スポーツランドSUGOで行われた2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦。序盤から2回にわたってセーフティカー(SC)が導入されるなど荒れた展開となった決勝は、KONDO RACINGのサッシャ・フェネストラズが初優勝をマーク。チームを率いる近藤真彦監督も、満面の笑みを見せて勝利を喜んだ。
2018年にチームチャンピオンを獲得したKONDO RACING。2021年シーズンはポイント圏内になかなか進出できず苦戦を強いられたが、今年は開幕戦から2台揃って上位につける活躍を見せていた。今回も予選でフェネストラズが2番グリッドを獲得すると、スタートでは野尻智紀(TEAM MUGEN)との攻防戦に競り勝ちトップに浮上した。
SC先導中の10周目にピットインし、その後は終盤までピットを引っ張った宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)と、目に見えない攻防戦を繰り広げたが、最後まで安定したペースで走行し、全車がピット義務を消化した残り4周に首位へ返り咲くと、そのまま初のトップチェッカーを受けた。
KONDO RACINGにとっては、2019年第6戦岡山以来となる3年ぶりの優勝。パルクフェルメでは近藤監督も喜びを爆発させていた。フェネストラズに関してはデビューイヤーはアクシデントが絶えず不振に終わってしまい、昨年はコロナ禍に伴う入国規制でシーズンを棒に振ってしまった。その分、近藤監督も今年の彼の奮起に期待していた。
「サッシャは全日本F3選手権から上がってきて、すぐにうちのチームに来たんですけど、(1年目は)接触も多くて、チームとしても“予定”とは違うなと思うところもありました。でも、やっぱりデータを見ると速さみたいなものはありました」
「クラッシュが多かったからと言って、評価が低かったということはなかったです。ただ、1年目だったので、ここは我慢時だなと思っていたら、去年はコロナ禍で身動きができずでした」
「それもサッシャに『そういう2年間があったんだから、3年目はぜひお返しをしてね』と話をしました。それが今回結果になったので、期待に応えてくれたと思います」
しかし、今週末のKONDO RACINGは“予期せぬ事態”からスタートしていた。今季からフェネストラズの通訳も兼ねて、ミハエル・クルム氏がアドバイザーとしてスーパーフォーミュラ全戦でKONDO RACINGに帯同しているのだが、ドイツ帰国中に足首を骨折してしまい、今回にSUGO大会は現場に来られなくなってしまったのだ。
「SUGO大会の直前というか、5日くらい前のことでしたけど、クルムから泣く泣く電話がありました。サッシャにとって、今年一番の支えだったのでね……なんて言おうか迷っていましたが、(サッシャが)日本に帰ってくる飛行機がクルムと同じだったそうで、彼のほうが先に知っていました(苦笑)」と近藤監督。
今回は、現場での通訳担当は別のスタッフが務め、クルムは東京からリモートで参加し、レース前などにフェネストラズにアドバイスをしていたという。
「クルムもリモートで参加してくれたので、良くやってくれました。彼はドライバーのマインド面のコントロールなどがうまいですからね。シーズンオフのテストからやっていて、流れができていたので、サッシャもだんだん慣れてきていました。クルムも次回の富士大会から復帰できます」
とはいえ、いつもとは違う体制で臨んでいる分、レース中の判断が遅くならないようにと、近藤監督も心がけていた。
「レースって、イエローフラッグが出たり、SCが出たり、即座に何かをしなきゃいけない時には、やはりリモートじゃダメなんですよね。今日も大変だったけど、そういう意味でも前もって、何かあった時の判断力を早めないといけないなという話をしていました」
「ピットに入れるという判断をしている時も、最後に僕が『入れるならこの周入れろ!』と言って、その後もSC先導の時間が続いたので、その間に次の作戦を考えさせていました。だから、ある意味少しだけ余裕がありました」
「(SC先導中にピットインした時は)トップだったので、うまくやれば2番手と差をつけながらピットインすることができます。そこはサッシャもうまくやってくれたし、とにかくレース中も速かったので、言うことなかったです」
この勝利をきっかけに、後半戦に向けて弾みをつけたKONDO RACINGだが、タイトル獲得に向けても、この勝利で満足していてはいけないと、近藤監督は早くも気を引き締めている様子だった。
「このレースは、ほんのわずかな油断でも、最後尾になりかねません。今日勝ったからと言って油断をせず、気を引き締めないといけません。やっぱり、ここで落ち着いていたらダメで、ここから『もう一歩上にいこう』という気持ちで、またチームとミーティングをして、一丸となって、ますます強いチームになれればなと思います」
さらに近藤監督は、スタート直後にスピンを喫してしまった山下にも次戦以降の活躍を期待していた。
「レースが終わって、サッシャが1位でゴールして、すぐに『次はお前だから』と声をかけました。今はある意味、野尻を誰が抑えるかのレースになっているじゃないですか。今日はサッシャの出番だったということです。次は健太の番ですからね!」
ここ最近の調子の良さに加えて、今回の勝利でチームの雰囲気もさらに良くなった感のあるKONDO RACING。後半戦は、ますます目が離せない存在となりそうだ。