7月19日付けの本稿で、日野自動車が型式再申請前にもかかわらず、「生産を再開、作りだめをはじめた」との記事を書いた。日野自動車広報部の回答は以下だった。
生産再開は事実です。今回の生産再開は、再認可・再出荷の目途が立たない状況ではありますが、
① 弊社製品をご注文頂いているお客様に出荷再開後速やかにお渡しできる準備をしておくこと
② 今回の稼働減による取引先様への影響とご懸念を最小限にすること
を優先と考え、一部生産を再開するものです。今回再開するのは生産のみで、出荷については認可の再取得が完了するまでは再開いたしません。
記者は思う。「生産を再開」して作りだめをしても、週末にも発表されるかもしれない第三者委員会の見解、さらに再申請と言っても排ガスや騒音の年次改良も同時に行わなければならない中で、当局(国交省自動車局審査・リコール課)がすんなりと、日野に型式を再取得させるのか、よしんば再取得を認めるとして一定の時間がかかるのではないか。
まさか当局が再申請前に「内諾」しているはずもないだろう。何らかの問題に直面した際に、日野は作りだめた車両の補修をどのように実施するつもりだろうか。先んじて生産再開する台数は、「1000の桁ではない(もっと少ない)」(広報部)としている。
記者はさらに問うた。現に規定値を超えた排ガスを撒き散らしながら路上を走っているクルマの改修が先ではないか。補助金を返還したからと言って、今走っているクルマの改修を済ませずして型式再取得前に作りだめするのは、社会感情に逆行するのではないか。リコール改修の新調律が知りたいと。
これに対する日野の回答がしゃれている。「進捗率は全体として特段低い状況にはございませんが具体的な数字はご容赦ください。届出済のリコールは暫定措置のため恒久対策が決定次第改めて措置を実施予定です。引き続き真摯に対応してまいります」。なぜリコール改修の進捗率を公表できないのだろうか。「特段低い状況にない」とは、何を持ってそう言い切れるのか。リコールを発表してからすでに4ヶ月が経過している。
今回のリコールはあくまでも「緊急措置」である。排ガスをこれ以上待機中に撒き散らさないための当面の手段だ。「不具合の原因はプログラムが不適切だったためですが、それに対する暫定対応としてはSCR触媒の再生作業になります」(同)という。要は型式不正と同様に使い古した触媒の中身、もしくは丸ごと新品に交換してしのぐわけだ。
日野を使っている事業者は貴社の取材にこう答える。「日野が代車でも出さない限り、リコール改修のための入庫の暇はないよ」と。日野は本当に頭を丸めて再出発する気持ちがあるのかどうか。企業存続に対する危機感が欠如しているように思う。折しも明日は1Qの決算発表である。
中型エンジン「A05C(HC-SCR)」搭載車両のリコールについて
84e3d921194710774fb56156014832aa_1.pdf (hino.co.jp)
取材・文/神領 貢(マガジンX編集長)