もっと詳しく

 2022年5月の普通乗用車新車販売台数ランキングは、ノートやシエンタを抑えて4位と絶好調な販売をみせるフリード。今年8月にフルモデルチェンジされる予定のシエンタを牽制するように6月24日には特別仕様車「BLACK STYLE」を設定した。

 そして来年の秋頃には7年ぶりのフルモデルチェンジが予定されており、現在までに入手した情報では、新しいプラットフォームにほぼ現行のボディサイズ、キープコンセプトのデザインで発売されると予想する。

 そんなフリードと今のホンダに、初代フリードのRAD(商品統括責任者)を務めた藤原 裕氏が「今のホンダのままではブランドが育たない!」と進言する!!

文/藤原 裕、写真/ホンダ

【画像ギャラリー】当時のフリードスパイクのアウトドアでのプロモーション画像を写真でチェック!!(18枚)画像ギャラリー


■筆者が初代フリードで目指していたものとは?

 2008年5月、ホンダ モビリオの後継車として初代フリードを発表発売し、「運転しやすいサイズでなおかつ室内空間にもゆとりあるコンパクトミニバン」として、大ヒット商品となった。2015年5月までの新車登録台数は、43万台弱となった。

2008年5月に発売開始されたホンダ フリード。「FREED」の車名の由来はFreedomからの造語でFree(自由)+do(行動する)という意味合いを込めている

 私がRAD(商品統括責任者)としてこのクルマで狙ったことは、ミニバンのヒエラルキーを打破し、日本の主婦ユーザー層が運転しやすく、子供たちの世話や家事買物などを気持ちよくできるクルマにしたかった。

 ミニバンのヒエラルキーとは、セダンの「いつかは、クラウン」ほどのレベルではないが、デカくて一番偉いようなミニバンが街を横行し、コンパクトミニバンでは肩身が狭いような状況を指すものである。

 元来、狭い国土と道路状況の日本において、運転しやすく使い勝手のいいクルマが主流であるべきと考えた。そういう意味で、初代フリードは狭い道路や駐車場でも運転しやすい外寸と軽いステアリング操作、乗り降りがしやすいスライドドアを設定し、2列目席のセンターウォークスルーをベースに大人7名がゆったりと座れる居住空間を実現した。

 また、コンセプト上で一番重要視したのは、外観スタイリングであった。それは、ほかのコンパクトミニバンのような「可愛らしさ」ではなく、先ほどのヒエラルキーにも屈せず、存在感のあるスタイリングであった。そのモチーフを探るために、デザイナーをイタリア出張に行かせて、石や彫刻のような固まり感のあるモチーフを見い出すことができた。

■次期型で目指してほしいのはフリードブランドの強化! 今のホンダCMは最悪だ!

次期フリードの発売は来秋の9月頃が予想されている。現在までに入手した情報では、新しいプラットフォームにほぼ現行のボディサイズ、キープコンセプトのデザインで発売されると予想する(写真はベストカーが製作した予想CG)

 本題の次期フリードに期待したいことは、このヒエラルキー打破をどんどん強化して欲しい。そのためには、外観スタイリングが重要であるとともに、フリード+も含めたフリードブランドを一層、強化して欲しい。

 このフリードブランドの強化とは、フリードに乗っているファミリーやフリード+に乗っている人が皆笑顔に満ち、クルマ生活を楽しんでいる雰囲気が醸し出すようなクルマである。そのためには、フリードはファミリーに喜ばれる機能を付けるとともに、フリード+はアウトドアライフをより楽しく、役に立つ機能を付けることが重要である。

 また、このようなフリードブランドのクルマライフをうまく訴求することが重要である。最近のホンダCFは最悪である。

 T社のように、そこらのタレントを使って、クルマの訴求をすることは、愚の骨頂である。最近、似たようなホンダのCFがある。何とも、嘆かわしいことである。

■当時のフリードスパイクでのCMの作り方

2010年7月に発売開始されたフリードスパイク。「可能性搭載コンパクト」をキーワードに、人にも荷物にもゆとりある空間を確保し多彩な使い方で楽しめるミニバンとして開発された

 私がRADを展開していた時は、必ずクリエーターなどの訴求関係者へ直接、商品コンセプトや概要を説明し、実車も試乗して開発チームの狙いと商品のKeyについて説明していた。また、訴求案やCF案ができたら営業と一緒に確認したうえで、ともに評価判断してきた。今も、そのようにやっているとは思えない。

 当時のフリードスパイクの発表会に際して、アウトドアやスポーツの用品メーカーとコラボを模索して、 コールマンとアシックスとのコラボを具体化した。フリードスパイクの広報車を、1台ずつ用意して、コールマン用品を活かしたアウトドア広報車、アシックス用品を活かしたランニング広報車を作り上げ、発表会に展示した。その後、各々のイベントで活用され、訴求効果抜群であった。

 次期フリードの訴求立案に対しては、「昔のやり方に戻れ」とまでは言わないまでも、訴求関係者との評価判断の場に、開発チームや商品統括責任者を入れて運営し、訴求効果MAXを発揮して欲しい。

■ホンダにブランドコミュニケーションの強化をお願いする

 最後に言いたいことは、次期フリードだけのことではないが、ホンダのブランドコミュニケーションの運営体制が、あまりにも弱過ぎることである。ホンダは本社機能を日本に置いているが、世界各エリア(日本、北米、中南米、欧州、アフリカ中東、ア大、中国)に地域営業本部があり、そこで事業の日常的な運営と中期的管理がなされ、多くの実権を握っている。

 商品の訴求やブランド展開も本社コントロールになっていない。ある意味では、地域の状況を理解した訴求が期待できるものの、ブランドコントロールを強くしたいと思ってもなかなかそうはいかない状況にある。今までヒット商品が出ても、どのような育て方をしていくべきか、充分に把握できていなかった。

 ホンダの企業メッセージや商品ブランドについて、継続的かつタイムリーに展開していくには今のホンダの体制と運営ではうまく推進できるとは思えない。

 三部社長はホンダの将来ビジョンや電動化戦略について今春、具体化案を発表したが、商品技術や生産販売についてある程度説明していたが、上記のようなブランド強化と育成体制については語っていない。

 ホンダの弱点は、世界初や新技術新商品を開発してもそれを育てていくことが極めて下手な企業であることだ。今回の電動化戦略上、そのような昔の失敗をしていく訳にはいかない。ぜひ、ホンダのブランド強化と育成を推進できる組織体制と権限委譲を実施して欲しいものである。

【画像ギャラリー】当時のフリードスパイクのアウトドアでのプロモーション画像を写真でチェック!!(18枚)画像ギャラリー

投稿 今のホンダのままではブランドが育たない! 「初代フリード開発者として次期型フリードに期待したいこと」自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。