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連載5回目です。前回は、アプローチ手法を5つに大別し内容を書きました。アプローチ手法に沿ってロビイングやルールメイキング業務に求められるそれぞれの素養などをかいていきます。今回は、アプローチ手法その1「RULE」を解説します。

以下に書いたことは一見当たり前のことのようにも聞こえますが、当たり前のことを意識的に徹底してやるということが人間は一番できないことです。そして、それをやるだけで圧倒的な差分を生み出せる付加価値の源泉だと思っております。

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アプローチ手法その1「RULE」

(1) 手法の説明

法令やガイドライン、業界自主ルールなどの制定・改変を目指した活動(政策リサーチ、政策プランニング、個別課題に対する政策提言等を関係者へ打ち込み・ロビイングなど)

例)従来の規制では想定していない事態、空白地帯になることへの具体的な提案提出と懸念点への宿題返し(民泊新法の制定、電動キックボード解禁など)

(2) 求められる素養など

①情報収集・分析能力
2種類の武器(自分が交渉調整という打席に立つため・立った時の武器と、関係者に交渉調整してもらうために提供する武器)を製造するために、各種の情報を収集分析する能力です。これをさらに因数分解すると下記のとおりです。

ア)『政策形成過程』を知ろう
どこに何の情報があるのかを把握すること

イ)『要するに何?』を問い詰めろ
政策動向の5W1Hをきちんと把握すること

ウ)『原典に当たろう』
噂話でないファクト情報を把握・整理すること

エ)『情報の解像度』を上げよ
原典を読んだ際の不明点は、原典作成になるべく近い人に当たり直接のコンタクトをとり、内容把握の高度化を図る

オ)『政策評論市場関係者リスト』を持て
原典情報の評価や解釈の情報を集めること。また、普段からこの問題をどう考えたらいいのかの視座を与えてくれそうな有識者をリストアップ化していつでもアクセスできるようにしておくこと。

カ)要約以上の付加価値をつけよ
原典情報を再構成して分析すること (例)5W1Hで整理、縦割りでなく横ぐしの視点で整理、政官が提示してくる案を関係者の立場に即して再構成、他の業界や他国の情報と比較するなど他の情報を混ぜ合わせて比較分析すること

キ)『ギャップ分析』をせよ
原典情報と、自らがしたいこととの差分を解析する

②筋読み能力

ア)『政策未来予想図』作成能力
上記の情報収集と分析を踏まえ、今後何が起こりうるか予想を立て、いつまでに何をしな
いといけないのか見極めること

イ)『隠れ論点発見力』
アジェンダセッティングされていない論点を浮き彫りにすること

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③ 戦略策定と武器の製造能力

ア)政策提案作成能力
政策実現手法として何を取りうるのかという引き出しとしてのフレームワーク『政策実現手法マップ』を活用しながら、今回はどの政策実現方法(予算/税制/会計制度/ガバメントルール/規制/事例づくり/表彰制度 等)が効果的なのかを検討する

イ)武器製造能力
政策実現のために関係者と種々の交渉が必要になります。その際に上記で指摘した2種類の「武器」が必要になります。仏教でいう対機説法と同じで、交渉相手によって提案の『粒度』をコントロールしながら、相手に刺さるものを作ることが必要です

ウ)指摘される問題点への対処方法の提案能力
交渉が必要な相手が指摘する問題点にきちんと緻密に対案を示していくこと

④ 実施能力(プロジェクトマネージャー的能力)

一般的なプロジェクトマネジメントの手法がこの分野にも横展開することが必要です

次回も、求められる素養の続きを書いていきたいと思います。
最後に、今回武器の話をしましたが、東大弁論部の時の同窓だった故・瀧本哲史氏の本『僕は君たちに武器を配りたい』にインスパイヤーされていることを付言しておきます。