6月18日、スポーツランドSUGOで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の予選でまさかのQ1落ちを喫した平川亮(carenex TEAM IMPUL)。予選後、ミックスゾーンに現れた平川に、その顛末を聞いた。
前週に行われたWEC世界耐久選手権第3戦、ル・マン24時間レースで初優勝を遂げ、スーパーフォーミュラへと“凱旋”した平川。前戦オートポリスでの勝利により、ランキング首位を走る野尻智紀(TEAM MUGEN)に対し、7ポイント差にまで肉薄している平川としては、この先は常に野尻の前に立ち、ポイントを重ねていきたいところだ。
平川は朝のフリー走行を4番手タイムで終えていた。この時点で、「感触はそんなに悪くなかった」という。
予選Q1・Aグループに振り分けられた平川は、セッション開始とともに先頭でコースイン。しかし、最終コーナーに動物が進入したことにより、直後に赤旗が提示される。これが平川の感覚を狂わすことになった。
セッション再開後、平川は他の車両がウォームアップ走行を重ねるなか、早々にアタックを開始することになる。「譲ってくれたクルマもあったのですが、引っかかったクルマもあって、結果的にコンマ何秒かをロスしてしまいました」。なぜ、周囲よりも早めのアタックを敢行したのだろうか。
「コースに出ていくタイミングについて(チームとの)コミュニケーションがちゃんとできていなくて……。赤旗で自分の感覚がズレていて、(残り時間が)結構ギリギリだと思っていたんです。でも、思っていたよりも時間は残っていた。だから、アタックにいくタイミングが早すぎたのですが、その時はそんな感覚もなく……」
「前にいる何台かは見えていたのですが、彼らも自分と同じタイミングでアタックするのかな、という(ウォームアップの)ペース感でした。でも、結果的に(彼らはアタックに入らず)引っかかってしまいました」
もしアタックを完遂できていれば「普通にQ2には行けるタイムが出ていたはず」と平川は言うが、それでも結果的に野尻がQ2でマークした1分04秒349というタイムには及ばなかったことを示唆する。むしろ、野尻のタイムに平川は驚きを隠さなかった。
「1周3.6kmしかないコースで、コンマ3秒とか4秒ぶっち切るって、どれだけ速いんだ、っていう。まだまだ上には上がいるな、と」というコメントからは、悔しさとともにライバルの速さを讃える気持ちも滲み出ていた。
予選では及ばずも、決勝ペースの良さで追い上げるというのがここ最近の“傾向”ともなってしまっているが、平川は今年からリヤの構造が改められたタイヤに合わせ切れていないのでは、と推測している。
「去年までは予選でニュータイヤをつけたら『いけるぞ!』っていう感じがあったんですけど、今年になってタイヤが変わり、予選がちょっと不安な感じが常にあり、そこがなんとも解決できていないですね」
「16番手からレースをしたことがあまりないので、(決勝は)なんとも言えません。抜くところがないのでスタートでできるだけ抜きたいですが、さすがにオートポリスみたいに1周目で何台も抜くのは無理なので。その後は周りのペースを見て、周りのピットタイミングを把握しながら、どの作戦がいいのか正しく判断して速く走るだけ。やることはいつもと同じです」
なお、予選赤旗の原因となった最終コーナーの“動物”は、平川がそこに差し掛かる直前、最終コーナーのコース上をイン側からアウト側へと移動していった。これについてコクピットの中からは「見えなかった」と平川は言う。
「自分は内側にいて、内側を見ていたので。でもちょっと危なかったですよね。タイミング悪ければクルマは全損になっていたし、自分も怪我していたと思うので」
大事故は免れた平川だが、チャンピオンシップを考えると16番手という予選ポジションは痛い。短く、狭いSUGOでどれだけ巻き返すことができるのか。先週のヒーローが、今週は苦戦を強いられている。