自民党の細野豪志衆院議員が29日夜、ユーチューブチャンネルを更新。岸田首相が新たに設置したグリーントランスフォーメーション(GX)担当相を、萩生田経産相と兼務させる形で任命した理由について、「おそらく原発があったんだろうと思います」との見解を示した。
脱炭素を推進するGX政策といえば、菅政権時代の小泉環境相が旗振り役を務めたように、環境省を想起しがちだが、経産相に兼務させたことについて、細野氏は「2つ大きな理由がある」と指摘。同じGX推進の立場でも環境省が規制官庁としての役目が主であるのに対し、脱炭素政策には今後10年間で約150兆円の投資が必要と見込まれていることなどから、「実際に推し進めていくとなると事業官庁、お金を回していく立場の役所が適切だろうという判断のもとにおそらく経済産業大臣(との兼務)に決まったのではないか」との見方を示した。
そして、もう一つの背景として細野氏は「おそらく原発があったんだろうと思います」と述べ、原子力規制委員会を所管する環境省が原発を規制する側の官庁である一方、「今のエネルギー事業、特にグリーントランスフォーメーションを考えると、原発を具体的に推進する側で動かしていかなければならない、それをするためには経産大臣がやることが適切ではないかという判断を、おそらく岸田総理はしたのだろう」と解説した。
ただ、この人事は「盲点だった」と細野氏。当初はウクライナ情勢の影響でエネルギー安定供給に懸念が出たことを受け、国の基本計画を改訂するところを視野に入れていたというが、「政府はそれとは違う場所で原発を進めていく判断をした」と述べ、岸田政権が27日にスタートしたGX会議がその政策推進の舞台になるとの見方を示した。
一方でGXといえば国策に据えたのが菅前首相だ。菅氏は今週27日、BS11の報道番組で「2050年までのカーボンニュートラルの実現をはじめ、総理として国民に約束したことを果たす」と述べ、今秋の内閣改造や党役員人事で岸田首相が要職での起用を打診した場合、受け入れる意向を示した(参照:神奈川新聞)。安倍政権の官房長官として司令塔を務めた菅氏には、安倍路線の継承者としての期待が高く、ここ最近は副総理の起用説が取り沙汰されている。
また、萩生田氏は所属が安倍派でありながら、菅氏とも距離が近い。永田町では、今回のGX担当相人事は、党内基盤を固めたい岸田首相が菅氏とのさらなる関係強化に布石を打ったとみる向きもある。政策的にも政局的にも意味深長な人事となった。