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ハリアーとのバッティングはどうなる? クラウンスポーツの存在は同士討ちとなるのか?

 4台のクラウンが登場するという度肝を抜かれた7月15日のワールドプレミア。その中で、ひときわ異彩を放っていたのが、ミドルSUVのクラウンスポーツだ。

 クラウンの登場で、トヨタ陣営にはレクサスも含め、高級SUVが乱立することとなる。その中で、クラウンスポーツはどこに位置付けられ、トヨタはどのように扱っていくのだろうか。

 現在トヨタのプレミアムSUVのトップリーダーであるハリアーと、クラウンスポーツの関係性など、トヨタSUVの今後を考えていこう。

文/佐々木 亘、写真/TOYOTA

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■クラウンスポーツとハリアーのガチンコ勝負はあり得るのか

2022年7月15日に発表されたトヨタ 新型クラウンの中のひとつ「クラウン スポーツ」

 「エモーショナルな雰囲気とスポーティな走りを兼ね備えたミドルSUV」と紹介されるクラウンスポーツ。3BOXタイプのクロスオーバーやセダンの形状とは異なり、2BOXタイプのSUVという、独自の立ち位置にあるクラウンだ。

 クラウンスポーツのボディサイズは全長4,710mm×全幅1,880mm×全高1,560mm(数値は開発目標値)となっている。パワートレインなどに関しては、まだ発表がないが、正統派の都市型SUVであることは明白だろう。

 そうなると、気になるのはハリアーとの差だ。高級クロスオーバーSUVという、新しいジャンルを切り開き、長年の間、カテゴリーリーダーとして君臨してきたハリアーと、クラウンスポーツを、トヨタはどのように棲み分けるのだろうか。

 2020年に登場した現行型ハリアー。ボディサイズは全長4,740mm×全幅1,855mm×全高1,660mmである。クラウンスポーツは、ハリアーに比べて全長が30mm短く、全幅は35mm広く、全高は100mm低い。

 ボディサイズだけの比較であれば、ほぼ同等のサイズ感だ。しかし、ホイールベースはハリアーが2,690mmに対して、クラウンスポーツは2,770mmと80mm長い。ボディサイズの数値的な差よりも、クラウンスポーツの方が踏ん張り感は強く、クルマは大きく見えそうだ。

 ハリアーよりも上級層のクルマとして売り出すことが予想されるクラウンスポーツ。値付けやイメージ戦略を間違わなければ、真っ向からハリアーと戦うことは無いだろう。

 販売店に話を聞いても、「クラウン」と「ハリアー」の扱い方は明確に変えるという声が多く、顧客を食い合わないよう、既に工夫が始まっている。

■レクサスや輸入SUVもロックオンするクラウンスポーツ

レクサス NX。カローラスポーツを選択肢に入れるユーザーは、RXよりもNXを同時に検討する人が多そうだ

 クラウンスポーツが意識するのは、身内のハリアーだけではない。レクサスや輸入SUVにも照準を合わせている感じを受ける。

 同じGA-Kプラットフォームを採用するレクサスの新型RXは、クラウンスポーツよりも一回り大きいクルマだ。全長は180mm、全幅が40mm、全高は135mm、RXの方がビッグである。おそらく価格帯としても、RXが大きく上を行く存在となりそうで、直接的な戦いにはならないだろう。

 クラウンクロスオーバーの価格設定から予想すると、NXを含めたトヨタ・レクサスのSUVは下から、ハリアー・NX・クラウンスポーツ・RXという順に並びそうだ。仮に同門の食い合いがあるとすれば、NXを検討するユーザーが対象になると思う。

 クルマは小さいが高級ブランドレクサスのNXを選ぶか、トヨタの上級モデルになるクラウンスポーツを選ぶか。悩ましい選択になりそうだ。

 また、輸入SUVとのマッチアップも大いに期待できる。メルセデスのGLC、BMWのX3、アウディQ5、ポルシェマカンなど、全長4.7m前後の輸入車SUVには人気車種が多い。

 質感、価格で比較した際に、ハリアーでは力不足だったが、クラウンブランドであれば、大人気の輸入SUVとも勝負が出来るだろう。クラウンスポーツは、NXとタッグを組みながら、輸入SUVに流れていったユーザーを、トヨタ・レクサスへ取り戻す起爆剤となると筆者は考える。

■トヨタSUV最強の布陣が完成

トヨタ ハリアー。クラウンファミリーにこのハリアーとbZ4Xを加えて、トヨタの500万円以上SUVは百花繚乱となる

 トヨタSUVラインナップは、大きく3つに分けられそうだ。

 本格クロスカントリーには、ランドクルーザーとランクルプラド、そしてハイラックスが並ぶ。少し走破性は落ちるが、非舗装路もいける布陣にはRAV4とヤリスクロス、そしてライズがサイズ違いで用意された。

 さらに主力となる舗装路を軸に考えられたSUVには、クラウンクロスオーバー、クラウンスポーツ、クラウンエステートのクラウン3シリーズを加え、ハリアー、カローラクロス、C-HRと盤石の体制だ。加えてBEVのbZ4Xもある。

 エントリーからミドルの価格帯については、ライズ、ヤリスクロス、C-HR、カローラクロス、加えてRAV4のガソリンモデルまで、キャラクターや価格帯を上手く変えながら、売り分けができていたトヨタ販売店。顧客ニーズも多様化する価格帯なだけに、多彩な選択肢は販売店の大きな武器になったはずだ。

 今回追加されるクラウンクロスオーバー、そしてスポーツやエステートはどのように売り分けていくのか。ここにハリアーとbZ4Xを加えて、車種の乱立が予想される500万円以上のSUVは、トヨタで咲き乱れることとなる。

 同様の車種展開は、メルセデスでもBMWでも、世界販売のライバルとなるフォルクスワーゲンでも行われているから、ここで同士討ちを起こし、需要の食い合いをしては、「販売のトヨタ」の名が廃るだろう。

 SUVについてはラインナップを上手く機能させ、勝負を優位に運んできたトヨタ。今後登場してくるクラウンシリーズは、個性を明確に分けにくい高級価格帯のクルマなだけに、最初のプロモーションが非常に重要になる。

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 今のところ、クラウンスポーツとハリアーとの同士討ちは避けられそうだ。高級感はもちろんだが、乗り味の部分で「これぞクラウン」という部分が出てくれば、さらにハリアーとの差は明確になるだろう。

 高級車に対して、本気の取り組みを見せてきたトヨタだが、その勢いを同士討ちでつぶしてしまうのはもったいない。クラウンスポーツがどのようなイメージをユーザーに植え付けるか、その動向にトヨタ高級SUV全体の命運がかかっている。

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