東京・新宿から神奈川・小田原などを結ぶ小田急電鉄は7月25日から、「白いロマンスカー」1編成(最大250名)を丸ごと貸し切りにして利用できる企画「ロマンスカー・VSE貸切プラン」の受付を開始している。
使用される列車は、「VSE」50000形。この試みについて、鉄道事情に詳しいライターの小林拓矢氏に話を聞いた。
神奈川・秦野まで約2時間かけて周遊する新宿発着のルートは96万円、新宿発小田原到着の3〜4時間のルートは142万円と設定されている。96万円のルートを最大人数の250人で割れば、1人あたり3840円。飲食物の持ち込みは可能なので、飲食代金を3000円ほどと見れば、1人あたり7000円ぐらいでイベントが開そうだ。
小林氏は、こう語る。
金額としては妥当でしょう。過去にはビール会社とコラボして車内をビアホールにしたり、列車の通路をランウェイとして使って水着のファッションショーを開いたりする事例もありました。ライブイベントや落語鑑賞を楽しみながら移動するなど、さまざまな例があります。路面電車やローカル路線は貸切のハードルが低く、大学生の鉄道サークルが新入生歓迎会などで貸し切ることもあります。
ロマンスカーの貸し切りプランでは、車内マイクを使って案内放送を流したり、車内を装飾して楽しむことも可能(装飾は内容によってできない場合もある)。企業の懇親会、結婚式、同窓会など、さまざまなイベントでの活用を想定している。
鉄道各社は近年、鉄道を単なる移動手段としない売り出し方に力を入れています。景色を楽しみながら地場の食材を使った食事を楽しめる「レストラン列車」は、もはや珍しい存在ではなくなりました。だるまストーブでスルメが焼ける青森の「ストーブ列車」も有名ですね。鉄道の「コト消費」的な活用は、今後も広がっていくと考えられます。
潜在力のある「小田急線」
小田原のほかに箱根や江ノ島といった観光地と都心を結ぶ小田急線は、こうしたレジャー型の列車として潜在能力が高いという。
箱根の温泉を使った「足湯列車」、ビーチ気分が味わえる「海の家列車」なんかもできるかもしれない。法的な問題もあるとは思いますが、可能性は無限にあるでしょうね。
近年は、カーシェアで自動車を短時間レンタルし、昼寝やウェブ会議などができる休憩スペースとして活用する人も増えているという。鉄道や自動車を移動手段ではなく「体験の場」として売り出す手法は、今後も増えていくのかもしれない。