前回のスーパーGT第3戦鈴鹿の土曜午前のフリー走行の走行中にフロントから炎を出してストップ、そしてエンジン交換して臨んだ日曜の決勝でも序盤で煙りを出してマシンを止めることになってしまった38号車ZENT GRスープラ。今回の第4戦富士では年間3基目のニューエンジンを投入して挑むことになる。歴代トップの24回のポールポジションを獲得中でGT500では最年長となる38号車の立川祐路に今週末のレースについて聞いた。
前回の鈴鹿では序盤のエンジントラブル後、立川はレース途中でサーキットを離れた。その悔しさも察しがつくが、一度のレースで2度のエンジントラブルに見舞われたのは、GT500で最年長となった立川にとっても初めての経験だったという。
「前回の鈴鹿は残念でしたけど、しょうがないですよね。しょうがないで済ましてはいけないかもしれないですけど、レースではこういうこともありますよね……でも、この年(47歳)になって、週末に2基のエンジンがダメになってしまったのは初めてでした」
「今週末から早くも3基目のエンジンを投入してしまうのは、それ自体は残念ですし、なかなかないことですけど、自分たちとしてはそれだけツイていないというか、不運なのかという気持ちです。基本的には、自分たちではどうすることもできないトラブルだったので」
鈴鹿の最初のトラブルの原因はエンジンの燃料ポンプからの燃料漏れ。日曜のトラブルはTCD/TRD佐々木孝博エンジニアによると制御系のトラブルが起きてしまったのが要因だというが、その制御系のトラブルがなぜ起きてしまったのか、原因はまだ特定できていないという。燃料ポンプからの燃料漏れも、「これまでGTに参戦してエンジンを担当して13年間、2000基以上、そういったトラブルはなかったのですが……」と頭を悩ます(2021年第5戦SUGOの19号車WedsSport ADVAN GRスープラの燃料漏れトラブルはその直前の接触が要因)。
立川も、TCD/TRDスタッフのこれまでの努力を労る。
「(TRDスタッフも)一生懸命やっている中でのアクシデントだと思うので、トラブルばかりは仕方ない。その分、3基目のエンジンは速いエンジンにしてくれ、とお願いしました。3基目が速ければ問題ない(笑)」と立川。
「レースではおそらくスタート後にドライブスルーペナルティになると思うので、ピットロスを入れると1分くらいのロスになる。何事もなければ厳しいレースになるのですけど、スーパーGTのレースは何が起こるかわからない。もちろん、セーフティカーが出るようなアクシデントや事故を望むわけではないですし起きてほしくないですけど、ウチのチームとしては、チャンスが回ってきたときには、どんな状況でもきちんと対応できるように、自分たちのプラスに変えれるように準備をしておきたいですね。そうすれば、今回もまったくチャンスがないわけではないと思っています」
「昨年のオートポリスでもウチはエンジンのトラブルに遇いましたけど、その後のセーフティカー等の展開もいい方向になって2位まで順位を上げられた。そういった追い上げも展開によっては可能なので。ただ、自力だけでそこまでは、という部分があるので、チャンスが来たときには追い上げられるようにしたいですね」と続ける。
前回のスーパーGT鈴鹿戦、そして先日のスーパーフォーミュラ第6戦富士でもセーフティカー中の走行で優勝を逃してしまい、セルモチームとしても悔しい雰囲気が続いている。
「まあ、慣れてますから。こういう状況は。コンスタントに逆境が来ているので、慣れていますので(笑)。これくらいで挫けるようなチームではないので、こういう時に底力を見せないといけないと思っています。応援してくれるファンのみなさんもいるので、応援してくれる方をガッカリさせないようなレースをしたいです」と、気概を見せる立川。
その立川とチームメイトの石浦宏明、そしてZENTチームに応えるように、今回の38号車にはシーズン後半に投入予定だったスペック2エンジンの一部を前倒し投入。信頼性の面でも戦略上の4基目への交換はあるかもしれないが、計算上ではシーズン終盤まで保つ想定だという。38号車が逆境のなかでどのようなレースをするのか、注目してみたい。