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 6月11日〜12日に決勝レースが開催されたWEC世界耐久選手権第3戦、第90回ル・マン24時間耐久レース。WRTからLMP2クラスに参戦したアウディワークスドライバーのレネ・ラストは6年ぶりのル・マン参戦を果たしたが、ル・マン24時間の会場でひさびさのル・マン、そして将来のビジョンについて聞いた。

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──ル・マン24時間レースには2015年にアウディでLMP1に初参戦。その翌年にはGドライブでLMP2に参戦し、その後はしばらくル・マンからは遠ざかっていましたね。今回はひさびさのル・マンでしたが、どんな感触がありましたか?
レネ・ラスト(以下RR):
6年ぶりのル・マンはとても気分が良かったし、ここにまた来られる、またここを走れることはとても光栄で嬉しかったね。雰囲気やサーキットの感じ、ル・マンの町の感じは6年前とはほとんど変わってないね。特に僕にとっての6年ぶりとなるル・マンで、コロナ規制が解除となって大勢のファンが再びサーキットへ応援に駆けつけてくれたことがなによりも嬉しいよ。

──6年ぶりに走ったサルト・サーキットはいかがでしたか?
RR:
一部、例えばポルシェカーブは少し変わったりランオフエリアが増えているけど、コースはほとんど変わってないね。ミュルサンヌのストレートのアスファルトが新しくなっていたけれど、僕がドライブした感触では6年前とほぼ変わりがなく、当時走った時の記憶もしっかりと残っていた。

──LMP1、LMP2、クラス1でのDTM、今季復帰したGT3でのDTM、ニュルブルクリンクやスパの24時間レース、昨年はフォーミュラEもシーズンエントリーをするなど、さまざまなカテゴリーの経験がありますね。今後のビジョンが注目されていますが、近い将来をどう見据えていますか?
RR:
若手と言われる年齢やキャリアはとっくに過ぎたけど、ベテランの域にはまだ到達していない。ちょうど間の年齢、キャリアだと思う。自分でもこの先、どう進むのかがとても楽しみだし、自分自身にも興味がある。ただ、どこへ進むべきなのか、自分がどこに行くべきなのか、それを明確にいうのは今の段階では難しいかな。

 DTM、WECやその他の耐久レース、フォーミュラE、すべて自分がやってみたかったことだし、どこで走っている自分もイメージできる。いろんなオプションやオファーもあることは事実。だけど、今季も来季もアウディのワークスドライバーとしての契約下にあるので、アウディの活動が優先になるだろう。

──アウディといえば、LMDh開発プロジェクトは休止中ですが、あなたが今季WECやル・マンに参戦することは、当初LMDhの開発プロジェクトの一環でしたね。
RR:
世間が知るように、LMDh開発はいったん休止状態となっていて、我々ワークスドライバーも次にどうなるのか、アウディの決断を待っている状態だ。それによって僕の今後の活動の方向が左右されるところもある。

──ロビン・フラインス、ニコ・ミューラー、そしてあなたがアウディのLMDhプロジェクトの開発ドライバーとしてこのLMP2へ派遣されている認識で良いのでしょうか。
RR:
フラインスは僕とミューラーより先に派遣されてLMP2をドライブしている。そしてWRTが来年アウディのLMDhプロジェクトを担う予定だったことは事実だし、このチームでフラインスと僕がチームとともにWECやル・マンで経験を積んで、今後の開発、そしてWRTと一緒にここでチームの動きを学ぶ目的もある。あとは、WRTも僕たちワークスドライバーもアウディの決断を待っている状態で自分たちからは何もアクションは起こせない。

WRTの31号車オレカ07・ギブソン 2022年WEC第3戦ル・マン24時間
WRTの31号車オレカ07・ギブソン 2022年WEC第3戦ル・マン24時間

──あなたはニュルブルクリンク、スパ24時間レースにも数多く参戦しています。それらのコースに比べるとル・マンはアップダウンがほぼありませんが、ドライバーとしてル・マンの魅力は?
RR:
3つの24時間レースはまったくキャラクターが違うし、ドライバーとしてチャレンジする部分もまったく違うと思う。このル・マンではテルトルルージュのようなハイスピードの右カーブ、ポルシェコーナー、ナイトセッションでフルスロットルで走るロングストレートは痺れるね!

──ル・マン24時間の2週間前はニュル24時間でしたが、レース中にコース脇のファンの様子で異なるような感じもありますか?
RR:
ここル・マンはとてもおとなしいね、静かだし(笑)。ニュルはクレイジーで煙がモクモクしたり、花火が上がったり、電飾がキラキラしたりで賑わっているのが普通だから、ル・マンがすごく静かに感じるよ。ニュルはまったくの別物だよね(笑)。どこのサーキットでも、ファンがそれぞれの楽しみ方でレースをエンジョイしてくれるとドライバーとしてはそれが嬉しい。コロナ禍では寂しいレースを経験しているので、ファンがいてくれることがこんなに素晴らしいんだと改めて実感したし、彼らの存在なしではレースが成り立たないと思ったよ。

──ところで、2019年にはDTMとスーパーGTの交流戦で初来日をしましたね。その際、実はあなたは高熱を出していて体調が非常に悪かったにも関わらず、どうしても日本へ行くことを望み、スーパーGTとのレースに出たかったと聞いています(アウディ関係者以外にはそのことは伏せられていた)。
RR:
あの日、僕にとって初めての日本で、随分と前から本当に楽しみにしていたし、やっと日本でレースができるという長年の夢が叶う日だった。だから、なんとしてでも交流戦に参戦したかったから、体調がかなり悪かったけれどそれを伏せて参戦していたのは事実だ。でも、あの時日本に行って本当に良かったと思うし、とても良い経験になった。

 残念ながら体調は最悪だったけど、そんなことを一瞬忘れさせてくれるくらいに、僕たちDTM勢にも本当にたくさんの日本のファンが応援してくれたのはしっかりと記憶に残っている。素晴らしい景色、礼儀正しく親切な素晴らしい人々。またいつの日か、日本でレースをできることを心から願っている。

──今季はWECにもシリーズ参戦していますが、今季のDTMのスパ戦とWECの富士戦が同週末開催となりますが、あなたはどちらへ参戦するのでしょうか?
RR:
これは難しい! もちろん、両方に出たいよ! WECかDTMのどちらかが、レースの日程を1週間ずらすのではないか、という噂が出ているので、その噂が現実になることを切に願っている。僕だけじゃなく、DTMとWECの両方に出ているドライバーたちもそう思っているはずだ。

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 この日程変更の噂に関して、DTMイモラ戦でITR代表のゲルハルト・ベルガーに確認を取ったところ、そのような噂はITRサイドには入っていないのことだった。ラストがひさびさに日本でレースを戦うのか、DTMに参戦するのかは注目のポイントだろう。

通算25勝目を挙げた3冠王者レネ・ラスト 2022年DTM第3戦イモラ・レース1
通算25勝目を挙げた3冠王者レネ・ラスト 2022年DTM第3戦イモラ・レース1
2019年のDTMチャンピオン、レネ・ラスト(Audi Sport RS 5 DTM)
2019年にその年のDTMチャンピオンとして来日したレネ・ラスト(Audi Sport RS 5 DTM)