ミド・オハイオ・スポーツカーコースで開催されたNTTインディカー・シリーズ第9戦。3日に行われた決勝レースは、スコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)が勝利し、今シーズン2勝目を挙げた。
佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシングウィズ・リック・ウェア・レーシング)は、手痛いコースオフでポジションを下げるも、追い上げを見せ14位でレースを終えている。
ミド・オハイオ・スポーツカーコースでのホンダ・インディ200、予選で素晴らしいパフォーマンスを見せたのはパト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)で、今シーズン9戦目で9人目のポールウイナーが誕生した。
しかし、オワードはPPからシーズン2勝目を飾ることはできなかった。彼のチームメイトであるフェリックス・ローゼンクヴィストのマシンがスタート後9周目にエンジントラブルに見舞われ、オワードも燃料供給に問題が発生してペースダウン。52周を終えてピットに入ったところでレースを終えねばならなかった。
オワードの不運によってトップに躍り出たのが予選2番手だったスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)で、彼がシーズン2勝目へと逃げ切った。
開幕戦セント・ピーターズバーグでキャリア初優勝を挙げたニュージーランド出身ドライバーは、第2戦テキサスで連勝目前まで迫ったが、ファイナルラップにチームメイトのジョセフ・ニューガーデンにパスされて2位となり、その後はずっと優勝争いから遠ざかっていた。
しかし、今回はフロントロースタートから冷静に80周のレースを戦い抜いた。セカンドスティントからアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)がすぐ後ろにつけてプレッシャーをかけ続けたが、マクラフランはまったく動じることなく、トップをゴールまで守り切った。ウイナーと2位の差は0.5512秒しかなかった。
「嬉しい勝利だ! 終盤戦でのマシンは少しハンドリングが悪くなっていたけれど、チーム・ペンスキーのパフォーマンスを誇りと感ずる」とマクラフランは笑顔を見せた。
「燃費が厳しい面もあった。しかしシボレーエンジンの燃費は良く、リスタート直後のドライバビリティの高さによってパロウとの差を保ち続けることが可能だった」と語った。
マクラフランはゴール前のバトルで1周に数秒ずつプッシュ・トゥ・パスを使ってパロウとの差を1秒近くに保ち続けることに成功していた。
今季未勝利のディフェンディングチャンピオン、パロウは2位でもハッピーだ。予選では0.001秒差でファイナル進出を逃した。トップ6に残っていればポールポジション争いができたかもしれないが、彼は7番グリッドからスタートすることになった。そこから2位まで大きく順位を上げてのフィニッシュ。ポイントスタンディングも5位から4位に浮上した。
パロウがそれだけ順位を上げることができたのは、ユーズドのレッドタイヤでスタートし、セカンドスティントに新品のレッドを投入する奇策を成功させたからだった。ユーズドレッドであったがためにライバル勢より早いタイミングでピットに向かい、レッド連投で猛プッシュ。
ここで2番手まで順位を上げることに成功したのだった。マクラフランは新品レッドでスタートし、残りはブラック、ブラックと繋いだ。最終スティントではトップ2がブラック装着で戦い、マクラフランがそれを制した。
3位でゴールしたのはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)。予選は走路妨害によるペナルティで21番手。レースはスタート直後にコースオフして最後尾の27番手まで後退と散々だったが、最初のイエローでピットしてブラックからブラックへと繋ぎ、レース中盤からレッド、レッドと装着した彼は前を行くマシンを次から次へとパス。トップグループとずらしたピットタイミングも大正解で表彰台にまで到達した。
4位はリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)。5位はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)で、6位はポイントリーダーのマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)のものとなった。エリクソンは13番手スタートからの6位フィニッシュでポイントリードを保った。
ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は1回目のピットストップをアンダーカットして順位を上げたが、パワーほどのスピードはなく、7位でのゴールが精一杯だった。
アンドレッティ・オートスポートにとっては惨憺たるレースになった。予選3番手からトップに躍り出たコルトン・ハータは、ライバルたちより1周多く走れる燃費を実現していたことが災いした。
彼がピットに向かおうとしたタイミングでフルコースコーションが出されたため、ピットオープンとなってから給油とタイヤ交換を行うしかなく、最後尾近くにまで順位を下げることとなった。
トップ争いから遠く離れたところを走り続けていたアレクサンダー・ロッシとロマン・グロージャンはヘアピン状のコーナー、ホースシューで二度も接触した。二度目ともアウト側を走っていたのはグロージャンで、チームメイトをアウトからパスしにかかっていたのだが、二度目の接触は少々過激なものとなり、2台揃ってコースアウトし、グロージャンはタイヤバリアに突っ込んだ。
ロッシは走り続け、ゴール後には「レーシングアクシデントの相手がたまたまチームメイトだっただけ」とコメントしていた。しかし、トップ争いを行うことのできない自分のパフォーマンスに怒りを感じていたのだろう、ロッシはゴール前にルーキー・チームメイトのデブリン・デフランチェスコを押し出すアクシデントも起こした。
佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)は予選19番手だった。チームメイトのルーキー、デイビッド・マルーカスが予選で8番手に食い込んでおり、違うセッティングをトライしていた琢磨は決勝前のウォームアップ、さらには決勝に向けたセッティングでマルーカスの採用していたセッティングも取り入れた。
レースでのマシンはまずまずのパフォーマンスで、琢磨はスタートからの2周で3台をパス。16番手にポジションを上げた。その後も彼は激しいバトルを戦い続け、燃費セーブも実現し、27周目に7番手で1回目のピットストップに入った。
しかし、今日の琢磨はパワーほどラッキーではなかった。イエローの出るタイミングはひとつのポジションアップにも繋がらず、逆にポジションを落とすこともあった。さらに、変化し続ける路面でマシンのバランスが崩れたのか、51周目にはブラックタイヤのグリップを失ってコースアウト。23番手まで順位を下げた。
最終スティントにレッドを投入した琢磨はスターティンググリッドより5つポジションをゲインした14位でゴールした。
「スタートでは三つ順位を上げました。狙っていた通りでしたね。自分たちはレッドタイヤで、周りのブラックタイヤのドライバーたちの前に出ることができました。しかし、スタート直後にパワーが突っ込んできてぶつけられたので、マシンに何かダメージがないか……という心配がありました」
「タイヤのライフを伸ばす方向性へとセッティングを変更してレースに臨み、その成果が自分たちの考えていた半分ぐらい現れていました。しかし、レースの中盤にタイヤのグリップが大きく落ちたためにコースから飛び出してしまいました」
「幸い走り続けることはできましたが、あそこで大きく順位を落としたのは残念でした。レース後半戦には何台かが後退していたので、あの時の順位を保てていたら、更に上位でのゴールができていたと思います」と琢磨は話した。