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より高価なSUVのほうが良いのか?Q3とQ5のスポーツバックの直接比較。アウディQ3とQ5スポーツバックの間には、7,000ユーロ(約100万円)近い価格差がある。果たしてQ5はそのプレミアム性を正当化できるのか?

「アウディQ3」と「Q5」を比較すると、まず小さい方のモデルを支持するいくつかの正論が目立つ。全長が19cm短い「Q3スポーツバック」は、スペースがそれほど狭くはない。また、ラゲッジルームもほぼ同等で、Q5スポーツバックの方が最小限のスペースしかないくらいだ。しかしそれでも最大時のみ「Q5」のほうが80リットル多く収納できる。

さらに、実測では、「Q5」の内部はそれほど大きくはない。一方で、シートの風通しがよくなり、幅が5センチ広くなったことは、チャイルドシートというキーワードに一役買っている。しかし、リアに入るときは、大きなスポーツバックでも身長1.80mの人は頭を下げなければならない。良い点: どちらもスライド式リアベンチシートが備わっているが、「Q3」のみ標準装備だ。「Q3」のもう一つの有利なポイントは、都市部の交通では、そのサイズと相まって、より使いやすいことはいうまでもない。

アウディQ3スポーツバックでは、2リッターTDIは非常に存在感があるが、Q5スポーツバックでは控えめな存在にとどまっている。

Q3ではTDIがはっきりと聞き取れる

どちらも同じエンジンを搭載しているが、「Q5」の遮音性だけは本当にプレミアムだ。「Q3」が200馬力のディーゼルエンジンを荒々しく爪弾くようなサウンドを響かせるのに対し、「Q5」の同じ4気筒エンジンはうまく包み込むように鳴り響く。そして、スピードが上がるにつれて、「Q3」ではさらに風切り音や転がり音がより素直に伝わってくる。

Q5のみエアサスペンションを搭載

「Q3」のオーナーは、オプションの非常に快適なエアサスペンションを夢見ているに過ぎない。スチール製のスプリングはきちんと機能するが、「Q5」のスチール製サスペンションと比較しても、短い段差や長い段差で明らかに荒い。また、211kgの重量的なアドバンテージがあるにもかかわらず、「Q3」は燃費や走行性能の面では、実質的な優位性を持っていないのだ。

【車両データ】

モデル アウディQ3スポーツバック40TDIクワトロSライン アウディQ5スポーツバック40TDIクワトロSライン
エンジン 4気筒ターボディーゼル、フロント横置き 4気筒ディーゼルターボ、フロント縦置き
駆動方式 全輪駆動、7速デュアルクラッチ 全輪駆動、7速デュアルクラッチ
0-100km/h加速 7.3秒 7.6秒
最高速度 224km/h 222km/h
全長/全幅/全高 4500/1843/1567mm 4751/1841/1494mm
トランク容量 530~1400リットル 510~1480リットル
乾燥重量 1,714kg 1,925kg
平均燃費 14.9km/ℓ 14.4km/ℓ
基本価格 48,500ユーロ(約670万円) 55,350ユーロ(約765万円)
テスト車価格 50,700ユーロ(約700万円) 56,650ユーロ(約780万円)

消費とメンテナンスは同レベル、クラスが高い分、価格的には「Q5」のほうが高い。テスト構成では、したがって、「Q3」のほうが価格的に有利だが、どちらもとも5万ユーロ(700万円台)を超える価格設定になっている。そして、「Q5」のより素晴らしい快適性を見逃す手はないだろう。

結論:
6,850ユーロ(約95万円)という価格差は確かに高額だ。しかし、どちらも(テスト車の構成では)5万ユーロ(約700万円)台のクラスだ。そしてそこでは、より洗練され、快適な「Q5スポーツバック」のほうが、よりまとまりのある姿を提示している。

【ABJのコメント】
今回の勝負は「Q5スポーツバック」の勝ちになったわけだが、個人的にはSUVは(事情や予算が許すのであれば)、大は小を兼ねる、というのが持論である。せっかくの「ユーティリティー ビークル」なわけだからその室内空間や、人やものを運搬する可能性はやはり大きいほうが便利だし、そのほうがよりコンセプトとして明確だろうから。

とはいっても今回は、どちらもスポーツバックという「SUVクーペ」という部分がややひっかかる。まあSUVでクーペが必要なのかという、そもそも論はともかく、どこのメーカーにもこういう屋根がペッタンコで、どちらかというとスペース効率よりも格好優先のSUVが用意されている時代だから、そこを否定しては話が進まない。

だが今回の比較に関しては、クーペできびきびと走るという部分を尊重したのであれば、「Q3」のほうが小さいし、車重も若干軽い分有利なのではないだろうか、という気持ちにもなる。それにこういう「スポーツウエア」のように、流行のノリで買う場合、ちょっとでも安くて買いやすいほうが良いのではないか、とも思う。色や形が今の流行だから選ぶ・・・。そんな選択基準で今や自動車は選ばれている時代なのだとつくづく再確認した比較テストであった。(KO)

Text: Stefan Novitski
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de