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知れば知るほど謎だらけ!? EV界の「黒船」 テスラ大研究

 新興メーカーながらあっという間にブランドイメージを確立し、昨年(2021年)のEVの販売では世界一に君臨したテスラ(なお今年1〜6月期の世界のEV販売台数では、中国BYDがテスラを抜き首位に立った)。既存のクルマ作りにとらわれない斬新なデザインと販売方法で、自動車業界で存在感を増し続けている「テスラ」を大研究! 国内のテスラ車中古車事情もご紹介!

●2022年 テスラ関連ニュース
・米フォーブス誌が発表した2022年世界長者番付で推定資産2190億ドル(約27兆円)のマスク氏が初の世界一に
・テスラの2021年EVの世界販売は前年の約1.8倍となる93万6172台で世界一
・EVバッテリー用リチウムをタロン・メタルズから供給を受けるという新たな契約を締結
・オートバックスがテスラと車検・点検関連の純正部品供給に関する契約を締結
・2022年4月、米ツイッター社がマスク氏による約440億ドル(約6兆円)での買収に合意。が7月8日に撤回。米ツイッター社がマスク氏を提訴する事態に発展。10月に審理入りの予定

※本稿は2022年4月のものです。
文/鈴木直也、萩原文博、ベストカー編集部、写真/TESLA
初出:『ベストカー』2022年5月26日号

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■イーロン・マスクとはいったい何者なのか?

テスラ社CEOのイーロン・マスク。最近ではいきなりツイッター社の買収に乗り出したり、いきなり取りやめたり、それでツイッター社に訴えられたりと、話題に事欠かない印象が強い

 起業した会社を売却して得た資金で、イーロン・マスクが初めて本格的な事業会社を立ち上げたのは「スペースX」。

 現在はテスラが巨大化しちゃったからクルマ屋さんのように思われているが、実はイーロン・マスクはもともとロケット屋さんだったのだ。

 テスラとの関わりは、最初は出資者として参加した後、経営を立て直すために2005年にCEOを引き受けたのがいきさつだ。

 そこからのテスラの成長物語はよく知られているところだが、初期の頃のイーロン・マスクは、とにかくお金集めで天才的な才能を発揮した。

 シリコンバレーの錚々たる人脈をはじめ、ベンチャーキャピタルなどからも広く資金を集め、2シータースポーツカーの“ロードスター”しか売り物がないテスラをまともな自動車メーカーに育て上げるのに心血を注いでいる。

 集めた資金によって、トヨタからカリフォルニアの工場を買収したり、パナソニックと提携して独自の電池を生産させたり、後のテスラの基礎部分が完成。

 2012年発売のモデルSが大ヒットして以後は、スティーブ・ジョブズ亡き後のスター起業家として世界的な存在だ。

■テスラの時価総額が驚異的なのはなぜ?

 株式の時価総額は、その時点での株価×発行株数で算出。この数字を「その会社を買う時に必要な金額」と説明する人がいるが、それは間違い。

 現在のテスラの時価総額は約100兆円だが、あくまでもそれは机上の数字。

 イーロン・マスクがテスラの株を売りに出せば、株価が下がって時価総額も減少するし、逆に買いたい人が増えれば株価が上がって時価総額も上がる。

 株価は期待値で決まると言われているけど、時価総額は期待値の合計と見るべき。

■テスラが短期間に認知された理由は?

テスラ初の市販車はロードスターで2008年から販売開始

 2000年代、バッテリーのコストが高かったこともあって、「EVはシティコミュータから普及が始まる」という予想が多かった。

 実際、初の量産EVの三菱 i-MiEVをはじめ、トヨタはiQ、ベンツはスマートをEV化。その延長に日産のリーフがあったわけだ。

 ところが、イーロン・マスクは、最初にEVをビジネスとして軌道に乗せるには富裕層向けのプレミアムカーのほうが有望と見た。それがつまりモデルSだったわけだ。

 クルマとして先進的で出来がよかったのはもちろん、マーケティングセンスも抜群だったということじゃないかな。

■日本で約1万1000台強の販売は凄い?

知れば知るほど謎だらけ!! 「EVの黒船」テスラという会社
テスラは日本での販売台数を非公表としているが、国交省が公開した「テスラ車の改善対策届」の資料に台数が明記されていた。その数1万1425台!これはモデルSを初納車した2014年から今年1月までのもので、日本での総販売台数に匹敵するのは確実。恐るべし、テスラ!

 テスラは販売台数を公式に発表していないから、ボクもその数字を今回初めて知ったけど、率直に言って驚異的だ。

 そもそも、クルマをオンラインで定額販売すること自体が、とりわけ日本では驚異的なのに、それが累計1万台を超えているなんてビックリ。

 やはり、テスラにはアーリーアダプターを引きつける絶大な魅力があるんだねぇ。

■スペック未公表なのになぜ買うのか?

 日本で販売しているモデルS、モデルX、モデル3のすべてでモーターの最高出力、最大トルクは非公表となっているが、テスラを買う人は、クルマというハードウェアを買ってるんじゃなくて、それが実現するサービスを買ってるってことかな。

 充電時間〇分で□km走れて、擬似自動運転や独自のスーパーチャージャー充電網などを使うことができる。ユーザーはそれに対して、対価を払ってる感覚ですかね。

■クルマ界に衝撃を与えた技術、装備は何?

15分で最大275km相当分充電することができるスーパーチャージャー(急速充電設備)

 テスラ車でダントツ素晴らしいのはスーパーチャージャー(15分で最大275km相当分充電することができる)充電網の使い勝手。

 高出力なのはもちろん、自動的にユーザーを認証して課金されるシステムなど、ソフトウェアの出来も本当に素晴らしい。

 悔しいけど、現状の日本のイーモビリティパワーのサービスではまったく太刀打ちできません。

(ここまでのTEXT/鈴木直也)

■日本で買えるテスラ車、どーなの?

 日本で買えるテスラ車は3種類で、すべてEVだ。馴染みがない人も多いので、その特性をチェックする。

 テスラモデルSの受注が始まった2013年頃は、こんなに大容量の電池を搭載した電気自動車は存在しなかったし、強烈な加速感もエキサイティングそのもの。

 新し物好きのハートを捉える、刺激的な魅力に富んでいた。

タブレット型のモニターもテスラが先鞭をつけた

 さらに、モデルSのもうひとつの特徴であるオートパイロット機能。これがハイテク好きのアーリーアダプター層を熱狂的に引き付けたと思う。

 この「擬似」自動運転機能を乱用したユーザーの事故はアメリカなどでも問題になりつつあったが、限界をわきまえて使っていれば高性能ACCとして極めて便利。

 “脱法ドラッグ”的な危うさはあるものの、規制に縛られた既存のメーカーではできないクルマを造る会社というポジティブなイメージで捉える人が多かったのだ。

 かくして、テスラは電気自動車のスターとしてアッという間に認知された。その後、モデルX、モデル3がラインナップに追加され、大幅値下げでリーフe+並みの価格としたモデル3のヒットが注目されたのは記憶に新しい。

 ただ、その後の資源価格の上昇などで1年で約120万円も値上げするなど、これまた「既存のメーカーではできないこと」をやってくるところもテスラらしい。

 今後もEV市場の暴れん坊として目が離せない存在と言えるでしょうね。


【番外コラム】テスラの中古車最新事情

 トヨタはBEVのbZ4Xをサブスクで販売開始したが、BEVのゲームチェンジャーのテスラは、売り切りでの販売を行っているので、すでに約90台の中古車が出回っている。

 中古車が最も多いのが、2019年に導入され、新車価格が400万円台からという「モデル3」。中古車の流通台数は約36台で、平均価格は約571万円。3カ月前の時点は約555万円だったので値上がり傾向となっている。中古車の価格帯は約428万〜約715万円と値落ち幅は小さくなっている。

 続いては2014年に導入された「モデルS」の流通台数が、約32台となっている。3カ月前の平均価格は約710万円で、現在は約770万円とこちらも値上がり傾向。価格帯は約383万〜約1198万円と非常に幅広くなっているのが特徴だ。

 そしてテスラの中古車で最も流通台数が少ないのが約22台の「モデルX」。「ファルコンウイング」というドアを採用したSUVだ。現在の平均価格は約831万円で、3カ月前の時点では約875万円と約44万円の値落ち幅を記録している。中古車の価格帯は約649万〜約1189万円となっている。

 こうして見ると、テスラの残価率は決して低くない。

■テスラ車の中古車相場
・モデル3:428万~715万円
・モデルS:383万~1198万円
・モデルX:649万~1189万円

(TEXT/萩原文博)

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