愛車を買ったら、長くキレイな状態で乗りたいと思うものだが、ディーラーで提案されるボディコーティングの価格は、普通車サイズで7万円、ミニバンサイズになると9万円くらいかかる。
コーティング業界では、施工する最適なタイミングは、新車が納車されてから2週間以内だと言われている。そうなると納車時やるのが効果的なのは明らかなのだが、値段が値段なだけに、悩む人は多いのではないだろうか。
コーティングをするとまめに洗車をしなくていい……という売り文句なのだが、「まめに洗車するからいいよ」という意見もあり、オーナーの間でも意見が分かれる。
そんなコーティングは本当に必要なのか? また、まめに洗車する人でもコーティングしておいたほうがいいのか? コーティングはどう維持するのがよいのかという普段のお手入れ方法まで解説していきたい。
文/高根英幸
写真/AdobeStock(トップ画像=naka@AdobeStock)、TOYOTA
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■ガラスコーティングである必要はないが、コーティングはやっておきたい
新車を購入するのは、出費は痛いがそれだけの楽しみや満足感はある。特にクルマは何を選んで、グレードやボディカラー、メーカーオプションでは何を選択するか。クルマは買う前に考え、悩んでいる時が一番楽しいのかも……。そう思うクルマ好きの諸兄も多いハズだ。
ディーラーオプションで何を選択するか、というのは人によって変わってくるが、意外と悩むのがボディコーティングではないだろうか。
新車時の光沢感を長く維持したいのであれば、コーティングはしておいたほうがいい。というのもコーティングは塗装面の保護が一番の目的で、光沢だけを追求するならほかにも手段はある。例えば透明感のある厚い被膜を望むのならワックスのほうが優れている。
コーティングの上にワックスをかければ両方のメリットを兼ね備えるが、手入れはそれだけ大変になる。どちらかを選択しても、塗装面を護る効果は期待できるものだ。そうなるとコーティングは耐久性が高く、手間要らずというのがやはりメリットだろう。
ディーラーオプションのコーティングは、耐久性が期待できる反面、価格はかなり高い。洗車関連のメニューとしては最高レベルといっていいほどで、車種によって異なるものの5万円からが一般的で、大きなボディのクルマでは10万円を超えることも珍しくない。輸入車の場合は、さらに金額が跳ね上がる。
ディーラーでのボディコーティングが高価なのは、作業代がディーラーの時間工賃に準じているのと、品質保証面でのコスト、さらに施工後24時間は水に濡らさず乾燥させなければならないことが多く、整備工場内でそれだけスペースを専有してしまうこともコストとして含まれているようだ。
こうしたディーラーオプションは、新車販売では値引きにより利益が薄くなってしまうのをカバーする目的の商品でもあるから、ディーラーとしてはオーナーに選んでもらいたい、という希望もあるだろう。キャンペーンなどでディーラーオプションのギフトを用意するディーラーも珍しくない。
また営業マンによっては、値引き代わりにサービスとして、こうしたオプションを無料にすることを提案する交渉術もある。ユーザーにとっては現金値引きよりも高額なサービスだからお得感があるし、ディーラーにとっては損失は原価分で済むので、両者にメリットがある手段だ。
新車ディーラーで同時に注文して、納車前に施工してもらうのが、オーナーにとってはスマートに新車の塗装面の保護になるのもメリットだ。
新車時の塗装はまだ完全に硬化していない場合もあり、比較的傷みやすいだけでなく、鉄粉などの異物がついたり、微細なキズが付けばそれだけコーティング前に下処理が必要になる。
下処理とは塗装面を均質な状態に磨き上げる下地仕上げのことで、異物などの付着が少ない状態であれば、それだけ塗膜を削り落とす必要が少ないので塗装面のよい状態を維持できるのだ。コーティングよりも下処理のほうが手間が掛かり、高いスキルも求められる。
ガラスコーティングが主流になる前は、フッ素系(ポリマー系とも呼ばれる)のコーティングが利用されていた。
その場合は塗膜をポリッシャーで磨いてからコーティング剤を塗り込み、再びポリッシャーで熱処理をして硬化させるという工程だったが、ガラスコーティングの場合、塗り込んだあとは拭き上げるだけで、強固なガラス被膜を形成してくれる。
ボディカラーによっても、コーティングのメリットは変わってくる。濃色系は磨きキズが目立ちやすいので、ガラスコーティングを施すことでキズ付きにくくなるため、塗装面の美しさがより強調されるのだ。
白やシルバーなど明るい色は、磨きキズはわかりにくいし汚れも目立ちにくいから、濃色系ほどには見た目のメリットはないとも言える。それでも塗装面の保護効果や防汚効果は期待できるから、洗車がラクになるのはメリットと感じる人は多いハズだ。
なおガラスコーティングでのUVカットや吸収の機能はないから、紫外線による色褪せなどから守ることはできないと思ったほうがいい。赤や黄色などの退色が目立ちやすいボディカラーは、コーティングではなくUV吸収剤などが配合されたワックスのほうが色褪せから守る効果は高いのだ。
■洗車自体にもメリット、デメリットがある
ガラスコーティングを施すオーナーには、洗車をしたい派と、したくない派の両方が存在する。とにかくクルマを綺麗に保ち、そのために洗車をするがワックスやコーティングを自分でする手間は省きたい人が前者だ。
後者は、ガラスコーティングによってクルマが汚れにくくなる効果をメリットと感じてコーティングを依頼する。
洗車自体も多くても少なすぎても弊害はある。まず洗いすぎは、サビや磨きキズの原因になる。逆に洗わなすぎても、磨きキズは防げるがボディの隙間に泥や砂、枯れ葉などが堆積して、それが水分を含みやすくなってサビやカビ、苔などが生える原因になることもある。
洗車機も汚れが少ない状態で頻繁に利用するユーザーは、比較的磨きキズが少ないが、しっかり汚れた状態で洗車機にかけるような使い方では磨きキズが増えてしまうことになる。
比較的マメに洗車をする人で、洗車が趣味というほどのレベルではないのなら、ガラスコーティングだけに大枚はたく必要はないのではないだろうか。
ちょっと前までなら、下取りや買い取り時にボディが綺麗であればプラス査定がつくこともメリットであったが、5年以内に買い替えるのであれば、それほど塗装面の状態に差が付くとも思えない。
平均車齢が延びている昨今、7~8年経過したら、現在のクルマは将来の下取り価格などが不透明すぎるので、予測できない以上、余計なコストをかけない方が得策だ。
■コーティングの性能維持にもコストがかかる
ガラスコーティングの被膜自体は耐久性が高くても、撥水効果の持続性は半年、1年で低下してしまう。そのため定期的に被膜の状態をチェックしてもらうと同時に撥水剤を塗ってもらう必要があり、それでも数万円の出費となる。
つまり、5年保証のコーティングをしてもらうと、保証を受け続けることを考えるとコーティングの費用だけで、5年間で十数万円から25万円前後も費用がかかることになるのだ。
最初の3年くらいはディーラーに任せるとして、その後は洗車の専門店にコーティングを依頼することで費用を抑えることはできる。しかし、ここでも最上級の仕上りとなれば4万円から8万円程度の費用となる上に、やはり毎年のメンテナンスを受ける必要がある。
オーナーが自分でできるコーティング剤も市販されているが、ガラス系でも被膜が薄く硬度や持続性もそれなりとなる。プロ用の洗車用品は使い方をキチンと知って、作業スキルも持っている人だから使えるアイテムなのである。
やはりコストと労力、そして仕上りぶりを総合的に判断して、自分の中で折り合いをつけていくしかない。
個人的な意見を言わせてもらえば、一番コスパがいいのは、1、2年程度の耐久性のガラスコーティングをプロにお願いして自宅で洗車する、あるいは布ブラシの洗車機で毎週洗車するというパターンではないだろうか。
駐車場の環境(屋根の有無や鳥害、洗車しやすさなど)や自分の生活スタイルなどで決めるしかないが、ガラスコーティング自体は、洗車好きでワックス好きのマニア以外は利用したほうがいいものだ。
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