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 自動車任意保険のCM。よくテレビで流れていますよね? そこに出てくるクルマって見たことあるようでないモデルがほとんど、というか、かなりの確率でそうである。仮に市販車をCMで使ったとしたら、そのクルマのオーナーやメーカーは快く思わないってのが答えな気もする。これの本当の答えはなんだ!?

文/高山正寛、写真/NISSAN、HONDA、AdobeStock

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■車種を特定しづらいワケはバッグボーンにあり!? 外資系は規制が緩いケースも

自動車保険のコマーシャルに登場する車は車種が特定できない工夫がされている。事故シーンなどに特定のメーカーを想起させるのを避けたりと、いわゆる「大人の事情」が隠されている

 まず失礼を承知で言えば自動車保険は地味な商品の部類に入る。もちろん万が一の事故の際に保証をしてくれる重要な損害(任意)保険なので車両購入時や入れ替え時、また昨今はネットを使った通販型も定着してきたので満期日が近づいてきたら“乗り換え”を検討することは当たり前になりつつある。

 差別化もしづらい商品ゆえにイメージも大切だ。若者のクルマ離れもある程度はあるが、ターゲット層に向けてタレントや俳優を積極的に使っているのは昔から変わらない。

 そして、そのCMで出てくるクルマはなぜか特定しづらい。これに関しては諸説あるが、損保会社の株主が自動車メーカー系列(旧財閥系も含む)の場合は当然、その会社のクルマしか使えない。さすがにライバル車のクルマを使ったら広告代理店は大目玉を喰らう。当たり前のことだ。

 一方で外資系の損保会社はその辺では自由度があり、極力そのクルマが特定できないようにしつつも、最後の最後で「あー、やっぱりこのクルマか~」とネタばれ(もちろん分かるように)するケースもある。

■旧車はイケる!? クイズ感覚で見るとかなり面白いゾ

「イーデザイン損保」のCMに出演の日産 パオ。マーチをベースとしたパイクカーの第2弾として1989年に登場した

 最近の例を見ると、東京海上グループの「イーデザイン損保」は元乃木坂46の女優である生田絵梨花さんを起用しているが、このCMに登場するクルマには「日産パオ」や「日産ラシーン」といった往年の名車(旧車)が登場する。旧車ゆえに前述したしがらみなどはかなり緩和される。

 一方、外資系のアクサダイレクトは俳優の岡田将生さんをメインに起用しているが、ファミリー向けに構成されたCMを見るとスライドドア付きのミニバンであることが分かる。でも途中までは「あれかな~」とか思いつつ、最後の最後に「ホンダ・フリード」であることが分かる、といった具合だ。

 昨今はYouTubeでメイキングを含めたロングバージョンなども配信されているが、15秒/30秒のCMでは分からなかったクルマがメイキングではガッツリ判別するケースもある。CMを見る時はクイズ感覚で車種を当てるのも面白い。

■謎のクルマ誕生のワケはタレントなど契約上の大人の事情がデカい

「イーデザイン損保」のCMに出演の日産 ラシーン。CMに登場する個体はフロントフェイスを変更している

 ただ商品の性格上、あまりクルマのイメージや色が付くのもよろしくない。ゆえにCGなどを活用して世の中に存在していない、または「どこかで見たことあるんだけどなあ、でも絶対違う」っていうクルマ好きが逆に悩んでしまうようなモデルを作り、CMなどで使っているわけだ。

 また出演するタレントが他の契約、つまりクルマ(関連)のCMに出ていたらますますイメージに引っ張られてしまい、そもそもの保険商品の情報が伝わらない。

 この辺は事務所や広告代理店がうまくコントロールしてくれているので大きなトラブルは実際起きないが、わざわざリアルなクルマを出すならばCGなどでオリジナル感を出した方が得策というわけだ。

 この他にもタレントが実際のクルマに乗って宣伝をするCMの場合、インパネ周辺とフロント側から見えるリアシートを全く違うクルマに合成して使うケースもある。見方によっては「ニコイチ」的な演出だが、これならば前述したように自動車メーカーの色やイメージは付きづらい。

■サービス拡大でリアルなクルマは消滅か? キモはYouTubeにアリ

 ただ今の時代、昔の任意保険とは商品の内容が大きく変化していることは容易に理解できるだろう。そもそも保険の申し込み自体も昨今はスマホで完結。他社との比較も同様に行える。

 そしてサービスに関しても事故が起きた際の警察や救急への対応だけでなく、通信型ドラレコとの組み合わせで自動通報する機能。さらには普段の運転時に自身の運転スコアをスマホアプリに連携させた専用センサーで計測するなど、従来のCM枠ではとてもではないが説明しきれないほど量・質とも増えていることになる。

 つまり優先順位を考えた場合、それらの新サービスの訴求による差別化が第一で、リアルなクルマの出番はどんどん減っていくことになる。もちろんこれは保険会社の考え方などで絶対ではないが、前述したようにCMで足りない部分はYouTubeやWEBで補完すれば良いというスタイルがしばらく続くのではないだろうか。

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