5月12日に発表されたカロッツェリアの新ドライブレコーダー。昨今のあおり運転問題を受けて同社が出したひとつの答えは何か? 発売開始前に特設コースで実際に体験した結果、今後ドラレコに求められる機能と役割が少しずつ見えてきた。
文/高山正寛、写真/高山正寛、Pioneer
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■昨今のクルマ社会はリスクだらけ、という現実
今回テーマにする「あおり運転」だけでなく「車両へのいたずら」「駐車時における隣のクルマからのドアパンチ」など本来ドラレコの役目である「運転中における事故の記録」だけではなく、走行中も駐車中もクルマには危険やリスクが多く潜んでいることが浮き彫りになったことだ。
実際、現地では新製品のプレゼンテーションが行われたが、同社の調査でもドライブレコーダーを初めて購入しようと検討している顧客の不安点の第1位は「録れていると思ったら録れていなかった」が34.7%と最も多く、求めているのは「画質」「夜間(暗闇)における性能」「駐車監視」という結果だった。
これらをまとめるとドラレコに求めるものは“映像の証拠能力”になるが、ドラレコのカメラは通常のカメラ(スマホ含む)とはそもそも撮影目的や被写体、フォーカスポイントや露出などの考えが根本的に違う。
今回の新商品は「必要な証拠を残す」ために同社がこれまで培ってきた映像の品質に徹底的にこだわってきたことがわかる。
■画質チューニングに必要な「3現主義」とは何か?
では具体的にどのような部分を強化したのだろうか。そのキーワードが「3現主義」である。聞き慣れない言葉だが、3現とは(現場・現物・現実)の意味で、日中/夜間、トンネルなど様々なシチュエーションの走行評価。
そこから得たデータ上に白飛びや黒つぶれなどの明暗バランス、ナンバー文字の精細さなど録画データの確認、そしてそれらを様々なチャートを用いて各種チューニングを行う。このサイクルをくり返すことで実験室では再現できない録画性能を向上させてきたとのことだ。
■大ヒットモデルの後継機は画質を大幅に向上
カロッツェリアには昨年大ヒットした「VREC-DH300D」というモデルがある。価格と機能のバランスが優れており市場で評価されたモデルだが、新製品の「VREC-DH301D」は型番からも実質の後継機であることがわかる。
筆者は説明を受ける前に「マイナーチェンジモデルだな」という認識でいたのだが、これは大きな間違い。パイオニアのエンジニアからも「筐体自体は同じですが、画質に関してのレベルアップが半端ない」とのことだ。
前述したようにドラレコに映像を記録する環境は非常に厳しい。どの環境下でも安定した映像を記録できることが最も重要だが、前モデルである「VREC-DH300D」の映像評価から見えてきた走行中に遭遇するであろう厳しい状況でも確実な証拠能力を発揮することが求められる。
具体的には前述したチューニングにプラスして、夜間における駐車時の記録能力を高めている点が進化ポイントとして大きい。
これまでも同社のドラレコには暗闇の中でも鮮明に記録する「ナイトサイト」と呼ばれる機能が搭載されていた。これのコアとなるのがSTARVIS(スタービス)技術を搭載するソニー製のCMOSセンサーだ。
これ自体は他社でも採用しているものだが、今回の新製品はそのセンサーの中でも特に「低照度性能と広いダイナミックレンジ」を持つセンサーをセレクトし採用している点だ。これにより光源の少ない駐車場などでも「色付き」で記録できるとのことだ。
駐車監視機能に関してはオプションの「RD-DR001」が必要になるが、エンジン停止に連動し作動開始、衝撃を感知すると前後20秒づつの映像を記録できる。また設定により感度設定を8段階、4種類最大12時間のタイマーオフ設定も可能だ。
実際の画質自体をテストデータから確認するとフロントカメラに搭載された約370万画素のセンサーと明るいF1.4のレンズにより映像自体の品質が大きく向上していることが分かった。
■本命のVREC-DZ800DCが何が凄いのか!
今回同時に発表された「VREC-DZ800DC」はポジション的には「VREC-DH301D」とは異なるキャラクターを持つ商品だ。
基本スペックとしては前後200万画素、レンズの明るさもフロントはF2.0と一見「VREC-DH301D」よりスペックは下のようにも見えるが、その分、駐車監視機能をオプション無しで搭載したり、後述するがWi-Fi機能も標準装備している。
「VREC-DZ800DC」は電源をアクセサリーソケットから取るのではなく、バッテリーから直接取る方式を採用することで駐車監視機能がさらに強化されている点も見逃せない。
エンジン停止後の最大40分の「駐車監視モード」のほか、駐車時間や電圧設定に応じて自動で低電力駆動に切り替わる「セキュリティモード」も搭載する。車両のバッテリー状態にもよるが、24時間365日の監視にも対応できる点はありがたい。
またこれは良いな、と感じたのが監視中には本体に内蔵されたLEDランプが点灯する点。監視していることを車外にさりげなくアピールできるので車上荒らしなどに対して一定の効果はあるだろう。
■注目のあおり運転対策機能の実力を実走行で試す
そして「VREC-DZ800DC」最大の訴求ポイント、同社は「後方車両接近検知機能」と呼んでいる。
あおり運転などの危険運転が社会課題となっている事はいまさら説明の必要も無いが、実際これまでも後方から車両が接近すると注意を促したり、モデルによっては録画できる商品も存在した。
これらは「画像認識技術」を応用したものだが、それだけでは日々変化する道路状況に対応できない。パイオニアの開発陣はもしあおり運転に遭遇しても、その状況が全て記録できるという“安心感”を提供するためにこの機能を開発し搭載したという。
この機能は40km/h以上で作動を開始、後方車を検知した際、自車速度と後方車両の速度を常時検出し、速度に応じた危険距離内に車両が一定時間入った場合、あおり運転と判断し前後20秒づつ自動的に録画する。
もちろんこの録画データは専用フォルダに記録されるので常時記録のように上書きされることはない(記録上限はある)。
実際のテストでは「VREC-DZ800DC」を搭載した車両(40km/h以上で走行)に後方から車両が急接近した際の動作状態を体感することだったが、ルームミラーを見ていると「うっ、ヤバイ」と感じるタイミングで「VREC-DZ800DC」のディスプレイ部に「後方注意!」の文字と警告音が鳴る。
数回テストを行ったが、テスト車と後続車の速度は常に一定というわけではない。しかし「VREC-DZ800DC」は確実に反応し警告する。もちろん世の中には100%はあり得ないので天候などシーンによっては作動しないこともあるだろう。
しかし、一番感じたのは前述したように常に変化するクルマの速度(動き)においても「あおられてる」と感じた時にしっかり作動している点、言い換えれば「意識すること無く自然に作動する」ということだ。
パイオニアのエンジニアもその部分が開発の重要ポイントで独自のアルゴリズムを開発、どれだけ“人の感覚”に近づけるか、を狙ったそうだ。
また当日は試すことはできなかったが、あおり運転対策だけではなく、前方の車両が急ブレーキをかけたり、急な割り込みをして自車が急ブレーキを踏むことになった際にもイベント録画を行う「急制動検知機能」も搭載している。
■車載Wi-Fi、あるとやはり便利
「VREC-DZ800DC」にはWi-Fiモジュールを搭載しているが、専用アプリ「ドライブレコーダーインターフェース(無料)」をスマホでインストールすれば、録画された映像の確認や保存、映像のSNSへのアップロードなど多彩な操作が可能だ。
一番便利と感じたのが前述した「後方車両接近検知機能」の録画時間(3段階)や画像品質(2段階)が行える点。本体のディスプレイを見ながら行うのが少々面倒と感じる人にもありがたい機能と言える。
■新商品、一体どんな人に向いているのか
今回発表された新モデル。では実際、どのような人に向いているのだろうか。
価格はどちらもオープンだが、すでに予約を開始しているショップの情報によれば
「VREC-DH301D」:2万8000円前後
「VREC-DZ800DC」:3万6000円前後
となっている(店舗やECサイトにより異なる)。
価格差は1万円前後あるが、商品の狙い自体は大きく異なる。
●「VREC-DH301D」:前モデルの後継機らしく、高画質と高感度に徹底的にこだわっている点。大画面による操作性、そして前モデルでも好評だったデザイン性なども挙げられる。
前モデルも価格と機能のバランスに優れていたこともあり「始めてのドラレコを購入しようと考えている人」にオススメである。
●「VREC-DZ800DC」:先進機能を数多く搭載している点。従来のドラレコでは満足できなかった人、高速道路を走る機会の多い人、駐車監視機能をさらに強化したいと考えている人、つまり「ドラレコの知識は一定量あり、さらなるハイグレードモデルが欲しい人」に向いている。
日々における自分のクルマの使い方などからも好みで選べる点は魅力的だ。ちなみに筆者は近々車両入れ替えが発生することもあり、「VREC-DZ800DC」を購入しようと考えている。
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投稿 なぬっ、後続車の速度検知で煽りを防ぐ? 超最新ドラレコはWi-Fiも搭載でどこまで進化するのか は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。