もっと詳しく
限定500台に1万2300人の希望者殺到・即完!!! まさに「垂涎」 2台の「GRMNヤリス」に乗った!!!

 2022年1月のオートサロンで発表された2台のGRMNヤリス。1台はオンロードのサーキットを速く走るためだけに考え作られた「サーキットパッケージ」。もう一台は買ってそのままの仕様でラリー大会に出ても上位に食い込めそうなポテンシャルを持った「ラリーパッケージ」だ。

 購入希望者が殺到し、あっという間に完売となってしまったが、どんなクルマに仕上がっているのか、興味は尽きない人は多いはず。自動車評論家 国沢光宏の試乗レポートをお届けする。

※本稿は2022年6月のものです
文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2022年7月26日号

【画像ギャラリー】国沢氏曰く「今後も限定車は出てくるだろう」!!! ヤリスを全力でチューニングした「GRMNヤリス」をギャラリーでチェック(35枚)画像ギャラリー


■座った瞬間から盛り上がる!!! 545点ものスポット溶接を打ち増しした「サーキットパッケージ」試乗

GRMNヤリス「サーキットパッケージ」。これぞエボモデルといった雰囲気はカーボン製のリアスポイラーに加え、専用のBBS製18インチアルミホイール装着によって全幅が10mmワイドになっているからだ

 今年の東京オートサロンで発表されたGRMNヤリスは、500台限定のところ1万2300人の購入希望者が出て瞬時に完売となってしまった(抽選で決めたそうな)。

 もはや購入できないのだけれど、どんなクルマなのか気になると思う。

 ということでGRMNヤリスのサーキット仕様とラリー仕様の試乗レポートをお届けしたい。おそらく今後も限定車は出てくるだろうから参考にしてほしい。

 まずサーキット仕様から。

 シートはサイドエアバッグ付きレカロのフルバケット。5点式シートベルトが付いていた。座った瞬間から盛り上がります。1速に送り込みクラッチミート。

 強化メタルのため、気持ち長めにハーフクラッチを使う。2速にシフトアップすると、いい感じで繋がる。そのまま3速〜4速へ。

 う〜ん! 気持ちいいギアレシオだ。ノーマルと随分違う。

 試乗会は月曜日。日曜日にノーマルミッションのGRヤリスで全日本ラリーに出場したけれど、2速ギアが高すぎるため、登り坂などで1速からシフトアップすると失速してしまう。

 このあたり、開発チームもしっかり認識していたという。

 GRMNヤリスを開発するにあたり、当然の如くギアレシオの変更を考えたそうな。私のラリー車もこのギアが欲しい〜!

 1ラップで各部の印象&挙動チェックを行い、2ラップ目から全開!

 するとどうよ! サーキットのような限界域で走らせたら、標準車とずいぶん印象が違う。

 具体的に言うと車体の剛性感と大きな入力を受けた時の挙動です。

 剛性感は競技車両に匹敵する545点に及ぶスポット溶接の打ち増しと、12mもの接着材使用カ所の延長によるものだと思う。

 挙動は路面の起伏を横方向のGを掛けたまま高速で通過すると「いいね!」とハッキリわかる。

 標準車だと振られて怖さを感じるものの、GRMNだと一発で収束してくれるのだった。

 ボンネットとルーフにカーボンを使い20kg軽量化していることと、ビルシュタインの本社工場製ダンパーが良質のハンドリングを作りだしているんだと思う。

 高速コーナーではリアスポイラーのダウンフォースも効いている感じ。

 GRMNのベースのよさに加え、サーキットを走るためチョイスされたパーツがすべて「いい仕事」をしている。ちなみにタイヤは私のお気に入りであるアドバンA052。

 騒音規制や優れたウエット性能を持ちながらSタイヤに匹敵するグリップ性能を持つ。さすがサーキットで鍛えられたクルマだと納得至極!

 次回作(きっとある!)が大いに楽しみになりました。

【国沢光宏の採点】GRヤリスを100点とすると「サーキットパッケージ」は200点!!

●GRヤリス サーキットパッケージ 主なベース車との違いと専用装備
・最大トルク390Nm(39.8kgm)
・2人乗り
・カーボンフード&ルーフ
・BBS製専用18インチホイール
・18インチブレーキ
・ビルシュタイン製減衰力調整ショックアブソーバー
・カーボン製リアスポイラー
・クロスギアレシオ&ローギアード
・強化クラッチ
・機械式LSD
・サイドスカート
・リップスポイラー

■GRヤリスで感じた「物足りなさ」が消えた…! そして楽しい!! 「ラリーパッケージ」グラベルで全開!!!

GRMNヤリス「ラリーパッケージ」。ラリーパッケージは2人乗りになり、ロールバーも装着されている。ちなみに500台中50台がラリーパッケージと素のGRMNヤリスに割り当てられた

 続いて試乗コースをグラベルに移し、ラリー仕様です!

 ボディやギアレシオ、シートなど基本スペックはサーキット仕様で乗ったGRMNヤリスと同じ。

 グラベル用のサスペンションに、ダンロップのグラベルタイヤと前後の機械式LSDを装備している。

 GRラリーチャレンジなら出場可能なロールケージやアンダーガード類も付いており、競技車両の入り口だと考えていただければいい。

 試乗コースはわかりやすい設定だから最初から全開! 試乗会の前日までラリーに出ていたため競技3日目という気分だ。サイドブレーキと左足ブレーキ使いまくる(笑)。

 驚いたことに以前に試乗したGRヤリスのグラベル仕様で感じた「物足りなさ」がなくなっている!

 その時のスペックだとすべての操作にタイムラグや違和感があり、車体の挙動をコントロールすることに苦労した。

 今回は「WRCのベース車両として企画されたGRヤリス」の基本特性のよさがハッキリ出ている。

 重量のあるパーツは車体中心に集め、前後の重量配分を適正化。全日本ラリーで走っている時も車体の真ん中に座っている感覚を味わった。

 ボディ剛性を上げ、軽量化したGRMNのボディだと一段とコントロールしやすい感じ。ハンドルを切り少し荷重移動させるだけでフロントがインを向く。

 このまま全日本ラリーに出ても、充分戦えると思う。GRラリーチャレンジだったら勝てる可能性大。

 ちなみに私が全日本ラリーで乗ったGRヤリスは急遽製作したこともあり、変更点はサスペンションくらい。

 左足ブレーキが使えずABSで制動力伸びまくりながら、路面コンディションのいいギャラリーステージで総合10番手のタイムを出せた。

 GRMNヤリスのラリー仕様なら、もっと優れた戦闘力を持つと思う。

 ラリー仕様車は街中で乗っても楽しい! 良質グラベル用のタイヤを選び、少し車高を上げてやれば、どんな道でも気兼ねせず乗れる。

 ラリー用のリアウイングなど付けたら一段と気分も上がるだろう。

 それでいてオートエアコンやADASなども付いているため、安全性だって担保している。

 来年、GRヤリスを買おうと思っているのだけれど、ラリー仕様にしようと決めた。補助灯も付けます。

【国沢光宏の採点】GRヤリスを100点とするとラリーパッケージは300点!!

●GRヤリス ラリーパッケージ 主なベース車との違いと専用装備
・最大トルク390Nm(39.8kgm)
・2人乗り
・カーボンフード&ルーフ
・ラリー用GRショックアブソーバー&ショートスタビリングセット
・クロスギアレシオ&ローギアード
・強化クラッチ
・機械式LSD
・GRアンダーガード
・GRロールバー

●トヨタ GRMNヤリス「サーキットパッケージ」主要諸元
・全長:4030mm(3995mm)
・全幅:1815mm(1805mm)
・全高:1475mm*(1455mm)*スポイラーを外した全高は1445mm
・ホイールベース:2560mm(←)
・車重:1260kg(1280kg)
・エンジン:直3DOHC+ターボ(←)
・排気量:1618cc(←)
・最高出力:272ps/6500rpm(←)
・最大トルク:39.8kgm/3200〜4000rpm(37.7kgm/3000〜4600rpm)
・トランスミッション:6MT クロスミッション(6MT)
・乗車定員:2人(4人)
・最小回転半径:5.7m(5.3m)
・価格:846万7000円(456万円)
※()内はRZハイパフォーマンス

■GRヤリスも「390Nm」にできる! 齋藤尚彦主査に聞く

 GRMNヤリスにはミッション、クラッチ、LSD、サスペンションなどに専用のものが採用され、エンジンのトルクアップだけでは、味わえない気持ちのよさを引き出している。そう考えると800万円を超える価格にも納得できる。

 GRMNヤリスは完売ながら、専用に開発されたパーツが秋から発売されることは大きなニュースだ。カーボンのフードやリアウイングが、GRガレージで装着できる。さらに、オーナーなら最も気になる最大トルク390Nm(39.8kgm)がソフトウェアの交換によって手に入る。

 アフターでさまざまなものが発売されているが、メーカー保証も付く安心感は大きな魅力。

「アップデートによって、ユーザーが愛車をいつまでも大切に乗ることは、モリゾウさんから真っ先にやれと言われたことでした」。GRヤリスの齋藤主査は、うれしそうに話してくれた。

GRMNヤリスが手に入らない人もGRMNパーツで戦闘力アップが可能だ!

【番外コラム】そもそも「GRMN」ってなんだ?

 GRMNとはGAZOO Racing tuned by MN(マイスターオブニュルブルクリンク)の略。

 トヨタのマスターテストドライバ―だった故成瀬弘さんが世界一過酷なサーキット、ニュルブルクリンクサーキットを車両開発の拠点にし、鍛え上げたコンプリートモデルのブランドとして始まった。

「トヨタのクルマはつまらない」という声にこたえる形で開発され、第1号車は2009年のiQ GRMN。以来尖ったコンプリートモデルを限定で販売し、いずれも完売している。

●こだわりぬいた走りの専用装備の数々

 アフターでさまざまなパーツが販売されているが、トータルでの精緻な高性能を求めるなら、メーカーコンプリートモデルの出来が勝る。

 GRMNヤリスにはミッション、クラッチ、LSD、サスペンションなどに専用のものが採用され、エンジンのトルクアップだけでは、味わえない気持ちのよさを引き出している。そう考えると800万円を超える価格にも納得できる。

GRクロスミッション&Loファイナルギア(左上)、GR機械式LSD(右上)、GR強化メタルクラッチ&クラッチカバーセット(左下)、ビルシュタイン製サーキットパッケージ専用ショック(右下)

【画像ギャラリー】国沢氏曰く「今後も限定車は出てくるだろう」!!! ヤリスを全力でチューニングした「GRMNヤリス」をギャラリーでチェック(35枚)画像ギャラリー

投稿 限定500台に1万2300人の希望者殺到・即完!!! まさに「垂涎」 2台の「GRMNヤリス」に乗った!!!自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。