきたA子さん(30代)がその体験を「週刊文春」に証言した。</p><p>安倍晋三元首相の銃撃事件で注目を集めたのが、新興宗教の“二世”問題だ。 山上徹也容疑者(41)は、自身の出生後に母親が統一教会(現・世界平和統一家庭連合)にのめり込み、家族が崩壊した。一方、統一教…</p><p>「私は1980年代に合同結婚式で一緒になった両親の元に生まれました。弟と二人姉弟です。祝福二世は、合同結婚式の後に『三日行事』と呼ばれる、サタンの血統を清算する行事を経たあとに誕生しています。だから『神の血統』に転換された尊い子として、周囲から凄く持てはやされ、大事に大事に育てられるんです」 文鮮明と韓鶴子の教祖夫妻 ©共同通信社 家には文鮮明教祖夫妻の写真が飾られた「祈祷室」があり、週1回、家族揃ってお祈りを捧げる。日曜日には教団の教会へと礼拝に出かけていく。自分の置かれた環境、世界観が他の家庭と違うことに気づいたのは、A子さんが幼稚園に通い始めた頃だったという。 「両親から教団の外は『サタンがはびこる世界だ』と、事あるごとに教えられていました。だから、外の世界とはできるだけ関わりたくないな、幼稚園の他の子は、可哀想にサタンの子なんだな、思っていました」 A子さんが小学校に上がる頃。桜田淳子(当時34)ら芸能人が立て続けに我が家と同じ信仰を明かし、合同結婚式に参加した。 合同結婚式 ©共同通信社 「その話題が連日テレビで取り上げられ、統一教会がバッシングされているのは何となく分かるんです。報道を見て母親は毎日泣いていました。『真のお父様』(教祖の文鮮明)が根も葉もないことを言われていると。大好きなお母さんを泣かせる社会は許せないと思う反面、子供ながらに、自分の家が統一教会だとは学校では絶対に言えないなと。どんな反応をされるか分からなくて、怖くて……」 合同結婚式まで「必ず清い体を保たないといけない」 「そんな時、親からは『おじいちゃん、おばあちゃんと答えるように』と。普通の衣装じゃないですし、まず怪訝な顔をされます。これは“祝福二世あるある”なんです」 記者会見する桜田淳子と夫=28日午後、大阪市内のホテル ©共同通信社 一方、物心がついた頃から徹底して叩き込まれたのが「絶対に異性を好きになってはいけない」という不条理な教えだった。本や漫画は事前に両親の“検閲”を受け、恋愛に関心を抱きそうな箇所は切り取られる。視聴してよいテレビ番組も大きく制限された。 「あなたには同じ祝福二世の相手が用意されているんだから、それまで必ず清い体を保たないといけない」 祝福二世にとって「自由恋愛」は、最も重い罪として扱われた。誰かを好きになる、人としてごく自然な感情の萌芽を、罪悪感で封じ込めなければならないのだ。寄せられた好意も同様に、得も言われぬ不安を掻き立てるだけだった。 「恋愛は統一教会の教義でいう『堕落』。一般社会の人と性的に交われば、神の血統がサタンの血統に戻ってしまい、死後、自分だけでなく、親から霊界の先祖代々に至るまで、みな地獄の底に堕ちると教え込まれてるんです。祝福二世の親である父と母は、私を堕落させまいと、それはもう必死でした」 両親に疑問をぶつけると「その考え方はサタンだよ!」 それでも、思春期を迎える中高生時代になると、教団の教えに対する疑問がA子さんの頭をよぎるようになる。なぜ人を好きになってはいけないのか。本当に天国や地獄は存在するんだろうか。それを正直にぶつけると、両親は色をなしてA子さんを叱りつけた。 「あなたは二世なのに、なんてことを言うの。その考え方はサタンだよ!」 学校の友達や先生にも胸の内を相談できないまま、A子さんは高校を卒業。大学進学後も、悩みは深まるばかりだった。ある時、A子さんは意を決して、大学内のカウンセリング室を訪ねた。 「勇気を振り絞り、カウンセラーの先生に自分の境遇と家庭の信仰を打ち明けました。統一教会の教えには疑問も抱いているけど、親は大切だし、裏切れなくて辛いんです、と」 だが――。</p>