さあ、ここで問題です。今季デビューしたトヨタGRヤリス・ラリー1のサファリ仕様は、前戦サルディニア(イタリア)仕様とどこが違うでしょう? 30秒以内にお答えください……。
もし、この超難問クイズに答えられたなら、あなたは真のGRヤリス・ラリー1ファンに違いない! その昔、サファリ・ラリー仕様といえば川を渡ってもエンジンが水を吸い込まないようにするための“シュノーケル”、万が一動物たちがぶつかってもクルマが壊れないようにするための“アニマルガード”、そして観客や動物に注意を喚起するための“ウイングライト”といった装備がマストだった。自分も含めたオジサンやオバサマたちは、そのカッコよさにしびれ、「自分のクルマもいつかサファリ仕様にしたい」と夢見ていたものだ!?
しかし、現代のサファリ・ラリー仕様は、一見すると他のグラベル・ラリー仕様と何ら変わらない。ほとんど間違い探しの世界だが、それでも微妙な違いはある。では、そろそろクイズの正解を。
まず、バンパーのナンバープレート横に牽引用の布製トーループ、つまり牽引フックが追加されている。ちょうど、矢印で示されているところだ。他のラリーではバンパーの下部にあり出番は少ないが、スタックする可能性が高く、牽引によって脱出するケースも多いサファリでは、牽引ロープをかけやすいこの位置がベストとチームは考えたようだ。
次に、ルーフベンチレーターの両脇に注目を。ここには小さなスピーカーが設置されていて、動物が近づきそうなシチュエーションでは特別な警告音を発して注意を喚起する。ちなみに、ヒョンデは昨年のクルマもそうだったが、ヘッドライトのLEDをチカチカと点滅させることで、同様の効果を狙っている。
もうひとつ、フロントバンパーのグリルメッシュも大きく違う。サルディニア仕様は目の細かい網だが、それがサファリではシェイクダウン、本番と、どんどん網やワイヤーの形が変わっていき、最終的には開口部全体を覆う頑丈な網が取り付けられた。
その経緯についてはこちらの記事を見ていただきたいが、試行錯誤の末、極悪路やウォータースプラッシュにも耐えられる仕様に進化し、歴史的な1-2-3-4フィニッシュ達成を支えた。
その他には、クルマの外側からは見えないが、ボンネットフードの裏側に蛇腹の極太ホースが追加されている。これは、ウォータースプラッシュを通過する際、エンジンの吸気経路を一時的にバイパスさせるためのもので、いわばシュノーケルの替わりを担うもの。もっとも水を吸い込みにくい場所を探して、ボンネットの裏側に行き着いたとテクニカル・ディレクターのトム・フォウラーは言う。
もちろん、他のラリーのように車内から操作できる吸気バイパス装置は設けられているが、それだけではケニアの深い川渡りには対応できないだろうと考えたのだ。
以上のように、最新のラリー1マシンには、非常に地味なれど考え抜かれた、サファリ・ラリー対策が施されていたのだ。