1990年代に超絶ヒットとなった三菱 パジェロ。乗り出し400万円以上はくだらないのにバカ売れしていたのだから、素直にスゴい!! だが、そんな人気モデルも市場から姿を消すことに……。
ところが、東南アジアを中心にパジェロスポーツなるモデルが大人気となっている。日本でもかつて売られていたチャレンジャーの現代版であるが、これがまた超カッコいいのだ。ならば日本にも導入してよ! と思うも、さまざまな事情により未だ実現せず。この理由こそが衝撃なのだった。でも一体なんでよ!?
文/大音安弘、写真/三菱
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■パジェロスポーツも売れるハズ! パジェロ無き今こそ必要なのはコイツ
新型アウトランダーが予約受注開始から約3ヵ月で累計1万台越えを記録など明るい話題が増えつつある三菱自動車。現在、同社を支えるのは、コンパクトスペシャルティSUV「エクリプスクロス」や悪路走破まで可能なクロスオーバーミニバン「デリカ:D5」などのSUV系車種である。
そのイメージを活かし、新型軽EVもクロスオーバー風デザインの「eKクロスEV」が投入された。冷めやらぬSUVブームにある今、パジェロが失われてしまったことを非常に残念に思っているファンも多いだろう。しかし、三菱自動車には、世界で展開しながらも、日本未導入のSUV系車種が存在するのだ。
パジェロの伝統を色濃く受け継ぐが海外専売車が「パジェロスポーツ」だ。実は、初代モデルは、日本で「チャレンジャー」として販売されていた。しかしながら、パジェロとの競合やRVブームの低迷などもあり、日本では一代限りとなった。
その後も海外では進化を続けており、3代目となる現行型は、2015年にデビュー。2019年にマイナーチェンジが行われ、フェイスリフトを受けている。世界各地で展開されており、「モンテロスポーツ」とも呼ばれる。
現行型より三菱自動車のデザインアイコンである「ダイナミックシールドマスク」が使われており、スポーティかつワイルドなスタイルにまとめられ、人気の高かった2代目パジェロを彷彿させる。まさにパジェロの名に相応しい存在なのだ。
ボディサイズは、全長4785mm×全幅1815mm×全高1835mm(※タイ仕様)と、最後となった4代目パジェロの5ドアよりもコンパクト。キャビンは、3列シートの7人乗り仕様となっており、ファミリー層にも最適だ。コクピットデザインは、オーソドックスなものだが、機能的なものであり、クロカンとしては悪くない。
現代車らしく、前方衝突軽減システムやACC、前後の踏み間違い加速抑制機能などの、クロカンという特性もあってか、衝突被害軽減ブレーキこそ装備されないが、基本的な先進安全運転支援機能を押さえる。
■パジェロ譲りのラダーフレーム! ラリーアート仕様車がヤバいゾ
パジェロスポーツの最大の特徴は、ラダーフレームを受け継いでいること。これにフルタイム4WDシステム「スーパーセレクト4WD II」を組み合わせる。この4WDには、リヤデフロックも備わる本格派だ。
パワートレインは、4N15型2.4L直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載。最高出力181ps/3500rpm、最大トルク430Nm/2500rpmを発揮。
因みにこのエンジンは、自衛隊の73式小型トラックにも搭載されているモノでもある。これに8速ATを組み合わせるので、オンロードだけでなく、高速巡行も快適であることが伺える。もちろん、燃費にも効果的だ。
最新のトピックとしては、ブランドとして復活を遂げた「ラリーアート」の特別仕様車が、2021年11月に登場したこと。ビジュアル面の変更のみだが、かつてのラリーアートを彷彿させるデザインとなっており、三菱ファンには刺さりそうだ。
■ハイラックスの独占でイイのか!? トライトンも日本導入の最右翼
パジェロスポーツに並ぶ注目株が、ピックアップトラック「トライトン」だ。こちらも世界戦略車であり、商用ニーズからプライベートまで幅広く答えるラインアップを誇る。日本でも初代モデルが2006年から2011年の期間で販売されていたことがあるので、その名を覚えている人も多いはず。
現行型は、2014年にフルモデルチェンジを受けた2代目モデル。2018年のマイナーチェンジで、「ダイナミックシールドマスク」となり、デザインをリフレッシュ。同車は、ラダーフレーム構造などの基本をパジェロスポーツと共有。
ただ用途の違いから、リヤサスペンションが、パジェロスポーツが3リンク式となるのに対して、荷台を持つトライトンでは、リッド式+リーフスプリングになる。
またパワートレインも、ダブルキャブの場合、パジェロスポーツと同スペックの2.4L直列4気筒ディーゼルターボが搭載されるが、トランスミッションも、耐久性を考慮し、6速MTもしくは、6速ATとなる違いもある。
4WDシステムは、「スーパーセレクト4WD II」で、リヤのデフロック付き。個人ユーザーも多い4ドア5人乗りであるダブルキャブ仕様には、上級仕様となる「トライトン アスリート」を設定。ドレスアップされたエクステリアは、かなりクールで、インテリアも豪華なレザー仕様となるなどの特徴を持つ。
さらに2022年3月には、ラリーアート仕様車の第2弾として「トライトン ラリーアート」も設定。これは後輪駆動車のローライダー仕様にエアロやデカールなどのドレスアップを施したものなので、街乗りでも違和感のないスポーティなカスタムトラックに仕上げられている。
実用性では、ダブルキャブトラックなので、ボディサイズこそ全長5300mmと長いが、車幅は1815mmとパジェロスポーツと変らない。
ライバルとなるトヨタハイラックスと比べると、僅かにコンパクトとなるが、使い勝手は同等と見て良いだろう。このため、ハイラックスの一人勝ちとなっている日本でのニーズは、低くないと思えるのだ。
SUVブーム真っ只中にある今ならば、パジェロスポーツとトライトンのスタイルとキャラクター、性能のいずれも高評価が得られるのではないか。
そこで三菱自動車工業広報部に、導入の見通しについて問い合わせてみると、「導入の可否については答えられないが、国や地域別の商品展開は、市場の規模やニーズを鑑みて決定している」とのこと。
そこで日本にパジェロスポーツが導入されない現状に、日本での環境対応や電動化戦略の影響によるものかを尋ねると、直接的な関係はないという。裏を返せば、日本への導入が100%不可能ということでもないと受け取ることもできるわけだ。そうなれば、少し期待を持ちたくなる。
■日本円で600万円超え!? 意外と高額も国内導入で三菱ブランド向上に一役買う可能性大
まずは現状を知るべく、生産地でもあるタイでの車両価格に注目してみた。パジェロスポーツの価格は、後輪駆動車を含め、1,299,000バーツから1,664,000バーツとなる。これを日本円に換算すると、約493万円~約632万円(1バーツ=3.8円計算)となり、意外と高価であることが分かる。
さらに、充実装備とドレスアップされた仕様である「トライトンアスリート(4WD車)」のダブルキャブ仕様の価格は、1,196,000バーツで、日本円だと約454万円となる。ベースとなるダブルキャブ4WDのAT車と比べると、アスリートの方が高価ではあるが、大きくは変わらない。
つまり日本では、いずれの仕様も高価格帯に位置するモデルとなるわけだ。生産拠点が海外であることも考慮すると、昨今の輸送コスト高や円安の影響があるため、実現は難しいと言わざるを得ない。
とはいえ、パジェロスポーツやトライトンが日本に導入されれば、歴代パジェロが築いた日本のSUVスペシャリストという三菱自動車のイメージを再び世に知らしめることができるだろう。
もちろん、日本での環境対応などの新たなコストも必要となるため、経営立て直しの真っただ中にある三菱自動車には、難問なのだろう。
しかし、アウトランダーやエクリプスクロスのPHEVで再び日本市場での存在感を高めつつある三菱自動車の更なる飛躍のためにも、限定車としても導入すれば、大きなニュースになるのは間違いない。
三菱モータースポーツの象徴「ラリーアート」がブランドとして復活した今だからこそ、三菱車らしい商品を少しでも増やして欲しいと願うのは、私だけではないだろう。
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