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Dセグメントのベンチマーク的存在となる3シリーズは、日本市場のニーズが色濃く反映されている。このクラスとなると走りに魅力があるのは当たり前で、運転支援機能の充実ぶりや安全性の高さでも、魅力を獲得している。総合力の高さが求められる激戦のクラスにおける、そのコンセプトを含めたリアルな実力に迫る。

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スポーツセダンとしての矜恃

ホンの十数年前までなら3シリーズといったら王道中の王道。市販車の世界ではもちろん、ツーリングカーレースにおいても3シリーズの出方次第で周りのスタンスが変わるほどの影響力があった。

無論、その威光は変わらないが、プジョー508ハイブリッド、レクサスIS300h、テスラ・モデル3といった顔ぶれと並べてみると、ミドルクラスセダンの世界もひとつの価値観には縛られないダイバーシティ化が進んでいるのだと改めて感じる。

G20型3シリーズが国内デビューしたのは2019年。果たして様々に進化していくライバルたちを前に、いまだトップ・オブ・ミドルセダンの牙城を守り通しているのか? それともオールドファッションになってしまったのか? それを見極めるのが今回のテーマだ。

試乗車は318i。3シリーズの中の極々ベーシックなモデルで、今回集まった4台の中では最も安価なモデルでもある。

デビュー当初は大きくなったと言われたものだが、新型Cクラスなどを見た今となってはコンパクトと思えるほど。それでもリアシートのフットスペースはCクラスより広く、セダンとして真面目に設計されていることが伺える。

個人的に3シリーズに乗るのは久しぶりだが、蹴り出しの瞬間からクルマの動き、操作感が実にナチュラルで好ましい。フロントはストラット、リアが5リンクの足回りも、225/50R17のブリヂストン・トランザと上手くマッチしていて、ランフラットタイヤのネガを感じさせずにソフトでしなやかな乗り心地。そのうえ、2L直4ターボは、たった(あえてそういう)150psしかないのに、250Nmの豊かなトルクと8速ATのおかげで、体感的にスペック以上の力強く、豊かな走りっぷりをみせてくれる。

「BMW Operating System 7.0」を採用したBMWライブコックピットは全車に標準設定。10.25インチのコントロールディスプレイによって、様々な機能にアクセスできる。パワーユニットはガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッドを用意。トランクルーム容量は5名乗車の状態で480Lを確保。




これぞまさにセダンの鏡! なにも余計なモノがついていないベーシックモデルだからこそ、奇を衒っていない素直さと、元来のバランスの良さが際立つのだろう。それでいて快適装備やインフォテイメント環境は十分に備わっているし、ファブリック生地のシートも座り心地、ホールド感も申し分ない。唯一気になるのは、タウンスピードでは問題ないのだが、ペースを上げていった時のアクティブステアリングのフィーリングがアシスト過多なところ。これでオーソドックスなパワステがあれば……と思うところだ。

【Specification】BMW 318i
■全長×全幅×全高=4715×1825×1440mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=1540kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=156ps(115kW)/4500rpm
■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/1350-4000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:5リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=205/60R16:205/60R16
■車両本体価格(税込)=5,230,000円
■問い合わせ先=BMWジャパン ☎0120-269-437

最も対極に位置するテスラ・モデル3

そんな318iと最も対極に位置しているのがテスラ・モデル3である。試乗車はデュアルモーターを備えたいわば中間グレードのロングレンジAWDだった。

レーシングカーデザイナーの由良拓也さんが「すごくクオリティの高い面が出ている、最先端中の最先端のCADデザイン」と絶賛していたエクステリアデザインをはじめ、メーターナセルを排し、タッチパネルに集約することでスカットルを低くして視界を広げたインテリアデザインなど、既存の自動車像から脱皮したスタイルも318iとは対照的だ。

乗ってみてもテスラは異次元だ。重いバッテリーを積んでいるためにバネが硬いが、乗り心地が悪いというものではなく、静かで、アクセルペダルに対する動きもスムーズ。どっしり感があって直進安定性もよく、良く曲がり、しっかりと止まる。また回生ブレーキの効きも強いので、ワンペダルドライブもできる。しかも様々なデバイス(ギミック)を備えた操作も、一度ロジックを覚えてしまえば、実に簡単でわかりやすい。そういう意味においても、EVという以上のインパクトを兼ね備えた画期的な1台と言えるだろう。

15インチのタッチスクリーンは、サイドミラーの角度などの調整、ボンネットやトランクのオープナーなど色々な操作が行なえるほか、車両のさまざまな情報を確認できる。トランクルーム容量はフロント88L、リアが561Lを確保している。試乗したロングレンジの航続距離は689km(WLTCモード)。




ただし、走行モードの切り替えは可能で、加速、コーナリングともに数値的にはレベルが高いのだが、峠やサーキットを攻めるような「駆けぬける喜び」はなく、あくまでスマートなモビリティに徹しているという印象だった。そういう意味でも3シリーズとは対極にあるといえる。

【Specification】テスラ・モデル3ロングレンジAWD
■全長×全幅×全高=4694×1849×1443mm
■ホイールベース=2857mm
■車両重量=1850kg
■原動機=電気モーター×2
■モーター最高出力(F:R)=215ps(158kW):283ps(208kW)
■モーター最大トルク(F:R)=240Nm(24.5kg-m):350Nm(35.7kg-m)
■航続距離=689kkm
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/40R19:235/40R19
■車両本体価格(税込)=6,690,000円
■問い合わせ先=テスラ・ジャパン ☎0120-966-774

スポーツセダンとしてさらに熟成

その点コンパクトなスポーツFRであることに拘り、あえて2020年に2013年デビューの3代目に2度目のビッグマイチェンを施す道を選んだレクサスIS300hは、3シリーズに一番近いコンセプトをもつモデルだ。

そうした期待値が高かったからかもしれないが、全体的に軽く、薄く作ろうとした努力が、表面に出てしまって動的、静的質感が追いついていないのが目についた。特にステアリングの支持剛性は頼りなく、中古車のW204型Cクラスの方がしっかりしているほど。

2020年のマイナーチェンジでは、ボディ構造用接着剤の使用範囲やスポット溶接の打点を見直すことで、大幅な剛性アップを実現。また、タッチパッドのサイズがひと回り大きくなるなど、インフォテインメントシステムの使い勝手も向上した。トランクルームは、ハイブリッド車でもゴルフバッグ2個を搭載できる。




また、CVTも飛ばしていくと唸り音が大きくなって気になってしまう。もちろん基本設計が古いということもあるかもしれないが、ボディ剛性自体は高く、鼻の入り方などハンドリングの基本も悪くない。スペックや数値は満たしているのに、それを活かしきれていないところは、正直に勿体ないと思う。スポーティにしたいのか、ラグジャリーにしたいのか? すべてを満遍なくこなすのではなく、何かひとつ光るものさえあればいいのにと思う反面、ベーシックモデルであっても、その両面を見事に両立させ破綻していない3シリーズの凄さを感じたのも事実だ。

【Specification】レクサスIS300h version L
■全長×全幅×全高=4710×1840×1435mm
■ホイールベース=2800mm
■車両重量=1690kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+モーター/2493cc
■最高出力=178ps(131kW)/6000rpm
■最大トルク=221Nm(22.5kg-m)/4200-4800rpm
■モーター最高出力=143ps(105kW)
■モーター最大トルク=300Nm(30.6kg-m)
■トランスミッション=電気式無段変速機
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/40R19:235/40R19
■車両本体価格(税込)=6,000,000円
■問い合わせ先=レクサスインフォメーションデスク ☎0800-500-5577

現世と未来の架け橋のような存在

残るプジョー508ハイブリッドは、モデル3とIS300hの中間に位置するクルマだ。プジョー初のアクティブサスペンションを搭載した508が、内燃機関を積むFFスポーツセダンとして完成の域に達したといっていい躯体に、110psの電動モーターを組み合わせたハイブリッドは、現世と未来の架け橋のような存在だ。

実際に走行しても、モーターによる走り出しはスムーズかつ静かで、1.6L直4ガソリンターボが始動してからも、その印象は変わらない。確かにサスペンションはスタンダードに比べて明らかに硬めの設定になっているが、ゴツゴツ感やバタバタ感は上手く押さえられている。そうした乗り味には滑らかなハイブリッド専用の湿式多板クラッチによる8速ATのマナーも貢献しているはずだ。

一方で、特徴的な異形ステアリングが中立付近でのアシストを強調しすぎるのと、ガソリンエンジンのGTに比べて250kg重い車重が気にならないといったら嘘になる。確かにパワーユニット自体はよく仕上げられているのだが、元々の508という素材が素晴らしいだけに、ハイブリッドの後付け感が強調され過ぎて、アンバランスな気がしてしまうのだ。

508GTハイブリッドのコクピットは上端下端がフラットの小径ステアリングホイールと、そのリム越しに見るメーターパネルが特徴的だ。センターモニターのサイズは8インチとなる。シート表皮はナッパレザーを採用し、。トランク容量はPHEVモデルとなってもスポイルしていない。




もう一度318iに乗ってみる。今回の4台の中では特筆すべきモノがないにも関わらず、そのひとつひとつの所作に「そうそう、これこれ」と思わず膝を打つ。もしかしたらクルマではなく、そういう部分にシンパシーを感じるドライバー自身がオールドファッションなのかもしれないが。

【Specification】プジョー508ハイブリッド
■全長×全幅×全高=4750×1860×1420mm
■ホイールベース=2800mm
■車両重量=1790kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ+モーター/1598cc
■最高出力=180ps(133kW)/6000rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/3000rpm
■モーター最高出力=110ps(81kW)/2500rpm
■モーター最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/500-2500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/45ZR18:235/45ZR18
■車両本体価格(税込)=6,406,000円
■問い合わせ先=ステランティスジャパン ☎0120-840-240

写真で振り返る3シリーズの歴史

初代:E21
3シリーズの前身は、2002を含む「02」シリーズ。初代3シリーズ「E21」は1975年に登場。外観は大幅に近代化された。

第2世代:E30
1982年に2代目「E30」にスイッチ。外観はさらにモダンになり、4ドアやツーリング、カブリオレを設定、高性能版のM3も初登場した。

第3世代:E36
3代目「E36」は、1991年に登場。外観はウェッジシェイプに。伝統の丸目ヘッドライトは残されたが、四角いハウジング内に収められた。

第4世代:E46
1998年には4代目の「E46」に進化。正常進化とも言える内容で、外観は落ち着きとBMWらしさを高い次元でまとめていた。

第5世代:E90
2005年に登場の5代目「E90」は、ボディサイズが拡大。外観は角にシャープなエッジを立てる独特のデザインが特徴だった。

第6世代:F30
6代目の「F30」は、2012年にデビュー。ダウンサイジングの流れを受け、320iのエンジンが直4ターボに。初の3気筒ユニットも搭載された。

BMW3シリーズ公式サイト

投稿 究極のセダンはどれだ!? BMW 3シリーズ vs モデル3 vs IS300h vs 508で四つどもえの大比較を繰り広げてみた!CARSMEET WEB に最初に表示されました。