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 2022年F1第12戦フランスGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。今回は、フェラーリとライバルであるレッドブルのアップデートをチェックしつつ、フェラーリのシャルル・ルクレールがトップ走行中になぜミスを犯したのかを分析する。

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 シャルル・ルクレールが、またもリタイアを喫した。スペイン、アゼルバイジャンと同様、もし完走できていたら、はたして勝てていただろうか。バルセロナとバクーではエンジンに裏切られたルクレールだったが、今回は自らのミスがリタイアを引き起こした。

レッドブルRB18フロアフェンス比較
レッドブルRB18フロアフェンス比較

 そもそもルクレール勝利の可能性自体、確実ではなかった。レッドブルがさらに戦闘力を増していたからだ。新たに投入したフロアウイングを装着したRB18は、ポール・リカールの長いストレートで威力を発揮した。Q3でルクレールがカルロス・サインツのスリップストリームを利用した区間でさえ、フェルスタッペンはルクレールより速かった。一方、フェラーリのF1-75のリヤウイングは大きなダウンフォースを得ており、最終区間の長いコーナーで特に俊敏な走りを見せた。そのおかげでルクレールはフェルスタッペンに0.304秒差をつけて、ポールポジションを獲得した。ちなみにスリップストリームによる恩恵は、コンマ2秒程度といわれる。

 決勝でフェラーリのタイヤにデグラデーションが起きやすくなるのではないかという懸念はあった。フロア下と冷却を見直したアップデートも(下の画像参照)、その傾向を助長する可能性があった。一般的にはダウンフォースが大きいとタイヤのデグラデーションが制限され、スライド量は少なくなる。一方でタイヤへの負荷が上がることで、中心部がオーバーヒートしてしまう。フェラーリはレースよりも、予選に集中しすぎたのだろうか。

フェラーリF1-75フロア比較
フェラーリF1-75フロア比較

フェラーリF1-75フロア&冷却比較
フェラーリF1-75フロア&冷却比較

 それは杞憂に過ぎなかったようだ(ルクレールがリタイアしたために、それは証明されなかったが)。それではルクレールのミスは、なぜ起きたのか。カナダで導入されたF1-75の低ドラッグリヤウイングにより、RB18とのトップスピードの差は大きく縮まった。実際レースでは、フェルスタッペンはDRSの助けを借りてもルクレールを追い抜くことができず、一方ルクレールはミストラルストレートの手前のターン5とターン6でフェルスタッペンを引き離すことさえできていた。

 コース上で抜けないと悟ったレッドブル陣営は、アンダーカットによる首位奪取を目論んだ。改めてアンダーカットを説明すると、相手より先にピットインし、ニュータイヤでクリアラップを取り、相手のピットインの間に順位を上げる戦法だ。

 しかしタイヤのデグラデーションがひどくないことを確認したフェラーリ陣営は、レッドブルの戦術に反応せず、ルクレールをステイアウトさせることにした。ではもしフェルスタッペンよりずっとフレッシュなタイヤでコースに復帰できていたら、ルクレールはフェルスタッペンをコース上で抜くことができただろうか。

 そこは知る由もない。ルクレールは17周目の11コーナーでコースアウトを喫したのだ。この放物線状のコーナーでF1-75は、他のすべてのマシンより15km/hも速かった。そのためルクレールとサインツは非常に大きな走行ラインを描くことができた。しかし超高速コーナーを走行中は、オーバーステアによるわずかな狂いが致命傷になりうる。フェルスタッペンのアンダーカットを阻止しようとしたルクレールは、マシンのグリップ限界を超えてしまったのだった。

 ルクレールの速さの秘訣は、滑りやすいリヤエンドを我慢することだが、今回ばかりは、それが仇となった。今季のマシンはフロントタイヤのグリップがリヤタイヤよりも低いので、少しオーバー気味になるようなセッティングが有効だ。ルクレールはそれが引き起こすわずかなアンバランスを受け入れることができるドライバーで、通常ならF1-75をサインツより速く走らせることができる。しかし今回は、罠にはまってしまった。