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 いよいよ、いすゞ自動車が動き出した。日野自動車が不正問題でその地位から陥落してしまった今、いすゞは押しも押されもせぬリーディングカンパニーとして、これからの日本のトラック産業をけん引する存在だ。

 そのいすゞは、ここ2~3年で異例ともいえる提携ラッシュを行なっている。主なものを挙げると、米国大手エンジンメーカーのカミンズとパワートレインにおける事業提携、ボルボグループとの戦略的提携およびUDトラックスの編入。また大型FCVの共同研究ではホンダ自動車とタッグを組み、トヨタ自動車との再・資本提携も締結し、日野自動車を含めCACE事業などで協業が始まっている。

 大きな転換点を迎えたいすゞは、今後どのように事業展開していくのだろうか。2022年5月13日に発表された「中期経営計画2024進捗」(中計自体は昨年5月発表)で明らかになったいすゞの新車戦略を中心に、そのロードマップを見ていこう。

文/フルロード編集部 写真/フルロード編集部・いすゞ自動車


■新型車両の投入計画は?

 まず既存事業においては、2022年度中に商品ラインナップを拡大させた中・小型車のフルモデルチェンジが予定されている。

 新型車は「I-MACS」と呼ばれる新たなモジュラー設計コンセプトのもと開発され、日本市場を皮切りに、いすゞ・UDの両販売チャンネルを通じて、順次海外市場にも展開する見込みだ。

 また2023年には「ボルボGとの協業第一弾」が銘打たれた新型トラクタが、いすゞ・UDチャンネルに投入される予定。

 この新型トラクタは「商品力を強化した新型トラクタ」とされており、現行車に無い何らかのボルボの技術が搭載されると見られる。

 まだ想像の域だが、すでにUDの大型車クオンに設定されている先進ステアリング支援技術「UDアクティブステアリング」(ボルボ・ダイナミック・ステアリングのUD版)などが新型に搭載される可能性があるのではないだろうか。

 また、昨年の中計などで示された、ボルボGとの先進技術領域で協業を見据えた、いすゞ/UD共通大型プラットフォームの開発が始まり、同プラットフォームを採用した大型トラックのフルモデルチェンジを2024年以降に予定している。

■カーボンニュートラル事業の展開

 いすゞのカーボンニュートラル戦略としては、まず2022年度中に小型トラックのエルフEVの量産を開始する。同車は国内、米国、欧州へ展開され、国内向けにはGVW3.5t未満の普通免許対応モデルも設定される見込みだ。

本年度中に発売を予定するエルフEV。写真はファミリーマートで実証実験に使用された冷凍バン仕様のモニター車

 また、いすゞ・日野が開発を進める大型路線BEVバスが、2024年度に両社の合弁会社であるジェイ・バスより発売される。同BEVバスは電動化によるレイアウトの自由度を活かし、フルフラット仕様になるとされる。

 さらに、開発にトヨタも加わる大型路線FCVバスの検討も開始。これには大型路線BEVバスのプラットフォームをベースに、トヨタの新世代FCスタック・FCシステムが搭載される見通しである。また、この御三家による小型FCVトラックの開発も現在進められている。

 中型トラックではカミンズと北米市場向けFシリーズにカミンズ製電動システムPowerDrive6000を搭載したBEVトラックを開発。フリートユーザーにおけるモニター試験も始まっており、試験後北米向け中型BEVトラックの事業化について検討していくとしている。

 いっぽう大型車おけるBEVの開発予定は示されておらず、現時点では航続距離などでメリットのあるFCVがこのクラスを担うことになりそうだ。

 大型FCVトラックはホンダと共同研究が行なわれており、ホンダのクラリティFCパワーユニットを搭載したギガFCVを開発中。2022年度中のモニター試験を予定している。

 このほか、海外市場向けのLCV(ライト・コマーシャル・ビークル)などのピックアップトラックの電動化も検討段階にある。

■自動運転とコネクテッドサービスの取り組み

 コネクテッド技術においては、いすゞと富士通、トランストロンが共同で新たな商用車情報基盤「商用車コネクテッド情報プラットフォーム」の構築に着手。2022年10月よりサービスが開始される。

 いすゞはいち早く車両のコネクテッド化に取り組み、運行管理サービス「MIMAMORI」や高度純正整備「PREISM」を提供してきたが、これらのデータを商用車コネクテッド情報プラットフォームに統合。

 いすゞ・トランストロン双方の顧客である約50万台のトラックに、運行情報と車両コンディション情報を活用した高度な運行管理や稼働サポートサービス、荷主・運送事業者・倉庫事業者に、基幹システムとのデータ連携といった統一サービスの提供が始まる。

商用車コネクテッド情報プラットフォームのイメージ

 またUDブランドにおいてもMIMAMORIの運用が始まり、2023年1月よりそのトライアルを実地する予定だ。

 自動運転に関しては、レベル3をスキップしレベル4(特定条件下における完全自動運転)を将来的な目標に据えた実証試験が開始されている。

 いすゞにおいては、西日本鉄道、三菱商事とともに大型バス「エルガ」使用した共同実証試験を2022年3月8日より、福岡空港の福岡空港国内線・国際線旅客ターミナルビル間の閉鎖道路にてスタート。

 本実証実験はLiDARやミリ波レーダー、カメラで周囲の状況をスキャン、且つGNSSによる位置推定を行ない、3Dマップに埋めた走行軌道をトレースするものとなっている。

2019年にUDが北海道で行なったレベル4自動運転の試験車両

 いっぽうUDは他メーカーに先駆け、2019年に大型トラックのクオンを使用したレベル4自動運転の実証実験を北海道のホクレン中斜里製糖工場の敷地で行なったが、いすゞ編入後初となる実証実験が2022年下半期に神戸製鉄所・加古川製鉄所内で予定されている。

 百年に一度の大変革期を迎え、いすゞのしたたかで骨太の戦略がいよいよ動き始める。

投稿 いすゞの新車戦略をスッパ抜く!! 中期経営計画から見えた中・小型トラックのフルチェンジ&ボルボとの協業による新型トラクタの投入の動向自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。