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 バンコクで雨に降られた。急に激しく降ったかと思うと、すぐにあがってしまった。そうしているとまた激しく降ってきた。いわゆるスコールというものか。しかし半月の滞在で数日だけ。タイは今月から雨期に入ったというものの今年は雨が少ないのだそうだ▼シンガポールは4月から乾期に入った。こころなしか日差しが強く感じられる。しかし、乾期だからと言ってまったく雨が降らないわけではないし、雨期だからといって一日中雨が降っているわけではない。季節の変化は大きくない▼シンガポールに赴任するにあたり、物覚えが悪くなると数人から聞かされた。思い出すよすががないためだという。季節の変化の大きい土地に育ったものは、そのときどきの季節に紐付けて、ものごとを記憶しているということか。出来事を、まず季節で分類したのは平安時代に編まれた古今和歌集だった。それ以前から、日本人はそのようにしてものごとを記憶していたのかもしれない▼だからといって、季節の変化の少ない土地に育った人は記憶力が悪いという話は聞かない。日本育ちとは違った形の記憶の引き出し方があるのだろう。風土によって人間の思考回路は異なる。多様な地域から人が集まれば、発想が豊かになる。なるほど、企業がダイバーシティーを強調するわけだ。(22・6・30)

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