6月末の梅雨明けから9日連続35度超えの猛暑日を記録した東京都心だが、これからいよいよ夏本番を迎え、暑くなった日の車内の温度上昇について知り、熱中症対策をしっかり行いたいところ。
外気温が高い日はもちろん、外気温がそれほど高くない日でも湿度が高い場合など、直射日光の当たる場所に駐車すると、車内温度が上昇する場合がある。短時間であっても、子どもやペットを車内に残してクルマから離れないようにすることは意外と重要だ。
そこで、JAFの実験結果(夏の車内温度・暑さ指数(WBGT)の変化:JAFユーザーテスト「真夏の車内温度」より)をもとに、車内環境と対策アクションについて西村直人氏がレポートする。
文/西村直人、写真/AdobeStock(トップ画像=DimaBerlin@AdobeStock)
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■サンシェードを使っても意外に車内温度の抑制効果は薄い?
日を浴びて暑くなるのは車内も同じ。締め切った車内温度はなんと60度近くにも達する。JAFでは過去にユーザーテストと称して、真夏の炎天下に駐車した車内の温度変化を計測する実験を行っている。
外気温のピークとされる14時を挟んだ12~16時までの4時間で、車内温度がどう変化していくのかを複数車両で計測した。ユーザーテストの詳細はJAFのサイトに詳しいが、5車それぞれに条件を付けて車内温度の変化を計測している。
注目すべきは、前面ウィンドウにサンシェードを装着した実験車の結果だ。サンシェードはウィンドウをシェード(日よけ)で覆うことで直射日光が車内に入り込むのを抑える役割がある。
日傘を使うと涼しく感じるのと同じ原理だ。手軽で効果が高いと思われるサンシェードだが、意外にも車内温度の抑制効果は2度とごくわずかだった。
サンシェードが最も効果を発揮したのは、直射日光をまともに受けるダッシュボード(表面部分)温度の抑制だ。サンシェードなしで直射日光を4時間受け続けると、最大で74度まで上昇するのに対して、サンシェードを使うと52度とサンシェードなしの場合の22度も抑えることができた。
シェードの素材や形状にもよるが直射日光があたる場所への温度抑制効果は高い。
車内温度に対して最も温度の抑制効果が高かったのはエアコンを稼働させた車両だった。設定温度を25度にしたまま4時間にわたる炎天下に駐車しても、車内の最高温度は27度とわずか2度の上昇に留まり、平均温度も26度に保たれていた。
■熱中症と暑さ指数(WBGT)との関係とは?
このようにエアコンは車内の温度抑制効果が高いことから、「よく冷えた車内だから、短時間ならエンジンを止めた車内に子供やペットを残しておいても大丈夫じゃないか?」とする声を耳にする。
しかし、これは絶対にやってはいけない! なぜなら熱中症は深部体温の上昇によって引き起こされるからだ。そして、この熱中症は「暑さ指数」(WBGT)と深い関係がある。
WBGTは「湿球黒球温度/Wet Bulb Globe Temperature」の略語で、身体と外気における熱のやりとり(=熱収支)に大きな影響を与える「気温」、「湿度」、「日射/放射」、「風」の要素をもとに算出された指標だ。
WBGTでは温度を基準とした4段階の「日常生活に関する指針」と、湿球温度、乾球温度を併用した5段階の「熱中症予防運動指針」などがある。
■車内に子供やペットを残して行ってはいけない理由
車内温度に関するWBGTでは気温21度未満が「ほぼ安全」とされ、25度未満が「注意」、28度未満が「警戒」、31度未満が「厳重警戒」とされ、31度以上では「運動は原則中止」(≒危険)と定義されている。
ちなみに、エアコンを稼働させて気温約20度に保たれた車内温度であっても、エアコンを停止するとその直後から温度上昇が始まる。
すると、停止後5分で「注意」上限の25度付近となり、停止後10分では28度以上の「厳重注意」、そして停止後15分では「運動は原則中止」の31度以上となり熱中症の危険度が最大限にまで達する。「ちょっとならエンジン止めた車内でも大丈夫」じゃない理由がおわかりいただけるだろう。
また、エアコンで快適な車内温度が保たれたとしても、ダッシュボードの表面温度は61度と高かった。サンシェード装着が52度、サンシェードなしが74度だから、その中間といったところ。ただし、室内温度との差は34度(61度-27度)と実験車両のなかでも最も大きかった。
車内が快適だからと不意にダッシュボードや直射日光を受けている表面を触ってしまうとかなり熱い。あまりの熱さに脊髄反射で手を引っ込めたことのある読者も多いことだろう。
ユーザーテストによると、74度のダッシュボードに生卵を入れたフライパンを放置した場合、1時間で白身の周囲が白くなり、2時間で全体が白く固まったという。
■精密機器の放置にも注意!
同様に、車内温度が低く保たれていても直射日光を受ける場所にスマートフォンやパソコンなど精密機器を放置するのは不具合の原因になる。
また、キャンプなどで使う携帯用ガスボンベにしても、「火気や直射日光を避け、40℃以下の湿気の少ない場所にキャップをして保管」(岩谷産業より)とあるように車内放置は厳禁だ。
手軽な車内の温度抑制策として有名なのが、窓を少しだけ開けておく方法だ。JAFユーザーテストでは開閉可能な窓を上部から3cm開けてテストした。結果は、車内最高温度は45度と窓を開けることで7度下がり、平均温度も5度下がった。
しかし、直射日光を受けることに変わりはなく、ダッシュボードの表面温度は75度と、窓を締め切った場合(74度)と同じ水準だった。
駐車中の車内温度はどうすれば上昇を抑制できるのか? 理想は日光の影響を受けない建物内や地下駐車場に駐車することだ。
また、屋外であっても太陽の日周運動と、周囲の建物などの高さから、なるべく影になる時間の長い場所を選ぶといい。風通しのいい場所も効果的だ。
※参考:JAF(日本自動車連盟)「真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)」(リンク先)
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投稿 「ついうっかり」は命取り! 今年の夏はこれから暑さ本番! 真夏の車内熱中症対策に刮目せよ!! は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。