異例の長さだというティザー期間を経て、新型ステップワゴンがいよいよリリースを開始した。最新のホンダ車らしく、その外観はシンプル志向。装備にも先代の「わくわくゲート」のような”飛び道具”は見当たらないが、激戦区に満を持しての投入となったその実力は果たして?
ピープルムーバーの基本を追求した作りに!
先代比では、ホイールベースと全高こそ据え置きだが、全長と全幅が拡大されている6代目ステップワゴン。最大のライバル、ノア/ヴォクシーに対しても全高を除けば大柄となるが、それを一層強調するのがシンプルにして伸びやかな仕立てとなるスタイリングだ。
どことなく2代目あたりまでの佇まいも彷彿とさせるそれは、特に今回から「エア」のサブネームが付くベース仕様だと気取らない、モダンな欧風家具的な風情もあってなかなかに新鮮。それと比較すれば、従来からのスパーダは同じく今回から新設定された上級仕様の「プレミアムライン」も含めて和風なイメージだが、先代に対してはこちらも格段にスッキリした印象に仕上げられる。
そんな、居住まいの良さは室内に乗り込んでも変わらない。新型では乗り物酔いしにくい視界を追求するべく、前席に対して2、3列目シートの着座位置を先代より高めてシートバック形状も吟味。グラスエリア下辺も水平基調として乗り手に安心感を与える空間を演出しているのだが、その効果は確かに実感できる。絶対的な広さはともかく、ミニバンの3列目というと狭い場所に押し込められたような圧迫感を抱くケースが少なくないのだが、新型のそれは意外なほどに開放的。「3列目を特等席に」とはカタログの謳い文句だが、先代より遮音性が高められたことも相まって走行中の居心地は2列目と比較しても見劣りしていない。使わない際には簡単操作で床下に格納できる点まで考慮すれば、この3列目はライバルと比較しても屈指の出来映えだ。
一方、”立地的”にはミニバンでベストな2列目も完成度は高い。左右方向にもスライド機構を持つキャプテンシートは、ライバルを凌ぐ780mmの前後スライド量を実現。スパーダにはオットマンも装備されるとあって、後方に陣取ればリムジンすら凌ぐリラックスした姿勢が満喫できる。こうした親切装備は長らく和製ミニバンの独壇場となっているが、その伝統は新型ステップワゴンにもしっかり受け継がれているわけだ。
さて、そんな新型に採用される心臓部は1.5Lガソリンターボと2L NAガソリン+2モーターによるハイブリッドという2本立て。前者では4WDが選べることも含め、構成自体は先代と変わらないが、もちろんそれぞれで相応のアップデートが施されている。前者はターボを筆頭とする吸排気系の改良で、多人数乗車時の走りが向上。後者ではエンジンのクランク剛性アップなどで静粛性が高められたというが、実際の走りはこのクラスの最新ミニバンとして満足できるものだ。特にガソリンターボ仕様は、必要にして十分な速さを確保。さらに、組み合わせるCVTの構造的悪癖が上手に抑え込まれているので、ハイブリッドに対する廉価版という意識を抱かずに済む。一方、ハイブリッドは日常域だと電気駆動車らしい静かさが実感できるという具合だ。
また、骨格剛性を高めたボディやワイドトレッド化の恩恵で、身のこなしもナチュラル志向。もちろん、スポーティというわけではないが、多少飛ばすという領域までなら積極的に操る意義も見出せる。ミニバンといえば基本的には同乗する”家族のためのクルマ”だが、その意味では走りも諦めたくないお父さんにも狙い目の1台と言うことができそうだ。
【Specification】ホンダ・ステップワゴン・スパーダ
■全長×全幅×全高=4830×1750×1840mm
■ホイールベース=2890mm
■車両重量=1740kg
■エンジン型式/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1496cc
■最高出力=150ps(110kW)/5500rpm
■最大トルク=203Nm(20.7kg-m)/1600-5000rpm
■燃料タンク容量=52L(レギュラー)
■トランスミッション=CVT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F&R)=205/65R16
■車両本体価格(税込)=3,250,000円
投稿 原点回帰のナチュラル路線で市場に物申す! 新型ステップワゴンは激戦のミニバン市場で輝く星となれるのか?【国内試乗】 は CARSMEET WEB に最初に表示されました。