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フェイスブックやインスタグラムを運営するMeta(メタ)が、7月27日に第2四半期(4~6月)決算報告を行った。それによると、第2四半期の売上高は288億ドル(約3兆8000億円)で、前年同期から1%減少した。なお、Metaの売上高減少は上場以降初めて。

Fritz Jorgensen /iStock

ザッカーバーグ氏「事業計画が楽観的過ぎた」

アメリカではリセッション(景気後退)の懸念が高まる中、Metaも広告売上が減少。そうした中で、急速にメタバース事業に舵を切っていたが、同社のメタバース事業は第2四半期だけで、28億ドル(約3700億円)の損失を計上している。現状を見る限りでは、メタバースへの傾倒は裏目になっている状況だ。

この状況に、昨年7月に「メタバース企業を目指す」と述べ、積極的にメタバース事業への投資を進めてきた同社のマイク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)も率直に反省しているという。7月29日付けのロイターによると、28日に開かれた従業員集会で、ザッカーバーグ氏はメタバース事業について、「事業計画があまりに楽観的過ぎた」と述べた。

同社は新型コロナの中でも、順調に売上高を伸ばしていた。今年2月に発表した2021年第4四半期(10~12月)の決算では、売上高は前年同期比20%増の336億7100万ドル(約4兆4500億円)だった。ロイターによると、ザッカーバーグ氏は、新型コロナウイルスのパンデミック中のユーザーと売上高の大幅な伸びがこのまま続くという間違った想定をしていたと説明したという。

メタバース市場規模は2030年に1700兆円

現状のところ、Metaのメタバース事業は苦境に陥っているが、メタバースの市場規模は高い成長度合いで拡大していくものと見られている。ブルームバーグは昨年12月に、2024年のメタバース市場規模は8000億ドル(約106兆円)に達するとの予測を発表。

また、今年3月にはシティグループが2030年にメタバース市場規模は8~13兆ドル(約1050兆円~約1700兆円)に上るというレポートを発表した。モルガン・スタンレーもメタバース市場は8兆ドルまで拡大すると見ているという。

盛り上がるメタバース市場だが…(Thinkhubstudio /iStock)

このような背景もあり、世界中の企業がメタバース事業に参入している。GAFAMだけでも、Metaのほか、マイクロソフト、グーグル、アップルがメタバース事業に参入しており、この分野で目立った動きがないのは、アマゾンくらいだ。日本でも、キヤノン、ソニー、リコー、パナソニック、NTTドコモなど名だたる企業がメタバース事業に参入している。

最大の課題は法整備の遅れ

ただ、急速に拡大すると見られているメタバースには、課題がないわけではない。一番の課題はメタバース空間内での法律やルールの整備が不十分という点。昨今流行の兆しを見せるNFTでも共通していることだが、メタバース内で支払いをしたのに商品を受け取れない場合、現状の法律では対処しきれないと指摘されている。

また、世界的にメタバースが普及していくためには、VR機器を普及する必要があるが、まだ普及しているとは言い難い。その原因の一つは、価格にあるだろう。MetaのVRヘッドセット「Meta Quest 2」の価格は、128GBが59,400円、256GB版が74,400円。メタバースはパソコンやスマートフォンと異なり、現状のところなくてはならないものではない中、この価格では一部のマニアしか手が出せないだろう。

世界中の人々と、現実世界と同じような感覚で交流できるメタバース。日本IBMと順天堂大学が今年4月からメタバース技術を活用した医療サービスの共同研究・開発を行うなど、幅広い分野への応用が期待され、メタバースが世界を一変させる可能性もある。しかし、そうしたことを実現するためには、現状の課題を一つひとつクリアしていく必要があるだろう。