記録的な猛暑を受け、6月だというのに既に「電力需給ひっ迫注意報」が出されている。そんな中、東日本大震災の際に、野村総合研究所が発表したある資料がいま再注目を浴びている。その資料とは、「震災復興に向けた緊急対策の推進について 第6回提言家庭における節電対策の推進」というタイトルで、野村総研が2011年4月15日付けで発表したものだ。
当時は、現在と同じく家庭や企業に大幅な節電が求められていた時期で、野村総研はこの資料で効果的な節電方法を示している。「主な節電対策の効果の差」と題された項では、家庭で実勢可能な主な節電対策を示したうえで、対策ごとに期待できる節電量について各種資料をもとに野村総研が試算している。
「テレビを小まめに消す」220Wの節電効果!
それによれば、政府が推奨する「エアコンの設定温度を上げる」ことの節電効果は、52Wだった。家庭にあるエアコン2台の設定温度を2度上げることが前提条件だ。「使用するエアコンの数を減らす(前提条件はエアコン1台を止める)」ことの節電効果は130Wだった。野村総研は、家庭1軒あたりの期待節電量の合計を696Wと試算しているが、そのうち、エアコンの期待節電量はわずか180Wあまりに過ぎない。
それでは、期待節電量で大きいものは何かと言えば、「テレビをこまめに消す」で220Wだった。次いで、「照明をこまめに消す」で期待節電量は162W。「白熱電球を省エネ型照明に交換する」の節電効果も大きく、期待節電量は「使用するエアコンの数を減らす」こととほぼ変わらない126Wだった。
この資料が“発掘”され、ネット上で拡散されると、次のようなコメントが相次いで寄せられていた。
こういう時、国からの注意はないのでしょうか?
さらにTV局の放映もやめれば、節電になりますね。
命を守る行動はテレビを消してエアコンの室温を下げれば解決やな
テレビを消して節電しよう!
専門家もテレビを切る節電効果指摘
ただ、野村総研の試算では、どのような種類のテレビとどのような種類のエアコンを比較したのかは定かではない。11年前より、省エネタイプのエアコンが普及している一方、省エネタイプのテレビも普及している。11年前の資料をそのまま鵜呑みにするのも、違うのかもしれない。しかし、テレビの消費電力が大きいことを指摘し、家庭でできる節電対策にテレビを消すことを推奨する専門家も少なくない。
季節外れの寒さに、今年3月に政府による初めての電力需給ひっ迫警報が出された。その際、テレビ番組に出演した国際環境経済研究所理事で主席研究員の竹内純子氏は家庭でできる節電対策について、次のように述べていた。
「テレビで言いづらいんですけど、テレビを消していただいて…。テレビは結構、(電気量を)食うんです。もしご覧になるとしたらワンセグとかで」
竹内氏は、テレビ局に対しても次のように要望していた。
「テレビ局も照明を落としていただくとか、(電気量の)節約をしていただけるとありがたいです」
6月だというのに、もう既に熱中症で死者も出ている。各地で熱中症での救急搬送が相次いでいるが、中には、節電に協力するためにエアコンを切っていたことが理由で熱中症なった人もいるだろう。政府は、企業や家庭に節電をお願いするのであれば、どの対策がどれくらい効果的なのかを強力にアナウンスしたうえで、節電をお願いするべきではないか。そして、テレビ局もたとえ自身にとって不都合な結果であったとしても、隠さずに報道してもらいたい。