福岡市に本社がある、株式会社まちのわ(入戸野真弓社長)は、13日から宮崎県が販売を開始する電子食事券「ひなた認証お食事券」に、デジタル商品券や地域ポイントを発行・運用するための情報プラットフォームを提供すると発表した。1セット6500円分の食事券を5000円で販売する。発行総額13億円のうち、3億円がプレミアム分となる。宮崎県内の2000軒以上の飲食店で利用できる。
まちのわは、九州電力(福岡県福岡市、池辺和弘社長)、筑邦銀行(福岡県久留米市、佐藤清一郎頭取)、SBIホールディングス(東京都港区、北尾吉孝社長)の3社の合弁会社として昨年5月に設立された。
今回の、「ひなた認証お食事券」のようなプレミアム付き商品券の電子化サービスや、地域の情報を発信できるアプリなどの開発を手掛ける。同社の入戸野真弓社長に、今回の取り組みの詳細や地域経済におけるデジタル化の動きを聞いた。
デジタル化は「すべての人にメリット」
入戸野氏は、従来、紙で販売していたプレミアム付き食事券をデジタル化することで、自治体、利用者、さらに飲食店の三方にメリットがあると話す。
自治体のメリットとしては、まず紙の券と比べて業務負荷が減るという点があります。さらに、人を介さずにチケットを購入できるというコロナ対策上のメリットもありました。宮崎県としては、プレミアム付き電子食事券は初めての試みであるのですが、当初からデジタル一本で行くというご判断をされています。利用者にとっては、特定の場所に購入しに行く手間が省けるという点が一番のメリットです。家に居ながらにして、すべての手続きを完了できます。
宮崎県では、これまで県全体でこういったプレミアム付き商品券のような取り組みはあまりやってこなかったのですがデジタル化が後押しする形で、こういった取り組みを県からやってもらえたという点で、飲食店の方からも高い評価をいただいています。
一方で、高齢者など、デジタルに不慣れな層を中心に戸惑いがあることも事実だという。
利用者の方にいかにデジタルに慣れてもらえるかだと思います。私たちもこの事業を始めて、3~4年経ちます。最初のころは、世間的にまだ“PayPay”もそんなに普及していないころでしたので、自治体の方への説明も非常に大変でした。最近は「“PayPay”と同じような仕組みです」というと、すぐに理解していただけるようになりました。利用者の方も慣れていただければ、デジタルへの抵抗感も薄れていくのではと思っています。
デジタル商品券はほぼ完売
実は、まちのわが手掛けた、プレミアム付き食事券や商品券のデジタル化は、今回の「ひなた認証お食事券」が初めてではない。福岡県うきは市の「うきは市スマホ買い物券」、太宰府市の「だざいふペイ」を皮切りに、既に28の自治体に情報プラットフォームを提供。今回で29件目になる。これまで導入した自治体からは、おおむね好評を得ているという。
最初の頃は“デジタルで大丈夫か”と思う自治体がすごく多かったです。たとえば、“高齢者対策をどうしよう”など。ただ、やってみると反応は良いですね。私たちが関わっているデジタル商品券は、ほとんどの地域で完売しています。
ただでさえ苦境に陥っていた地方経済が、新型コロナウイルスが拍車をかけた格好にある。そんな中、入戸野氏はデジタル化で活路を見いだせるのではないかと話す。
紙だと職員の業務負荷がかかるということもさることながら、1回利用して終わりです。対して、デジタルの場合は、利用者がどこの店舗で購 入したのかといったデータが取れます。そのデータを先のプロモーションにつなげることができるんです。さらに、利用者にアプリでプッシュ通知をすることで、利用を促すこともできます。紙だと、それはなかなかできないですよね。
「デジタルの力で地域の課題を解決」
入戸野氏は、プレミアム付き商品券は、あくまで手段であって目的ではないと強調する。
一番やりたいことは『地域にお金を回す』『地域の経済を支えていく』ということです。まずは、プレミアム付き商品券という起爆剤によって、利用者も加盟店も増える。その先は、地域の課題と特色に沿ったコンテンツを提供していきたいと思っています。
たとえば、大分県日田市では、“ひたpay”というプレミアム付き商品券をリリースしたうえで、宿泊に来たら地元で使えるお食事券が付いてくるなどの、観光振興の取り組みを行っています。第2弾、第3弾、第4弾と繰り返す中で、リピータ ーを増やし、関係人口を増やしていくということをやっています。
さらに、まちのわでは、子育てクーポンをデジタルで給付したり、移住定住したら10万円の電子マネーを給付したりといった、地域ごとの課題を解決する仕組みも提供しているという。
課題は地域によって違いますが、デジタルの力で地域の課題を解決していきたいと考えています。