世界的なカーボンニュートラルを目指す取り組みの中で、自動車業界はBEV(バッテリー式電気自動車)が主役となった。ところが欧州ではPHEV(プラグインハイブリッド)は、エンジン使用時の燃費が悪いとのことで批判の的となっている。
その一方でモータースポーツ界では、ハイブリッドが大活躍している。F1といった究極のレーシングマシンに加え、WECなどのスポーツカーレースにもガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムが採用されている。
そして2022年からは世界ラリー選手権(WRC)のトップカテゴリーの参加車両にはハイブリッドの使用が義務付けられた。モータースポーツで続々採用されることで、欧州でのハイブリッドの評価は変わるのだろうか?
文/国沢光宏、写真/TOYOTA、Redbull
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■日本車の強みハイブリッドを生かしてカーボンニュートラルを実現
欧州に於ける二酸化炭素の悪役イメージは、ロシアのウクライナ侵攻による混乱の中でも全く薄まらない。
そればかりかロシアがドイツなどにパイプラインで送る天然ガスの量を60%削減すると言っても(フランスはすでに供給終了)、危機感こそ募らせるものの、だからといって譲歩する雰囲気無し!そればかりか、燃やせば二酸化炭素を出す天然ガスに頼らない方向を探り始めた。
エネルギー調達という点で恵まれた環境にある我が国が「夏場に電力供給に問題出てくるから節約を」と、十分な準備期間あったのに泣き言を平気な顔して主張しているのと好対照だ。
日本は未だに「2030年に二酸化炭素の排出量を2013年比46%削減」という国際公約を実現するロードマップを持っていない。実現出来なければ二酸化炭素を出して作った日本の製品を輸出出来なくなります。
そんな欧州で実需を集めつつあるのがハイブリッドだったりする。考えて欲しい。カーボンニュートラルを実現しようとしたら電気自動車しかないと皆さん認識してます。
一方、全てのクルマを今すぐ電気自動車に置き換えることは出来ないということも理解しているようだ。加えて欧州は2030年までに二酸化炭素の排出量を55%削減するという法的拘束力を持つ規制値も決めた。
そこで俄然注目され始めたのが、普通のエンジン車の二酸化炭素排出量を半分近くまで減らせるハイブリッド車だったりする。
すでにトヨタのハイブリッド車はタクシーに代表される”働く車”を中心に引っ張りだこ状態となっており、供給が追いつかない状況。作れば作るほど売れる、と言って良い状況。エンジン搭載車販売禁止までの間、ハイブリッドは重宝されることだろう。
参考までに書いておくと、トヨタ以外で燃費の良いハイブリッドを持っているのはホンダとルノーくらい(ホンダは欧州で存在感無く売れないだろう)。トヨタとルノー、これから10年近くの間、好調なビジネスが出来ると思う。
■モータースポーツで活躍するハイブリッド技術
さらにトヨタにとって素晴らしい追い風も吹く。今シーズンからWRCのトップカテゴリーとなる『ラリー1』クラスにハイブリッドが義務付けられたのだった。
説明するまでもなく欧州ではモータースポーツも二酸化炭素の排出量を削減しようという動きになっている。すでにF1を始めル・マン24時間に代表されるWECなど、燃料を効率良く使うべくハイブリッドを導入済み。
とはいえハイブリッドを使っているイメージは薄かったように思う。しかしWRCのハイブリッド導入、F1やWECと少しばかり違う効果を出すかもしれない。
というのも「欧州でクルマを売るならWRCに代表されるラリーが最も効果的」と言われる通り、ラリーは消費者に与える効果大きいからだ。
そもそもF1やWECは市販車と全く違う車両で競われるし、採用されているハイブリッドシステムも複雑。正直な話、どうなってるのか解らない。WRCに導入されたハイブリッドはシンプル。ポン付けしているだけなのだった。
ラリー1で採用しているのは全てコンパクトダイナミクス社(独)が開発したシステムで、3.9kWhの電池と136馬力のモーターを組み合わせている。
モーター出力でハリアーハイブリッドなどと同等レベル。搭載してる電池容量は4倍といったイメージ。スペシャルステージでの燃費を改善させつつ、絶対的な性能も上げようという狙い。サービスパークではEVモードで走る規則。
ちなみに今まではサービスパークに大きなエンジン音を出しながら入ってきたが、今シーズンから無音。いつか誰か轢かれる(笑)と話題になっているほど。いっそ日本のように幽霊音を入れるか?
閑話休題。WRCにハイブリッドが採用されたという話、予想外に広まっている。欧州だとWRCってサッカーくらいの人気。皆さんドライバーやチーム、車両レギュレーションに詳しい。
先日WRCポルトガルを取材したが、ラリーファンの皆さんはハイブリッド技術を「燃費改善しつつ動力性能も追求出来る。クルマの楽しさは変わらない」みたいに理解しているようなのだった。
ハイブリッド技術を市販車に採用しているトヨタの評価、今年に入って一段と高くなってます。カーボンニュートラル実現までの過渡期はハイブリッドが良い仕事をするかもしれない。
追記しておくと、WRCのラリー1クラスはハイブリッドの他、P1燃料(100%カーボンニュートラルの合成燃料)を使うようになった。
すでにカーボンニュートラルを実現しているワケ。今後P1燃料の価格がリッター1000円くらいまで下がってきたら、トップカテゴリーのラリー1だけでなく、市販車エンジン&車両ベースのクラスもカーボンニュートラルを実現出来るだろう。
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投稿 欧州ではサッカーと並んでラリーが大人気!! WRCへのハイブリッド導入でトヨタ車の評価が爆上がりするワケとは!? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。