もっと詳しく

 昨今はSDGsとかサステナブルとか見かけるけど、実はよく分からない用語が並ぶ。あらゆるものがこれらの言葉につながってしまうので、こじつければ何でもありなのだが定義はともかく、ちょっとエコで体にもうれしい「乗りバス飲料」や「リモートワーク飲料」になり得るものを作ってみたので試していただきたい。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)


SDGsでサステナブルな飲み物?

 ちなみにSDGsとは「持続可能な開発目標」、サステナブルも似たような意味合いで使われる。ざっくり言うと「エコ」や「リサイクル」といった使い慣れた言葉を国際的に再定義しただけだ。よってエコでリサイクル可能な脱炭素で…みたいな感じにとらえて問題はないだろう。

 それはともかく、自宅にいることが多くなったリモートワーク中は何をお飲みだろうか?コーヒー、ジュース、水、お茶、またはビール……とさまざまだろう。長時間乗車となる高速バスでも飲み物は必要で、たいていは乗車前にペットボトルを買い込むことからスタートする。

 それらの飲料を自分で作って、家にいるときはサーブしバス乗車時には自宅から持ち運んで飲もうという趣向だ。作る手間や持ち運ぶ労力は必要だが、体のためあるいは持続可能な……のためにそれは惜しまないことにする。

西鉄はかた号のエアロクイーン

 作るのは簡単で何の変哲もない「レモン水」だ。それもフレーバー水を買ってくるのではなく、自分で作る。レモンを購入して絞るのもアリだが、市中には瓶入りのレモン果汁を売っているのでそれを利用する。

 レモン果汁の雄といえばポッカレモン。そこでポッカサッポロに取材してメーカー純正?のレモン水の作り方を伝授してもらった。

一瓶で15リットル作れる?

 同社によると、「レモン水」の場合はミネラルウォーター1.5リットルにつき、ポッカレモン100を大さじ3、「レモネード」の場合は水150mlにつきポッカレモン100 大さじ2 、はちみつを大さじ1という割合だ。大さじ1杯は約15mlなので、レモン水ならば45ml必要だ。

 ポッカレモン100の最も大きなサイズは450ml入り瓶なので1.5リットルの水でレモン水を10回分、つまり約15リットルも作ることができる。ここで2つのエコが登場する。まずは瓶詰なのでプラスチックごみが出ない。また1回の買い物で15リットルものレモン水ができるので、毎日2リットル飲んでも1週間は飲み続けられるエコだ。

 中学校の理科のお勉強を再現する。1.5リットルの水に果汁100%のポッカレモン100を45ml混ぜた場合のレモン果汁の濃度は何%か?という問題だ。正解は45÷(1500+45)×100=約2.912%だ。つまりポッカサッポロは約3%の濃度でレモン水を作るのが公式レシピということだ。

 では2リットルの水で3%の濃度のレモン水を作るにはポッカレモン100をどれだけ混ぜればよいかという問題になる。正確な分量を算出するには「x÷(2000+x)×100=3」の方程式を解けば約61.855mlになるが、メスシンダーで量るわけにもいかない。

 現実は誤差の範囲なので2リットルの3%で構わない。すると60mlになるので、大さじ4杯分だ。記者は東京の水道水を飲むので、2リットルの水道水に60mlのポッカレモン100を混ぜて2.06リットルのレモン水とした。

家ではこれだけを飲む!

 リモートワークで家から出ない場合は2リットルのレモン水だけを飲むことにする。そこで第3のエコの登場だ。せっかく作ったレモン水がぬるくなってしまっては美味しくないので、家庭用のガラス魔法瓶を使い冷たいままサーブする。

 ピーコック魔法瓶のガラス製魔法瓶は2.2リットル入り、昔なつかしい空気圧で中身を出すタイプだ。

分かりやすいように1リットルのグレープフルーツジュースを2本全部入れてみた。口は小さいが保冷力は抜群のガラス製魔法瓶は家庭用に最適

 そして炭酸とドライアイス以外は基本的に何を入れてもよく、温冷両用なので冬でも使える。氷を入れることを考えるとレモン水の濃度を少し濃くしてもよいが氷の量次第だろう。これで電力を使わず氷だけで丸1日冷たいレモン水がいくらでも飲めるのでエコだ。

 ピーコック魔法瓶は日本では知名度は高くないが、ガラス製魔法瓶を今でも作っている数少ない老舗のメーカーだ。しかし海外では見かけることが多く、それは輸出品が多いからだ。同社に取材したところによると、ステンレス製真空魔法瓶よりもガラス製の方が保温保冷能力は高いとのことだ。

プッシュ式で空気圧を利用するので電源は不要なのもエコ

 持ち運びに不利でガラス製なので取り扱いに注意を要するが、特に家庭用にはガラス魔法瓶がおススメだとのことだ。

長距離バスでも持ち込んでゴクゴク!

 では長距離バスではどのようにして持ち運ぶのか。前出のピーコック魔法瓶によれば、さすがにガラス魔法瓶は持ち運びに不利なのでステンレス製の方がいいとのこと。そして長時間バスに乗ることを考慮すると約2リットル入るステンレス製魔法瓶を選んでくれた。

14時間以上乗車のはかた号では飲み物は十分に用意する必要があるか?

 特徴は口が大きいのでスーパーで売られているロックアイスも楽々入り、揺れるバスの中でもレバーを上げるだけで付属のコップに注げることだ。約14時間乗車の西鉄の「はかた号」に持ち込んでみたが、20時間程度は氷が残り続けたのでいつ飲んでもキンキンのレモン水だった。

東京を出て20時間経過した後に福岡のホテルでまだ氷が溶けていなかった

 今回は撮影のため2リットルにしたが、大は小を兼ねるということでお許しいただきたい。はかた号は新宿から博多までの間で2回しか降車休憩がないので、乾燥する車内でのどの渇きにあえいでしまうよりはよいと考えた。

はかた号の個室で冷たいレモン水をいくらでも好きなだけ飲める

 大は小を兼ねるので、前述した家庭用でも兼用することができ、これ1本で家でもアウトドアでも活躍する。なお氷の量は好みでよいが、そもそも2リットル近く入るので1.1kgのロックアイスは全部入る。

よって一人暮らしでもスーパーで売られている氷を全部入れてしまえばよい。その場合、液体は1リットルしか入らないので前日に作って翌朝ちょうどよい濃度になるように方程式を解いていただきたい。

なぜレモン水?

 ところで、なぜレモン水にここまでこだわったのか。記者のもとにはあらゆるプレスリリースが届くが、その中にレモン水に関する興味深いリリースがあったからである。工藤孝文医師(内科医・糖尿病内科医・東洋医学医)によると、レモン水を推奨する理由は次の通りだった。株式会社 エムスリー・カンパニー発出のリリース「レモン果汁に食後血糖抑制効果」から引用する。

全部使い15リットルのレモン水を作るとレモン15個分!

 「レモン水は手軽に作れて、水筒に入れて持ち運ぶこともできます。身近にレモン水を置くことで、健康意識を高めるきっかけにもなるのではないでしょうか?

 私は以前、救急外来に勤務し、何事もなく過ごしていた人がある日突然寝たきりや車椅子生活になるという事態を目にしてきました。現在の取り組みが、将来の健康を大きく作用しますので、できることから実践していきましょう」

 では栄養学的にはどうなのだろうか。栄養士の藤村直加さんに取材した。「レモンにはクエン酸が豊富に含まれますが、実はクエン酸の名称の由来はレモンです。レモンの別称がクエンなのです。

 体のエネルギーを作り、疲労や筋肉痛の原因となる乳酸を分解します。またカルシウムやミネラルなどを体に吸収しやすい形に変える働きもあります。

 クエン酸は体内で合成ができないので、食物からの摂取が必要です。レモンは酸っぱいですが、クエン酸は唾液や胃酸の分泌が促進され食欲増進につながりますので夏バテ予防にもなります。また意外な効果としてクエン酸などの酸味は塩味を感じさせやすくすることから自然と薄味になり減塩につながります。

 レモン水を飲むタイミングとしては、毎日複数回に分けて飲み続けるのが良いと思います。クエン酸は体内に大量にためられず、余分は排泄されるので分けて飲み続けるのがいいわけです。

 ただしのどの渇きや熱中症予防の観点からは気にせず飲んでいただいて構いません。また食事や運動の前には特におススメで、ミネラルの吸収やエネルギー生産をスムーズに行ってくれます。また運動中の疲労回復につながります。

 最後に、起床時や就寝前にもおススメします。これは体の中からというよりも香り成分のリモネンにはリラックス効果がありますので、夜行バスでのお休み前や起床後には最適な飲み物かもしれません」

 と、医学的にも栄養学的にも、この夏絶好の飲料としてエコに作って飲み続けてみてはいかがだろうか。読者の皆様が一人でも多く健康で過ごせるように願ってやまない。

投稿 リモートワークにも長距離バスにも最適な魔法の「乗りバス飲料」を作る自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。