伝統のFRレイアウトを受け継いだ新型2シリーズクーペ。しかも、最新BMWのテクノロジーを取り入れた新型は、BMWファンならずとも気になる存在といえるだろう。ここでは、最上級グレード「M240i xDrive」をピックアップしてライバル比較を行なった。
M240iの走りは期待通りの仕上がり
2021年6月、新型2シリーズクーペがデビュー。クーペの先行き不安が、いきなり解消した。従来型は、駆動方式にFRを採用する先代の1シリーズから派生。だが、現行型の1シリーズはFFだ。すでに、2シリーズの4ドアクーペとなるグランクーペは1シリーズをベースにしている。そのため、グランクーペの2ドア版として投入されても不思議ではなかった。それが、4リーズからプラットフォームや多くのユニットを受け継いだ、FRベースのモデルとしてデビューしたのだ。
一時期、メーカーにとって量産が期待できないモデルは整理されることが少なくなかった。ただ、現在はそうでもない。走りが楽しめることは、クルマにとっての重要な価値として見直されてきた。BMWも、新型2シリーズクーペによりそれを具現化したわけだ。
実際に、今回試乗したM240iは乗り込んだ瞬間からワクワクさせてくれる。運転席の座面が低いだけに目線が下がり、狙った走行ラインに照準が合わせやすくなる。しかも、ロールやピッチングといった姿勢変化ではなく加減速Gと横Gがダイレクトに伝わってくるのでクルマの挙動も実感しやすい。走り始める前から、楽しむための準備が整っている。
期待は、その通りになる。コーナー進入時には、ステアリング操作に対して超正確に長めのノーズが向きを変える。着座位置が重心に近いので向きの変わり具合がリアルに実感でき、走行ラインは狙いのまま。ステアリングの切れ味は走行モードをスポーツにしてもスムーズで、手応えが4シリーズより軽いことも好印象だ。
コーナリング中のロールは、ほとんどゼロレベルだ。オプションのアダプティブMサスペンションが装備されていたので、走行モードがスポーツならダンパーの減衰力は高めの領域で維持される。ただ、ガチガチに締め上げているのではなく、むしろサスペンションはスムーズに動いている。そのため、路面のうねりにも4輪が追従しフラットな姿勢が保たれる。
コーナー脱出時、ステアリングを戻しつつアクセルを踏み込む。3Lの直列6気筒ターボエンジンは前後駆動力配分を最適制御するxDriveを組み合わせ、タイヤの性能を最大の効率で引き出すので走行ラインを外さない。ステアリング操作とアクセル操作において、横Gが加速Gへと移行する過程が完ぺきに一致する。
そして、アクセルを踏み込む。走行モードがスポーツなら、3500rpmからエンジン音に低周波のビートが重なり回転数によりパワーを稼ぐ領域に突入したことを知らしめる。場面が許せば、Dレンジのままでも7000rpmに迫る勢いで一気に吹け上がる。
カマロSSが新解釈したアメリカンマッスルの価値
カマロSSが搭載する6.2LのV型8気筒は、かつてのアメリカンマッスルが積むエンジンとは別モノだ。爆発圧力の大きさを強調するドドドッという重低音とは異なり、胸のすくような高周波サウンドを響かせる。そのため、レブリミットは6500rpmとなるが8500rpmくらいは回っていそうな刺激がある。
なおかつ、10速ATをパドル操作でシフトアップする瞬間にはババッ、アクセルを戻せばバリバリッという破裂音まで発する。操作に対するクルマの反応を音で演出することで、臨場感を際立たせているのだ。やはりシボレーは、走りの楽しませ方を熟知している。
その一方で、高速道路ではゆったり走ることもできる。10速100km/hのエンジン回転数は、わずか1300rpmだ。ターボに頼る必要がない大排気量エンジンなので、低回転域からでもアクセル踏み込み量しだいで期待する力強さが即座に立ち上がる。いや、正確にいえば期待よりも絶妙な加減で力強さが上乗せされるので、かつてのアメリカンマッスルの底力を思い出させてくれる。
直進時には、ステアリングがセンターでシッカリと落ち着いている。ステアリングに軽く手を添えるだけで、アメリカの荒野を貫くハイウェイをどこまでも走り続けるシーンが思い描ける。
だが、コーナーが苦手というわけではない。ステアリングの切り始めにわずかな弾性感があることに気づくものの、大きく切り込む場面では一瞬で通過する領域だ。コーナー進入時から舵角が一定になるコーナリング中に到るまでには、操作の通りの応答性を示す。
限界まで攻めてはいないが、コーナーを飛ばし気味に駆け抜けるレベルの速域なら狙った走行ラインを正確に維持。運転席の座面はM240iよりもさらに低いだけに、走行ラインに照準がより合わせやすいことも役立っている。
誘いかけが巧みさでA45Sは真価を発揮
メルセデスAMGのA45Sに乗り換えると、別カテゴリーのクルマであることを意識させられる。試乗車は、オプションのAMGパフォーマンスシートを装備していたので見た目はスポーティだ。だが、運転席の座面はハッチバックとしては低くても同行の2モデルと比べると高め。いい意味ではパノラミック感があるものの、タイト感とは無縁だ。
それでも、走りを楽しむ際に視線が上がることは武器にもなる。初めて走る場面なら、コーナーを俯瞰気味に見た方が走行ラインがイメージしやすいからだ。なおかつ、イメージの通りにステアリングを切り込めば微小な抵抗感を伴うことが惜しまれるが操作の通りになる応答性が実感できる。
たとえ座面が高くても、コーナリング中のロールが実際よりも大きめに感じることはない。そもそも、試乗車はオプションのダンパーの減衰力を可変制御するAMGライドコントロールサスペンションを装備していたのでロールは大きくない。ただ、荒れた路面でボディにわずかな振動が残ることがある。そのため、設定が硬いと誤解されかねないが、ダンパーの減衰力が高めの領域を維持している場面でもサスペンションはスムーズに動いているので、不快感を覚える突き上げは意識せずに済む。
2Lの直列4気筒ターボは、なんとM240iが積む3Lエンジンを超える最高出力421psを発揮する。大型ターボにより得た性能なので、過給効果が立ち上がりにくい低回転域ではトルクが細いように感じてしまう。
だが、このエンジンは自ら回りたがっているような軽快さで吹け上がる。それだけに、積極的にアクセルを踏みたくなるのだ。こうした誘いかけの巧みさは、メルセデスAMGならではの魅力といえる。その誘いに乗れば、レブリミットの7000rpmまでブン回しながら派手なサウンド演出により走りが存分に楽しめるのだ。
しかも、A45Sはフル4シーターとして扱える。M240iとカマロには望めない価値だが、パーソナル感ならA45Sに負けない。
【Specification】BMW M240i xDriveクーペ
■全長×全幅×全高=4560×1825×1405mm
■ホイールベース=2740mm
■車両重量=1710kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ターボ/2997cc
■最高出力=387ps(285kW)/5800rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1800-5000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/40R19:255/40R19
■車両本体価格(税込)=7,580,000円
【Specification】シボレー・カマロSS
■全長×全幅×全高=4780×1900×1340mm
■ホイールベース=2810mm
■車両重量=1710kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V/6168cc
■最高出力=453ps(333kW)/5700rpm
■最大トルク=617Nm(62.9kg-m)/4600rpm
■トランスミッション=10速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/40ZR20:275/35ZR20
■車両本体価格(税込)=7,280,000円
【Specification】メルセデスベンツA45 S 4MATIC+
■全長×全幅×全高=4445×1850×1410mm
■ホイールベース=2730mm
■車両重量=1670kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1991cc
■最高出力=421ps(310kW)/6750rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/5000-5250rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/35ZR19:245/35ZR19
■車両本体価格(税込)=8,530,000円
投稿 スポーツカーの神髄はやはりFRにあり!? BMW2シリーズクーペの実力をシボレー・カマロSSとメルセデスAMG A45Sと徹底比較! は CARSMEET WEB に最初に表示されました。