6月10日にテスラのプレミアムミッドサイズSUV、モデルYが日本で受注開始された。2020年から導入されているアメリカでは人気車種となっており、2022年1~3月期にモデルYは約5万2000台が登録され、全米EV新車登録台数トップの座に輝いた(調査会社Experian調べ)。
ちなみに2位は約4万8000台のテスラモデル3、そして3位は約9000台のテスラモデルSだ。4位のフォードマスタング Mach-Eの登録台数が約7000台だから、アメリカ市場でモデルYはその7倍以上売れているということになる。
そんなモデルYだが、右ハンドル仕様が生産される上海ギガファクトリーがコロナ規制により台数が稼げず、受注開始が延期されていた。それも正常化に向かいつつあり、ようやく日本で受注開始となった。その実車をテスラ新宿で見られるというので、さっそく見に行ってきた。
文/柳川洋
写真/ベストカーweb、柳川洋
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■写真と実際に見るのでは大違い! モデル3と比べ物にならないぐらい強い押し出し感
ウェブサイトで見たモデルYは、モデル3がわずかに大きくなり、車高が高くなっただけに見え、それほど強い印象を受けなかった、というのが正直な感想だ。だが、テスラ新宿でモデルYのRWDの実車をこの目で見てみたら、モデル3とは全く違うボリューム感に圧倒された。
リアフェンダー部の張り出しが大きく、ホイールアーチ部の艶消しのモールがそれをさらに強調、またオプションの20インチホイールが装着されていたこともあり、後ろから見た時に受ける「押し出しの強さ」が半端ではないのだ。
圧倒的なボリューム感を生み出しているもう一つの要因が、ドアパネルとテールゲートの形状。モデルYはSUVということもあり、リアトランクを備えるモデル3と違ってパワーテールゲートが採用されているが、ドアパネルからテールゲートまで流れるラインの位置が、とても高いのだ。ドアパネル上端は、ご覧の通り身長178センチの筆者の腰骨の位置より高い。
モデルYのサイズは、テスラのオーナーズマニュアルによると全長4751mm×全幅1921mm(ミラー含まず)×全高1624mm。モデル3の4694mm×1849mm×1443mmと比較して、モデルYは57mm長く、72mm広く、181mm高いことになる。
実車において、モデルYの車格がモデル3対比で1枚も2枚も上に見えるのは、この高さによる部分が大きいのではないかと感じた。
■高さは車内空間の広さと快適さ、開放感にもつながっている
その高さは、SUVの美点としての前方視界の良さだけではなく、車内空間の広さ、特に後部座席の開放感と快適さにつながっている。身長178センチの筆者に合わせたドライビングポジションを取ったとしても、その後ろのシートに座ると、膝先空間にはこぶし1.5個分ほどの余裕がまだある。
その上、前席シート下に空間があり、そこに投げ出すように足を入れることができるため、窮屈さをほとんど感じない。さらに分割可倒式のリアシートは、リクライニングも可能で、座り心地も良い。
足元の広さに加え、ヘッドクリアランスも大きく、フロントからリアに続く大きな一枚ガラスのルーフウインドウの開放感もあって、モデルYのリアシートに座る人の満足度は相当高いのではないかという印象を受けた。
■大人4人乗車で4人分のゴルフバッグも無理なく積める実用性の高さも兼ね備える
さらに、車高が高いことは収納スペースの大きさや、使い勝手の良さにつながっている。
リアゲートを開け、さらにカバーを外すと大きくて深い収納スペースがある。そこにゴルフバッグの底の部分を入れ、リアシートのヘッドレストに斜めに立てかけるように置けば、大人4人が4人分のゴルフバッグと共に移動することも可能だそうだ。
また、フロントトランクもモデル3よりも深さ、大きさともに拡大しており、1泊2日程度の荷物を十分飲み込むことができる。
さらに、リアゲートを開けた左手にあるスイッチを押せば、リアシートが簡単に前に倒れて広大なスペースが生まれる。筆者はクルマにロードバイクを乗せて移動することがあるが、これだけ広いとロードバイクを載せるのも容易だ。
スポーツやキャンプのためにアクティブにモデルYを使い倒したい、というユーザーにはピッタリだ。
■テスラの文脈に基づいたインテリアデザインと先進技術
運転席から見える範囲では物理スイッチはドアとウインドウの開閉スイッチ、シフトレバーとウインカーレバー程度しかなく、モデル3などと同様に15インチのタッチパネルでほぼ全ての操作が行われる。
やや無機質に感じられるインテリアだが、展示車には木目のパネルが貼られていて、暖かさを感じることができた。ステアリングはやや小ぶりでふっくらとして握りやすい、コンベンショナルなデザイン。
ドライバーズシート横の収納スペースも、縦横の幅だけではなく深さも十分あるので、収納に困るということはおそらくないだろう。
個人的にとても興味深かったのが、今回新たに搭載された、HEPAフィルターを使った強力な空気清浄機能。生物兵器が使われたレベルで空気が汚染されても、車内の空気の清浄性が保たれるという。スイッチがバイオハザードのようなマークになっている見た目も、なかなかのインパクトだった。
■気になるお値段や航続可能距離、納期は?
気になるお値段だが、ベーシックグレードであるRWDの車両本体価格はこの記事執筆時点で643万8000円。6月10日の発表時点での価格は619万円だった。
このところの原材料価格の上昇と円安のせいで、価格の変動の可能性があるので、こまめにテスラのHPをチェックしてみてほしい。
現状のモデル3のRWDの車両本体価格は596万4000円なので、価格差は47万4000円。これだけの価格差を正当化できるかどうか、と聞かれれば、私は高いユーティリティと快適性からYesと即答する。
ただしミラーを折り畳んでも全幅が1978mmと非常に大きいので、駐車スペースのせいで断念せざるを得ない人もいるかもしれない。
展示車の外装色、ディープブルーメタリックは12万6000円、ブラックアウトされた20インチインダクションホイールは25万1000円のオプションで、合計すると691万5000円。これに諸費用概算が21万2000円かかるので、乗り出しでおよそ712万7000円となる。
東京都に住んでいる人であれば、国のCEV補助金65万円と、都のZEV補助金45万円の合計110万円が受けられる上、一部の市区町村ではさらに10万円程度の補助金が受けられ、実質の乗り出し価格は600万円近辺となる。
納期は現状今年の10月から12月だとのことだ。
RHDの航続距離は507km。気温などの諸条件にもよるが、実際にはこの8割程度が走行可能距離だと思われるので、フル充電状態で片道200kmのドライブが可能。追加充電なしでも東名高速だと東京ICから焼津まで行って帰ってこられる。
もう一つのグレード、パフォーマンスの車両本体価格は記事執筆時点で833万3000円。6月10日発表時点の価格設定は810万円だった。こちらは国からのCEV補助金は現在申請準備中だ。
航続距離は595km。納期は2022年後半以降とのことだ。デュアルモーターAWDのおかげで、最高時速250km(RWDは217km)、0~100km/h加速は3.7秒(同6.9秒)と下手なスポーツカーより速い。
ちなみに、パフォーマンスのアメリカでの価格は現在61440ドル。円建て価格833万3000円をこの値段で割った時のレートは135.63円と、現時点でのドル円為替レートである1ドル136円前半とほとんど変わらない。
同等の比較をモデル3のRWDで行うと150.45円となるので、モデルYのパフォーマンスを日本で買うのは実はお買い得かもしれない。
モデル3の一番人気グレードはお求めやすいRWDで、圧倒的多数のユーザーがオプション料金のかからないパールホワイトを選択したという。実車を見てモデルYが欲しくなってしまった筆者が選ぶとすれば、RWDのミッドナイトシルバーメタリックがいい。
今年8月以降になれば日本でも実際に街でモデルYが走っているのが見られるようになるそうだ。「モデルYは、モデル3がただ単に上方向にわずかに大きくなったクルマだ」という思い込みをしている人もいるかもしれないが、実際のモデルYに街中で抜き去られて後ろ姿を見た途端、その思い込みは吹き飛んでしまうだろう。
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投稿 実質約600万円 新型テスラモデルYの実車を見に行ってきた! はたして買いか? モデル3と比べてどう違うのか? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。