製造過程でCO2を多く排出する鉄鋼業の脱炭素化への取り組みが動き出した。日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所、金属系材料研究開発センターの4社が水素製鉄コンソーシアムを結成し今月15日に初会合を開催。グリーンイノベーション基金事業で採択された「製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」などを協議した。基礎素材である鉄鋼材料の脱炭素化は持続可能社会に必須であり、日本が得意とする高級鋼は産業技術の高度化に欠かせない。その実現へ製鋼プロセスのイノベーションはもとより、それを可能とする社会インフラの整備が必要だ。
同プロジェクトでは、高炉法への水素還元技術(高炉水素還元技術)と、水素で低品位の鉄鉱石を直接還元する技術(直接水素還元技術)を確立することで、プロセス全体の化石燃料の使用量を削減。2030年までに50%以上のCO2排出量削減を目指す。実施期間は21年度からの10年間で予算総額1935億円。すでに今年5月、日本製鉄東日本製鉄所で外部水素や高炉排ガスに含まれるCO2を活用した低炭素化技術に関する試験高炉による試験が始まった。直接還元鉄を活用した電炉の不純物除去技術でも神戸製鋼所・高砂製作所で小型商用炉による試験が22年度中に開始される予定だ。
高炉を用いた水素還元技術の開発では、実高炉(5000立方メートル級)を改造し、常温水素系ガスの吹き込み試験などにより反応条件の変化やCO2削減効果を検証、国内製鉄所へ導入可能とする。また大規模な水素還元技術や高炉排ガスに含まれるCO2からのメタン生成と、その還元剤としての活用、原料一部へのバイオマスや還元鉄の活用などにより、高炉からのCO2排出量を50%以上削減する。
直接水素還元技術では、実用化されている低品位鉄鉱石を活用した直接還元法において、天然ガスに代わり水素を利用。現行の高炉法に対して直接還元炉からのCO2排出量を50%以上削減するとともに、電炉において不純物を除去する技術を確立し、高級鋼の大量生産を目指す。
現在、鉄鋼業のCO2排出量は産業部門全体の40%を占めている。カーボンニュートラルに向けては、その約8割を占める高炉による鉄鉱石還元プロセスのCO2削減が重要となる。吸熱反応である水素還元の実現には、技術的なイノベーションとともに大量かつ安価な水素の供給が欠かせない。鉄鋼業界が本格的な技術開発に着手した今、それを支える産業利用を前提とした水素インフラの構築についてもオールジャパンの取り組みが求められる。
The post 【社説】製鉄脱炭素へオールジャパン体制を first appeared on 化学工業日報.