2021年3月12日、軽オープンカーのホンダS660はファイナルモデルとなる「モデューロX バージョンZ」の設定と同時に、2022年3月いっぱいでの生産終了を発表した。
3月末で新車の生産枠が一杯になるとアナウンスされると、S660の中古車が市場から一斉に姿を消し、中古車相場が暴騰したのはご存じの方も多いだろう。
しかし11月1日、ホンダはS660を650台追加生産することを発表した。
追加販売されるのは「α」と「β」だけなので、「モデューロX バージョンZ」を新車で手に入れることはもうできない。
S660の中古車は流通台数が約100台程度まで減少し、平均価格は一時約300万円近くまで上昇。
現在は、流通台数は約650台まで盛り返し、平均価格も約230万円まで下がっている。
しかも11月1日の発表で値落ちが加速しており、モデューロXや無限RAを除いて、S660バブルも終焉を迎えつつある。
S660のようにスポーツカーのファイナルモデルのような類の特別仕様車は新車での入手な困難なため、中古車になってから高騰する傾向が大きい。
その理由として挙げられるのは、スペシャルなエンジンを搭載していることをはじめ、サスペンションなども専用セッティングになっていること。カーボン製パーツなどのスペシャルパーツを装着している点が挙げられる。
ここでは、国産中古スポーツカーのファイナルモデルの中古車相場を調べて、必ず高騰するのか否かを調べてみた。
※本稿は2021年12月執筆のものです。中古車相場は執筆当時のものになります
文/萩原 文博、写真/ベストカー編集部 ほか
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■トヨタ 86GT “BLACK LIMITED”
まずピックアップしたのは、2021年10月にニューモデルが登場したばかりの86だ。
先代のトヨタ86は、2020年3月にファイナルモデルと言える特別仕様車の GT“BLACK LIMITED”をMT、AT車それぞれ43台ずつ合計86台を販売した。
このGT“BLACK LIMITED”は「GT」をベースにAE86型スプリンタートレノ最後の特別仕様車となったGT APEX “ブラックリミテッド”を彷彿させるクリスタルブラックシリカをボディカラーに採用。
さらにブラック塗装を施したリアスポイラーやフロアアンダーカバーを装着。
アルミホイールはブロンズ塗装された17インチの専用アルミホイールを特別装備し、レーシーな雰囲気を高めている。
そしてブレンボ製ブレーキシステムやSACHS製ショックアブソーバーを装着するなど走行性能を向上させている。
インテリアは、ブラックに統一され、助手席前のインストルメントパネルには専用ロゴをあしらったブロンズカラーの刺繍を施し特別感を演出。
シート表皮には本革×アルカンターラを採用。前席にはシートヒーターを装備するなどホスピタリティを高めている。
トヨタ86GT“BLACK LIMITED”は6速MT車が351万8600円、6速AT車が358万6000円で発売された。
現在、中古車は約3台流通していて6速MT車が2台、6速AT車が1台となっている。中古車価格は6速AT車が389万8000円。6速MT車は468万8000円〜483万円とスポーツカーらしく6速MT車の値上がり幅は大きくなっている。
■ホンダ シビックタイプR Limited Edition
続いてはニューモデルが2022年に発売予定のホンダシビックタイプR。
2017年に登場した現行モデルのファイナルバージョンとしてシビックタイプR Limited Editionが2020年11月に限定200台で販売された。
Limited Editionは専用ボディカラーのサンライトイエローIIを纏い、徹底した軽量化を施し標準車から−20kgを実現。
そして専用装備によりピュアスポーツ性能をさらに向上させたモデルだ。
主なメニューは、アダプティブ・ダンパー・システムとEPSの専用セッティングをはじめ、Limited Edition専用のBBS製20インチ鍛造アルミホイールを採用し、バネ下重量を軽量化。
そして、サーキットパフォーマンスに優れたハイグリップタイヤのミシュランパイロットスポーツCup2を採用。車両本体価格は550万円と標準車より74万8000円高だった。
一時Limited Editionはオークションで1600万円という価格で落札されていたが、夏頃には1100万円付近で落ち着きを見せ始めた。
現在、Limited Editionの中古車はわずか1台しか流通しておらず、価格は1300万円。
標準モデルでも走行距離の少ない中古車では1000万オーバーの車もあるので、Limited Editionの中古車は1000万円を切ることはなさそうだ。
したがって新車時価格の2倍というプライスとなっている。
■スバル WRX STI「EJ20 Final Edition」
ティザー広告が始まり、まもなくニューモデルが日本市場にも正式導入される予定のスバルWRX。
2014年から販売された先代WRXの最終モデルは、2019年10月に限定555台のWRX STI特別仕様車「EJ20 Final Edition」が発表された。
この「EJ20 Final Edition」は、2019年度末に生産終了を予定しているEJ20型2L水平対向4気筒ターボエンジンを搭載したスペシャルなモデルに仕立てられている。
ベース車はWRX STI タイプSで搭載するEJ20型エンジンは、ピストンをはじめ、コンロッド、クランクシャフトなど回転系パーツの重量公差・回転バランス公差を低減したバランスドエンジンを採用。
さらにバランスドクラッチカバー&フライホイールの採用により、高回転域まで吹け上がる気持ち良いエンジンフィーリングにさらに磨きを掛けているのが特長。
外観は、かつて世界ラリー選手権(WRC)で活躍したマシンを彷彿させるゴールド塗装のBBS19インチ鍛造アルミホイールを装着。
フロントグリルやリアバンパーには、STIのコーポレートカラーであるチェリーレッドのアクセントを採用している。
インテリアは、握り心地の良いウルトラスエード巻ステアリングホイールやシルバーのフロント・リア左右3点式ELRシートベルトをはじめ、シルバーステッチのシフトブーツ、艶消しカーボン調のインパネ加飾パネルなどスポーティな演出が施されている。
車両本体価格は標準車の「EJ20 Final Edition」が452万1000円。
レカロ社製フロントシートやアドバンスドセイフティパッケージを装着した「EJ20 Final Edition FULL PACKAGE」は485万1000円で発売された。
現在、WRX STI EJ20 Final Editionの中古車は5台流通していて、価格帯は約660万〜約715万円と新車時価格の約1.5倍となっている。
この価格帯だとSTIのコンプリートカーS208やS207と同じ価格帯なので、どちらを選ぶか悩みどころだ。
■三菱 ランサーエボリューションX ファイナルエディション
スバルWRXより先に幕を下ろした三菱ランサーエボリューション。
2015年4月にランサーエボリューションXの特別仕様車「ファイナルエディション」を限定1000台で販売した。
ランサーエボリューションX GSR 5速MT車をベースとしたファイナルエディションは、外観はフロントグリルモールをダーククロームメッキに塗装し、バンパーセンターとボンネットフードエアアウトレットを光沢のあるグロスブラック塗装を施している。
さらに、BBS社製18インチ鍛造軽量アルミホイールをダーク調塗装とするなど全体でコーディネートを図り、精悍さを強調している。
インテリアは、室内天井と各ピラーを内装基調色のブラックに統一してスポーティ感を演出。アクセントとしてレカロ社製レザーコンビネーションシート、ステアリングホイール、シフトノブ、パーキングレバー、フロアコンソールリッドにレッドステッチを施している。
搭載する4B11型2L直列4気筒MIVECターボエンジンは、新たにナトリウム封入エキゾーストバルブを採用し、最高出力を向上させ、中高速域で伸びのある出力特性とした。
従来モデルでは、メーカーオプション設定となるハイパフォーマンスパッケージ(ビルシュタイン社製前後単筒式ショックアブソーバー、アイバッハ社製前後コイルスプリング、ブレンボ社製2ピースタイプフロント大径ベンチレーテッドディスクブレーキ、ハイパフォーマンスタイヤ)を標準装備とし、高性能化したエンジンに対応させているのが特長だ。
ランサーエボリューションXファイナルバージョンの車両本体価格は429万8400円というバーゲンプライスだった。
発売されてから約6年が経過しているが、ランサーエボリューションXファイナルバージョンの中古車は約18台流通していて、価格帯は約440万〜約808万円と修復歴有の中古車でも新車時価格を上回っている。
走行距離が伸びていても修復歴がなければ500万円以上というプライスとなっており、まだまだ安定した人気を誇っている。
■日産 R34型スカイラインGT-R Mスペック ニュルVスペックII ニュル
最後に紹介するのは現在中古車相場が上昇し、平均価格が約1724万円、価格が明記されている中古車の最高価格が3500万円という日産R34型スカイラインGT-Rだ。
R34型スカイラインGT-Rのファイナルモデルといえば、2002年1月に限定1000台で販売された特別仕様車のMスペック ニュル/VスペックII ニュルだ。
ボディカラーに先日発表されたGT-R Tスペックにも採用された特別塗装色ミレニアムジェイドを採用。
搭載するRB26型2.6L直列6気筒ツインターボエンジンは、レース用のベースエンジンとして採用されているN1仕様エンジンをベースにエンジンの中心部品であるピストンやコンロッドを重量バランスの均一化を図った高精度バランス品を採用。
その結果、エンジンの高回転域における回転フィールに磨きを書けている。さらに、限定車専用としてゴールドのシリンダーヘッドカバーを採用している。
また特別装備としてフルスケール300km/hスピードメーター、立体成形の専用ブレードネームエンブレムを採用した。限定1000台の特別仕様車は販売開始当日に完売してしまった。
現在、46台流通しているR34型スカイラインGT-Rの中古車のうち、ファイナルモデルとなるニュルはVスペックIIニュルが3台流通していて、いずれも「価格応談」。他のモデルの価格から3000万円は下ることはないだろう。
やはり、熟成の進んだシャシーにスペシャルなエンジンを搭載したスポーツカーのファイナルモデル。中古車の価格高騰は避けられないようだ。
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