7年ぶりに一新された新型ステップワゴンが発売されてから、早1カ月が経過した。「素敵な暮らし」をグランドコンセプトにし、先代よりもエクステリアや室内空間、安全性能を充実させた。
さらに車両感覚がつかみやすい視界と乗り物酔いをしづらくする工夫で、多人数で乗るミニバンの機能を向上させた。
そこで、本稿ではフルモデルチェンジし、進化した新型ステップワゴンのグレード選びと買い方について解説。さらに同門であり、ライバル車でもあるホンダフリードにくいつくことはできるのか、考察する。
文/渡辺陽一郎、写真/奥隅圭之、雨田芳明、HONDA
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気になる新型ステップワゴンのグレード選び方とは?
最近登場した新型車のなかで、最も注目されるのがステップワゴンだ。ミニバンの主力車種だが、最近はライバル車のノア&ヴォクシーやセレナに販売面で差を付けられていた。そこで7年ぶりに一新して、人気の回復を狙っている。
新型ステップワゴンの特徴は、多人数で乗車するミニバンの機能を改めて見直したことだ。ドライバーと同乗者の両方が車両の周囲を見やすいように、視界には特に気を使った。視界の向上は安全運転にも役立つ。
居住性では3列目シートの座り心地を改善して、多人数が長距離を快適に移動できるようにした。ボディ剛性の向上などにより、乗り心地の粗さも払拭され、多人数がリラックスして乗車できる。
そこで新型ステップワゴンのグレード選びと買い方について考えてみたい。
新型ステップワゴンのグレード構成は、エア、スパーダ、スパーダプレミアムラインの3種類に分けられる。パワーユニットは、ハイブリッドのe:HEVと1.5Lターボの2タイプだ。この両方を3種類のグレードで選択できる。
駆動方式は、e:HEVは前輪駆動の2WDのみで、ターボでは4WDも選べる。シートの配列は、2列目がセパレートタイプになる7人乗りが基本で、エアとスパーダにはベンチタイプの8人乗りも用意した。
選ぶときは、まずエア、スパーダ、スパーダプレミアムラインを決める。エアはフロントマスクを穏やかなデザインに仕上げ、内装色も、ブラックに加えて明るいグレーを選べる。シート生地はベーシックなファブリック素材だが、伸縮性があり、座り心地を柔軟に仕上げた。
スパーダは精悍かつスポーティな印象で、フロントマスクは、エアに比べると存在感を強めた。内装色はブラックのみで、スポーティ感覚を大切にしている。
装備に不十分? ステップワゴン「エア」にないものとは
新型ステップワゴンのコンセプトは「安心と自由」「くつろぎの室内空間」だから、車両のコンセプトに沿った代表グレードはエアだ。今のミニバンには、エアロパーツを装着してフロントマスクも存在感を強めた車種が多いが、この傾向が好みに合わないユーザーにとって、新型ステップワゴンのエアは共感の得られるクルマになっている。
しかしエアは、スパーダに比べて、装備に不十分な面があるから注意したい。後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーション、曲がる方向を照らすLEDアクティブコーナリングライト、7人乗りの2列目シートに備わる乗員のふくらはぎを支えるオットマン、テールゲートの電動開閉機能などは、スパーダには標準装着されるのに、エアではオプションでも装着できない。
e:HEVの作動を調節する減速セレクターが、スパーダには標準装着されてエアには採用されない違いもある。コンセプトでは、エアが主力となるべき代表グレードなのに、装備が足りずに選びにくくなっている。
特にブラインドスポットインフォメーションは、安全性を高める上で大切だ。ミニバンは家族を同乗させるから、ユーザーはほかのカテゴリー以上に安全性を重視する。エアにブラインドスポットインフォメーションを装着できないと、ユーザーニーズに応えられない。
エアに装着できない理由は、スパーダとはボディ後部の形状が異なるからだ。ブラインドスポットインフォメーションのユニットは、テールランプの下側付近に内蔵されるが、エアのボディ後端には丸みがあり、スパーダは角張っている。
この違いにより、エアにはブラインドスポットインフォメーションのユニットが収まらなかった。このほかオットマンやテールゲートの電動開閉機能なども、ミニバンにとってニーズの高い大切な装備だ。
ステップワゴンを買うなら、どのグレードがベストか?
今のホンダは、受発注の繁雑さを避けて合理化するため、メーカーオプションを減らす方針を打ち出している。フィットも以前に比べるとグレードを増やすいっぽうで、メーカーオプションは削減した。
新型ステップワゴンの3グレード構成も、この流れに沿うが、車種のコンセプトを象徴するエアの装備を貧弱にしてはいけない。エアの装備不足は販売面でも妨げになるから、将来的には、特別仕様車の設定やグレードの見直しによってエアの装備を充実させる。
e:HEV、ターボともに、スパーダの価格はエアに比べて25万8500円高い。前述のようにスパーダには価格が比較的高い装備が豊富に加わるため、プラスされた装備を価格に換算すると合計約26万円になる。
スパーダが特に割安とはいえないが、安全性を高める装備も多く含まれるから、デザインや車両コンセプトとの整合性を除くと、最も推奨されるグレードはスパーダになる。
最上級のスパーダプレミアムラインには、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を抑えるアダプティブドライビングビーム、マルチビューカメラシステム(ほかのグレードのオプション価格は8万9500円)、2列目シートヒーターなどが標準装着される。シート生地も上級化して、アルミホイールのサイズは、エアとスパーダの16インチからスパーダプレミアムラインでは17インチに拡大される。
スパーダに比べると23万円相当の価値を加えて、価格の上乗せは20万5700円とした。スパーダプレミアムラインは、若干割安だから、プラスされた装備が気に入ったなら選ぶ価値がある。
グレードが決まったら、次はパワーユニットを選ぶ。4WDが欲しい場合は必然的にターボだが、2WDならe:HEVも選択の対象に入る。
e:HEVの価格はターボに比べて38万3900円高いが、購入時に納める税額は、スパーダ同士の比較で7万5700円安い。この金額を差し引くと、e:HEVとターボの実質価格差は30万8200円だ。
WLTCモード燃費は、e:HEVスパーダが19.6km/L、ターボのスパーダが13.7km/Lだから、レギュラーガソリン価格が1L当たり160円とすれば(今の170円は高すぎる)、8万8000kmを走ると燃料代の節約で価格差を取り戻せる。1年間に1万kmを走る場合は約9年、1万5000kmを走ると約6年だ。
この損得勘定は微妙だが、e:HEVはモーター駆動だから、ターボに比べると実用域の駆動力に余裕がある。加速も滑らかで、エンジンノイズも小さい。運転感覚や乗員の快適性まで考慮すると、e:HEVスパーダがベストグレードだ。
ただし価格は7人乗りが364万1000円で、カーナビなどをオプション装着すると約390万円に達する。予算に応じて、ターボを搭載するスパーダ(325万7100円)やエア(299万8600円)も検討したい。
今後の展開として、ブラインドスポットインフォメーション+LEDアクティブコーナリングライト+2列目シートのオットマン+テールゲートの電動開閉機能が、エアに20万円前後でセットオプションとして設定されると良心的だろう。319万円で装備の充実するターボのエアを選べると、ユーザーのメリットも増える。
ライバル車のノアでは、標準ボディに2Lのノーマルエンジンと充実装備を搭載するZが324万円だ。充実装備のエアが追加されると、価格競争力でもバランスが良い。
同門でありライバル車 ホンダフリードの人気にくいつくことができるのか?
そのいっぽうで新型ステップワゴンは、同じホンダのコンパクトミニバン、フリードともライバル関係にある。ホンダ車のユーザーが、新たにミニバンの購入を考えた時、新型ステップワゴンと併せてフリードも選択肢に入るからだ。
現行フリードは2016年に登場したから、基本設計に古さも見られる。特に3列目のシートは、新型ステップワゴンに比べると床と座面の間隔が不足して、足元空間も狭い。それでも3列目を畳むと、新型ステップワゴンと同じように自転車を積める。7人乗りの価格は、1.5Lノーマルエンジンを搭載するGホンダセンシングが216万400円、ハイブリッドGホンダセンシングは256万1900円だ。
フリードの場合、ノーマルエンジンのGホンダセンシングでは、サイド&カーテンエアバッグやLEDヘッドランプがメーカーオプション設定だ。装備水準を新型ステップワゴンエアと合わせると約20万円の価格アップになる。
それでも新型ステップワゴンにターボを搭載するエアと、フリードにノーマルエンジンを搭載したGホンダセンシングでは、60万円以上の実質差額が生じる。
開発者は「フリードには他車では得られない買い得感があり、フリードを何台も乗り継ぐお客様が多い」という。
販売店では「車内の広いミニバンに慣れると、子育てを終えても、天井の低いクルマでは窮屈に感じる。そこでステップワゴンから、コンパクトでも窮屈に感じないフリードに乗り替えるお客様も多い」と述べている。
新型ステップワゴンは優れた商品になったが、フリードのユーザーを奪うのは難しい。フリードも堅調に売れ続けるわけだ。
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