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朝日新聞社は27日、2022年3月期の連結決算を発表した。これによると、売上高は2724億7300万円と前年比7.2%減となったが、営業損益が95億100万円、純損益も129億4300万円とそれぞれ黒字だった。

東京・築地の朝日新聞東京本社(mizoula /iStock)

前年は、営業損益が70億3100万円、純損益が441億9400万円の赤字をそれぞれ計上。「創業以来最大の赤字」(FACTA)と騒がれ、当時の渡辺雅隆社長が引責辞任する「打撃」を受けたばかり。朝日新聞嫌いの保守派の人たちの「崩壊へのカウントダウン」「1日も早く廃刊しますように」といった待望論は強まるばかりだったが、2年ぶりの黒字転換と早い立ち直りを見せたことで、アンチ朝日の人たちの期待を裏切った格好だ。

10年前の2012年には764万を擁していた朝日の部数(ABC発表)も、慰安婦報道の批判が燃えた2014年ごろから減少が加速。15年に700万部を割り込み、20年には495万部の大台割れ。6年で3分の1も部数を激減させた。新聞業界全体を覆う「紙の新聞離れ」の潮流は加速するばかりで、今回の黒字転換を意外に受け止める向きもあるが、何があったのだろうか。

そもそも昨年の歴史的な赤字決算自体がイレギュラーだった側面は挙げられそうだ。朝日は昨年、441億もの純損失を生み出した要因は「繰り延べ税金資産」を取り崩したことを理由に挙げていた。「繰り延べ税金資産の取り崩し」は、これまで通りの課税に応じられなくなるほど業績の見通しがよくない時に費用を増加させて計上するもので、近年のコロナ不況で未曾有の危機に陥った航空・鉄道業界で計上したのが典型的だ。

「すごすぎる内部留保」

ただ、本来なら赤字ではなくても、「繰り延べ税金資産の取り崩し」の額が大きくなると、経営の実態以上に赤字が拡大し「悪化」しているように見えるケースもあるようだ。ネットでは「業務を改善すれば黒字に戻る要素はあった」との指摘も出ている。

その点、決算短信で注目したいのは、販売費及び一般管理費(販管費)が前年の866億円から今期は586億円にまで大幅に削減したことだ。

朝日新聞社は伝統的に新聞業界でも特に待遇が良く、有価証券報告書によれば、苦境に陥った近年でも社員の平均年収は1000万を超えている。日経新聞のOBの1人はかつて「東証1部上場の業界トップのメーカーでも平均年収が800〜900万円という社はザラにある。このレベルに引き下げるだけでも財務を健全化させ、十分延命できるのではないか」と指摘していた。

そして、実際に昨年1月、100人の希望退職を募るなど、近年は人件費の削減に乗り出していた。数百億単位の削減は人件費以外も含まれるが、メタボ化していたコスト構造を筋肉質に転換することで不動産収入などの資産回転で支えやすくなる。実際、純資産3505億円は、売上高の2724億円を大きく上回っており、企業会計に詳しいネット民からは「すごすぎる内部留保」との声さえ上がり始めている。

とはいえ、新聞業界を取り巻く厳しい状況に変わりはない。“不採算部門”とも言える新聞報道事業をどう持続可能なものとしていくのか。詳しい財務分析は、来月にも公表される有価証券報告書の内容を待つことになるが、今後も朝日新聞の経営状態はアンチ・シンパを含めて注目され続けそうだ。