かつてのスーパーカーやスポーツカーにこぞって採用されていたリトラクタブルヘッドライト。無灯火時は収納し、夜間にライトが浮かび上がってくるアレだ。
超カッコよかったのに新車で採用しているクルマは日本中探してもゼロ。もっとも衝突安全など法規の問題から姿を消したと言われているが、今は21世紀。最新の技術でなんとかならないものか!?
文:小鮒康一/写真:ベストカーWEB編集部
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■スーパーカーだけじゃなかった!? カローラにバイクまで続々採用
ライトONでパカっと開くリトラクタブルヘッドライト。日本では1970年代中盤に巻き起こったスーパーカーブームによってその存在が広く知られたといっても過言ではないだろう。
フェラーリ512BBやランボルギーニ カウンタックに始まり、ランチア ストラトスやロータス ヨーロッパなど、リトラクタブルヘッドライトを採用したクルマの特別感たるや段違いのものがあったのだ。
日本車としては1967年に登場したトヨタ2000GTがリトラクタブルヘッドライトを採用していたが、その後同様のライトを採用する車種はなく、このスーパーカーブームの影響を受けて1978年に登場したマツダ サバンナRX-7を皮切りにスポーツカーを中心にリトラクタブルヘッドライト採用車が一気に増えていったのである。
そして1980年代になると、トヨタのスプリンタートレノやMR2などのスポーツカーだけではなく、ホンダ アコードや日産 パルサーエクサ、トヨタのターセル/コルサ/カローラIIに至るまで、さまざまな車種に採用され、極めつけはバイクのスズキ GSX750S(通称3型カタナ)やホンダ スぺイシー125ストライカーまで採用するに至ったのだった。
そんなリトラクタブルヘッドライトも2003年に販売を終了したマツダ RX-7(FD型)を最後に国産車のラインナップから姿を消し、2022年の現在までリトラクタブルヘッドライトを持つ車両は登場していないのが現実だ。ではなぜリトラクタブルヘッドライトは姿を消してしまったのだろうか?
■絶命した最大の要因は法律の壁とコスト高! 重量にも影響アリ
リトラクタブルヘッドライトが姿を消してしまった大きな理由のひとつが、法律によるもの。といっても、リトラクタブルヘッドライトを禁止する法律があるわけではなく、歩行者保護にまつわる法律が強化されたことが要因となっている。
点灯時にヘッドライトがポップアップするリトラクタブルヘッドライト車は、ライトONのときに歩行者と接触した際に、ヘッドライト部やカバー部が歩行者を引っかけてしまったり、突出した部分によって歩行者に大きなダメージを与えてしまったりする恐れが高くなってしまうと考えられている。
もちろん法律は過去に販売された車種にさかのぼって適用されることはないため、すでに販売済のリトラクタブルヘッドライト車が問題になることはないが、そういった可能性が高い車両であることは頭の片隅に置いておきたいところだ。
その他の理由としては、そもそもリトラクタブルヘッドライトの開閉機構というのは固定式ヘッドライトに比べて複雑であり、部品点数も多くなる。
つまり、コストも高くなるし、重量増につながってしまうだけでなく、ライトONの状態では明らかに空力性能が低下するという致命的な弱点も存在してしまうので、見た目がカッコいいという理由以上にネガティブな要素が大きすぎるというのも挙げられるだろう。
■もはやネガしかない……今後リトラが復活する可能性はほぼゼロ!?
そもそもリトラクタブルヘッドライトが誕生した理由も、スポーツカーのノーズを低くして空気抵抗を下げつつ、当時の北米の安全基準に適合する高さにヘッドライトを置くという相反する条件をクリアするために生まれたという側面が大きい。
現在のようにLEDのような小さな光源で十分な明るさを得ることができるのであれば、わざわざ複雑かつ重いリトラクタブルヘッドライトを採用する理由もないというのが正直なところ。
さらに最新の車両では日本国内でもオートライトが義務化されたように、安全のためにヘッドライトは極力点灯する方向となっており、一部の諸外国では昼夜を問わずに走行中は常にライトONが義務付けられている国も存在するほど。
そうなるとヘッドライトを消しているのは駐車しているときだけということになり、もはやリトラクタブルヘッドライトの意味がない……というのが現実ということになる。
そう考えると、法律云々を抜きにしても今後リトラクタブルヘッドライトを持った車種が登場する可能性は非常に低いと言わざるを得ない。残念ではあるが、リトラクタブルヘッドライトも過去の遺産ということになりそうだ。
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