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 伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ次世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得しており、14巻発売時点の現在で、ついに単行本累計発行部数350万部を突破している。

 同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。今回は、前年度MFGでランキング6位となった実力者、柳田拓也の駆る2台のBMWを取り上げたい。柳田がM6からM4へ乗り換えたことで得たものとは?

文/安藤修也
マンガ/しげの秀一


■ラグジュアリーモデルと伝統の名車、それぞれのM

 クルマ好きにとって、ラグジュアリーな2ドアクーペモデルは贅沢の極みである。なにせクーペの収納は大きくないし、後席は人が乗るためというより乗員の手荷物を置くためのもの。それでいて、ハイパワーな大排気量エンジンや豪華な内装やシートが大型ボディに搭載されている。おおよそ、無駄を受け入れらるだけの余裕があるユーザーが購入するものと言ってもいい。

 そういう意味ではBMW 6シリーズというのは、究極の贅沢モデルとして誕生し、2003年に復活している。しかしこのようなラグジュアリークーペに乗る人というのは、時として狂気のような速さも求めがちだ。「M6」はそんなドライバーのために誕生した6シリーズのハイパフォーマンスモデルで、3代目6シリーズでは2012年に追加されている。

 巨漢のボディに積まれるエンジンは4.4LのV型8気筒ツインターボで、シャープなレスポンスで560psという暴力的なハイパワーを発揮する。ベースの6シリーズも1000万円超えだったが、M6には2000万円近いプライスが付けられていた。

BMW M6(クーペ・2018年モデル)/全長4905×全幅1900×全高1375mm、パワーユニット:4.4L V型8気筒ツインターボエンジン、最高出力:560ps/6000rpm、最大トルク:680Nm/1500-5750rpm

 BMWの「M3」といえば、BMWファンなら当然、BMWに興味がなくてもある程度クルマが好きな人なら当たり前のように知っている、3シリーズのハイパフォーマンスモデルである。従来、3シリーズクーペをベースとしていた「M3クーペ」だったが、3シリーズの2ドアクーペモデルが4シリーズと呼ばれるようになったことにともない、2014年から「M3クーペ」=「M4」となった。

 ミドルサイズの2ドアクーペボディに搭載されるBMW伝統の直列6気筒エンジンは、3.0Lツインターボで431ps以上を発揮し、俊敏すぎるほどのレスポンスを味わえる。サスペンションは硬めだが、ドイツ車らしくスピード領域が高くなるほどしっくりくる味付けになっている。

 M4は2021年にモデルチェンジを果たしてすでに代替わりしているものの、先代型M4は人気が高く、GTSやCSといったいくつかのエボリューションモデルも生み出した。作中に登場するのは、BMWがDTM(ドイツツーリングカー選手権)シリーズチャンピオン獲得を記念した特別限定モデルの「M4 DTMチャンピオンエディション」である。

BMW M4(DTMチャンピオンエディション・2016年モデル)/全長4685×全幅1870×全高1385mm、パワーユニット:3.0L 直列6気筒ツインターボエンジン、最高出力:500ps/6250rpm、最大トルク:600Nm/4000-5500rpm

■奮闘するもいいところを見せられないM6

 作中では、MFGラウンド1「小田原パイクスピーク」の予選結果が表示される場面で、初めて「BMW」の文字が出てくる。ドライバーは柳田拓也(27歳)、予選結果は6位と好順位につけているが、車名はこの時点では明かされていない。さらにスタート後の混戦状況でリアスタイルのみ見せているが、この時点でM6だとわかったらBMW通かもしれない。

 その後フロントサイドを晒しつつ(カーナンバー6であることもわかる)、初めてしっかりその姿を現したのは、第32話「動きはじめるレース」だ。後方から強引な追い抜きをかけてきたフェラーリ488GTBに対して、柳田は「幅広の図体でせまいスペースにねじこみやがって……」と苦言を呈しながらも抵抗するが、6位の座を奪われてしまう。

 さらにレース終盤、もう一度姿を見せたと思いきや、今度はランボルギーニ ウラカンに追い抜かれるシーンで、最終的に開幕戦は8位でチェッカーを受けることに。一度も他車を追い抜くようないいシーンを見せられず、BMWのフラッグシップクーペとしては、残念な結果となってしまう。

 ラウンド2「芦ノ湖GT」では、アルピーヌA110が初参戦したり、シビックタイプRがNSXへと乗り換えられたりと、ライバルたちの刷新が図られるなか、11位グリッドからスタート。ウェットコンディションのなかFRで奮闘したが、4WDのGTRにオーバテイクされる。

 さらに、前方のAMG GTを抜くことができず、停滞している間に後方からきた軽量で身のこなしの軽いアルファロメオ 4Cに抜かれてしまう。最終的には、荒れたレース展開で、ランボルギーニ ウラカンやポルシェ911 GT3がスピンしたため、スタートと同じ11位でフィニッシュした。

■M4でコーナリングの魔術師が復活!

 ラウンド1、2と非力で小型なクルマが実力を発揮したレース展開を受けて、柳田もある決断をする。それは、M6からM4へと搭乗モデルを変更することであった。トヨタ 86やアルピーヌ A110などの活躍を見て、素早く決断したわけだが、結果的にはこの決断は吉と出る。

 「MFGの黎明期!! コーナーの魔術師といえば、柳田拓也の代名詞でした……!!」とアナウンサーが思わず叫んだとおりの胸のすくような走りを魅せて、ラウンド3「ザ・ペニンシュラ」の予選では、M4が7位を獲得。見事、ひと桁台からのスタートに返り咲いた。

 決勝レースでは、ドライバーの怪我で不調のトヨタ 86と抜きつ抜かれつのデッドヒートを演じたが、「ザ・ペニンシュラ」の名物コーナー「オー・ルージュ」で諸星瀬名のトヨタ スープラにオーバーテイクされ、さらにゾーンに入ったトヨタ 86にも前を行かれてしまう。最終的にはひとつ順位を下げて8位でフィニッシュ。次戦への期待を持たせる結果となった。

 今さらながら解説すると、車名の「M」というのは、BMWにとってスポーツモデルの象徴で、かつてBMWがF1をはじめとするモータースポーツで実績を残した時代に存在した「BMW Mortorsport社」の系譜を受け継ぐ「BMW M社」が制作に携わったモデルのこと。つまりこれは、モータースポーツの「M」であり、各モデルにはBMWの歴史とスポーツスピリットが込められている。

 公道レースのMFGであっても、常にベストなパフォーマンスをみせて勝たねばならないということ。柳田のさらなる奮闘が期待される。

■掲載巻と最新刊情報


MFゴースト(9) (ヤングマガジンコミックス)
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MFゴースト(14) (ヤングマガジンコミックス)
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投稿 BMW伝統の「M」が夏向の86を狙う!! 『MFゴースト』を彩る名車列伝16 BMW M6/M4 編自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。